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 前世の記憶を取り戻してから早一週間。エリザもこの生活に段々となれてきたところだった。

 エリザの一日は

 早朝メイドのミランダに起こされ、身支度を整えることから始まる。それが終わった頃を見計らいレインハルトが朝食を持ってエリザの自室に入り、そのまま護衛の任に着き。(食事中)執事長のセバスが今日一日の予定の報告と執務の確認のために来室。入れ替わるようにミランダが退室し、セバスもすぐに執務室へと戻る。その後しばらく私は自室で自由時間を過ごすのがルーティーンとなっていた。


 自由時間。朝食を取りながら、セバスの持ってきた(新聞の)朝刊を読むのもまたエリザの習慣である。


 《アルバート領ニュースタイムズ(ANT)》

 『落雷!!ノルワッルゼ商会第二支部全焼!ノルワッルゼ商会長の次男アーリー氏未だ行方分か・・・』


 この世界では新聞配達は主に有翼人類(バーダ―)により担われ。彼彼女等の事は俗に伝書鳩と呼ばれ親しまれていた。

 エリザは今日も、伝書鳩により運ばれ、セバスから受け取ったANTを広げて、しかし、何時もとは違う表情で読んでいた。眉を顰めていたのだ。日時は面接の翌々日。昨日の大雨が嘘のような晴れ渡った朝だ。


 「はぁ~(*´Д`)、第二支部ってすぐ近くじゃない?物騒ねぇ。」

 取り敢えず思ったことを口に出してみる。

 「ここら辺って雷よく落ちるの?」

 「いえ、ご心配なく。落雷などごくごく稀ですし、仮に落ちたとしてもこのアルバート邸にいれば問題ありません。」

 「問題ないの?」

 「ええ。魔術結界がありますので・・・。」

 「そう言えばそうだったわね。」

 ――――――――魔法って便利ねぇ~とエリザは自身の安全が分かり満足げに頷く。その後ろでレインハルトは若干眉を顰めながら、躊躇いつつも、心を決したように口を開いた。

 「―――――ただこのタイミングで雷がノルワッルゼ商会(、、、、、、)に落ちたと言うことは少し引っ掛かりますね。」

 「どういうこと?」

 「・・・平たく言ってしまえば人為的に起こされたのではないかと言う事です。」

 キョトーン(・_・)

 エリザはこの世界について幼児並みに無知である。だが、人が地震起こしたり、ブラックホール生成したり、全身ゴムになったりできる世界ではない事ぐらいは心得ていた。言わずもがな人が雷を落とすなど荒唐無稽の話である。その上、それを言ったのがあのレインハルトと言うのがさらにエリザを驚かせた。

 エリザはレインハルトの事をよく知っているという訳では無いが一週間も一緒に居れば大体の人となりは分かる。レインと言う男は冗談を言わず、博識で、剣の腕もたち、料理までこなす。おまけに主だろうが女だろうが思ったことをずけずけと口にする奴なのだ・・・。こんな目が点になるような馬鹿面下げれば絶対にバカにされる・・・

 あれ、怒っていいんじゃないの私。私のことバカ呼ばわりしたことまだ忘れちゃおらんぞ!


 エリザが敵意を込めて鏡越しにレインを睨むと(←直接睨む勇気は無かった)、レインハルトは子供をあやすように溜息を吐いた。

 「―――そういうことはもう少し大人になってからにしてください。」

 「え?は?え?レイン貴方とんでもない勘違いしてないかしら!?」

 「分かっております。」

 「分かって無いよ!」

 「分かっております。」

 「分かって無いわよ!!」


 結局話がうやむやにされたことに、エリザは気付かなかった。




――――――――――――――――――――――――

 《SIDE TO REINHARUTO》


 エリザを適当にいなしたレインハルトだが、彼の頭の中は未だ晴れずにいた。理由は昨日の落雷の件。それを伝えるか伝えないかで思い悩んでいたのだ。


 この世界でも周知されているが、落雷と言うのは高い場所に落ちやすいものだ。高層ビルや高い木の近くは特に危険である。だが、ノルワッルゼ商会第二支部は決して高い建物では無かった。(技術的には高層ビルを立てられるものを持っているが)、王侯貴族との軋轢を生むので暗黙の了解の内に高い建物を建てるのは王侯貴族の特権のような物になっていたからだ。

 そもそも落雷時屋外より屋内にいる方が安全であり、いかんば落ちたとしても落雷当時は大雨。あれだけの屋敷が全焼するなどあろうはずがない。仮に落雷が偶然だとしても、屋敷が全焼したのは何者かの思惑が絡んでいるという確信に近い疑惑がレインハルトにはあった。


 (・・・どうしたものか・・・・・・。)


 先程から堂々巡りの思考を繰り返している。正直レインは全てを頬り投げたい気持ちに駆られていた。証拠も目的も手段も犯人も分からない。ないない尽くしで分かってることなど一つも無い。もうこの件は終わりで良いんじゃないのか・・・。

 レインが半ば投げやりに、「セバスとミランダだけには伝えておこう」と決めた時、部屋の扉が外から叩かれ、白髪の老執事セバスが入ってきた。

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