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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
三章 ロア商会

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二十五.十三話 水洗トイレ2

「ほほぉ~。これが水洗トイレですか~」


 皆がどんな反応をするか気になって仕方がなかった俺は、早速家族に工事完了を知らせた。


 一番に興味を示したのは、やはりユキ。


 フィーネも使ってみたそうにしていたけど、全ての工程を知っていて何となく使用感を理解している彼女より、「リアクション芸人顔負けの事をしてみせる!」と豪語するユキに初陣を任せる事にした。


 精霊はトイレなんてしないと言っていたけど、新作にして大作の魔道具は使ってみたいらしい。


「しないだけで出来ない訳じゃないんですよ~」


「なんだそれ・・・・じゃあ食べたものはどこに消えるんだよ?」


「魔力です~。この世の全ては精霊と魔力で構成されていますからね~。ちょっとコツを掴めば誰でも出来るようになりますよ~」


 俺には一生関係なさそうな話だな。快食快便で何の問題もありません。


 それよりトイレに到着した事だし、説明に入ろうか。


「まず礼儀作法から」


「礼儀!?」


 まさか用を足す前に準備段階を挟むとは思っていなかったユキは、驚きの声を上げる。


「お前トイレ舐めんな! 精霊さんが頑張ってくれるから成り立ってるようなもんだぞ!?」


「いえ、私は良いんですけど、皆さん急ぎの時とかどうするんですか~? 割と重大な欠陥のような・・・・」


 まぁそう言われたらぐうの音も出ないんですけどね。


 はいはい、ちゃんとやりますよ。やれば良いんでしょ。



 コホンっと仕切り直し、改めて正しい水洗トイレの使い方の説明を始めた。


「用を足し終わったらまずこの『洗浄』ってマークの魔法陣を触る。

 その後に大小ある『流す』ってマークの魔法陣に触ると、それに見合った量の水が流れて便器が綺麗になる。

 あ、魔法陣に触ると自動的に魔力を吸収する仕組みだから特別な事は必要ないぞ」


「え~、それだけですか~? 大作って言うので期待しましたよ~」


 ただユキにとっては思ったより普通の魔道具だったらしく、ガッカリしたような声を出してブーブー文句を言い始めた。


 たしかに視覚的な変化は座れるようになった事ぐらいしかない。


 だが、半年も掛けた大作にそんなこと言われちゃあ黙っていられないわな。


「バカっ! どれだけ複雑な仕組みになってると思ってるんだ!!

 地下のタンクを見たら驚くぞ」


「なら見せてくださいよ~」


 百聞は一見に如かずと言うし、このままここで口論しているよりは良いかな。


 本来なら絶対にお見せ出来ないものだけど、使用前だし、何より貶されたままではシャクなので特別に許可してやった。


 メンテナンスが出来るように床にもタンクにもフタが付いていて、楽々オープンだ。


「わぁーっ! 凄いですー!! 精霊さんがやけに元気ですね~。この魔法陣の影響でしょうか? こっちは貯水ボックスみたいですけど少し違いますね~。水を通すんですか? なんで水を蒸発させているんでしょうか~?」


 すると、今度こそユキは感心した様子で褒めてくれる。


 これよ、これ。どうだ! 俺の凄さが理解できたか!!


 ・・・・。


 ・・・・・・・・あれ? お~い。


「ちょっ、いつまで見てるつもりだ。早く使ってくれよ。あとで詳しく教えてやるから」


「(じ~~~)・・・・・・」


「・・・・使えって、言ってるだろうが!!」


 ザクッ!


「っ!? 目がぁぁぁあああああっ!」


 放っておいたら一日中でも観察してそうだったので、目潰しで強制的に止めさせてトイレ体験会に移行させたけど、たぶん俺は悪くない。



 もっと見たかった、と不満気だけどウォシュレットはウォシュレットで気になっていたのか、アッサリ引き下がってくれた。


「ルークさんは見てなくて良いんですか~?」


 そして俺の最終奥義を喰らっても一切ダメージを受けていないのか、飄々とそんな事を聞いてくる。


 もちろん俺は何も言わずに外へ出た。


 水洗トイレの試運転のことだ、それしかない。



 少しして、ギャーッという悲鳴とジャーッという水の流れる音が聞こえてきた。


 いや聞き耳を立てていたわけじゃないよ? ここのドア薄いんだ。俺は感想が聞きたいから待っていただけです。


「ビックリしましたー! 突然水が出てきましたよー!?」


 そのちょっと薄めのトイレのドアが勢いよく開き、中から出てきたユキは俺に掴みかかって来る。


「あれがもう1つの発明品『ウォシュレット』って言うんだよ」


「も~、最初に説明してくださいよ~。まさかノズルが伸びてくるとか思わないじゃないですか~」


「ゴメンな。実は俺、精霊を驚かせるのが趣味なんだ」


「そんな趣味はダメですー!」


 両手で大きくバッテンを作ったユキ。どうやら俺の仕掛けたドッキリはお気に召さないようだった。


「まぁ私が被害者にならなければ大歓迎ですけどね~」


 と、最後に仕掛け人にはなりたいと言ってリビングへ戻っていった。


 ちなみに水洗トイレ全体の感想としては「清潔感があって良いと思いますよ~」との事。




 さて、犠牲者・・・・じゃなくて実験台・・・・でもなくて・・・・え~っと・・・・・・ほら、あれだ・・・・・・・・。


 と、とにかく! トイレの試運転が終わった事で家族全員が使えるようになったわけだ!


 欲しかったリアクションが得られた事だし、幼いアリシア姉とか来客のために説明文を置き、皆にも使ってみてもらった。


 『誰にでもわかる絵』じゃなくて『説明文』ってところが肝な。


 使い方はわかるけど、誰も局部を水責めされるとは思うまい・・・・けけけっ。


「新感覚だけど素晴らしい発明だよルーク。排泄物が出ないのも良いね」

「よくわからんが快適だったぞ」


 父さんとマリクは割と淡白な反応だったけど、清潔だし節約にもなるので便利だと気づいてくれたようだ。



「「おぉー・・・・うわー・・・・・おぉおおおぉぉっ!」」


 レオ兄とアリシア姉はウォシュレットが気に入ったらしく、洗浄ボタンを連打してノズルを出し続け、まるで噴水でも見るようにいつまでも眺めていた。


 まぁ子供からしたらオモチャだよな。


 取り合えず問題なく受け入れられているようで何より。



 さて、問題はこの後だ。


 女性陣、とりわけフィーネと母さんは喜びを通り越して感動していた。


「ルーク様、私は涙が出ました。なんと衛生的で、無臭で、静かで、掃除がしやすいのでしょうか。

 綺麗好きな人にとってあの水洗トイレは画期的ですよ!」


「よ、良かったな・・・・」


 ワタクシ、その普段からは考えられない熱弁っぷりにドン引きですよ。


 もしかしたら製作者側って事を忘れている可能性すらある。


「はい! 常々思っていたのです。どうして拭き取る葉っぱは改善されないのかと。答えはあのトイレにありました!

 私は貴方に仕えている事を誇りに思います。素晴らしい魔道具をありがとうございます!」


 メイドとしてトイレ掃除も仕事の内だけど、潔癖症ってぐらい綺麗好きなフィーネにはやはり苦痛だったらしい。


 こんな調子でしばらくの間、顔を合わせる度に水洗トイレの素晴らしさを語られた俺の苦労なんて誰にもわかってもらえないんだろうなぁ・・・・。



 まぁこれがフィーネ1人だったらまだ耐えられた。


 ここに俺の人生の大半を共にしている母さんが加わった事で面倒臭さは何倍にもなる。


「ルークあれは良い物だわ! 一家に1台取り付けるべきよ! 何故もっと早く言わなかったの!? 言ってくれれば私達でも作ったわよ!!」


 感謝のフィーネ。圧力の母さん。


 この2大巨頭を相手に逃げる術を持たない俺が取れる防衛策はただ1つ。


 責任転嫁である。


 フィーネは大人しく受け入れるしか無理。


「え? 構造が複雑で作るのが難しいの? 何とかしなさい。

 ・・・・下水工事? それが出来れば全ての家庭に水洗トイレが設置できるのね!? アラン下水工事をしましょう!!」


「エリーナ。他の貴族たちにも賛同されないと無理だよ。特に今は魔獣対策がね」


「どうせ会議とか言って金持ち自慢をしているだけでしょ。それよりもトイレよ!」


 もしかしたら近々、下水工事が始まるかもしれない。


 でも微精霊を活性化させる魔法陣の説明なんて俺には無理だよ。素人が理解できるものじゃないんだぞ。


 そうなったら俺が1人で水洗トイレを複製するしかない?


 あの・・・・もう少し先にしませんか、下水工事。


 もしヨシュア中の人々から2人みたいな感謝をされたら、俺は間違いなく圧し潰されますよ。

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