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戦国時代の大魔導師  作者: あや
序章
4/32

その4

お爺さん達がもたらしたのは、思いもしなかったお話でした

この美濃の国主が重臣に、住む城を攻め落とされて国から追放されたというのです……


まずこの国、美濃の国主は土岐美濃守という人で、つい最近まで兄や甥と国主の座を争っていたということです。

そしてその争いで美濃守を勝利に導いた中心人物が先程の重臣、斎藤山城守という人だそうです。

この斎藤山城守という人物、世間の噂では最初は低い身分だったそうですが上司に取り入り気に入られて、重用されてはその上司を蹴落として出世してきたとのことです。

もっともただ取り入っているだけではなくてそれだけの実力を持っているということらしいですが。

その山城守が前年国主の弟を暗殺して以来とうとう二人の関係も微妙になってきていたところ、この度ついに実力行使に出たということだそうです

土岐美濃守とその子は隣の国の尾張へと追放され、斎藤山城守が美濃の国を掌握しました。

ですが国内にはまだ美濃守派の武将も多く、暫くは(いくさ)が続くだろうとの話でした。

「儂の親戚に井ノ口で(あきな)いをやっとる者がおりましてな、こういった話はそいつから伝わってくるのですよ」

少し得意気にそう話すのがこの村の長です。

私はまず、この時代で戦が起きると具体的に村にどのような影響があるのかを訊ねました。

「まずは領主様から兵を差し出すよう通達が来ます」

この時代の兵隊、所謂足軽ですね

「田植えも一応済みましたし、支度金も出るだで、まあそれはいいですだ」

ああ、そういうものなんだ、って少し呆気にとられてしまいます。

「とはいえ死んだら元も子もないぞい」

「その辺りは上手くやるだよ」

やって来た方々が銘々勝手に話している事を聞いていますが、生前に抱いていたイメージに比べてあまり悲壮感がありません

以外と現実はそんなものなのかもしれません……。

「ですがまあ、田んぼの世話なんかは女子衆に任すとして、どうしても男手が足りなくなりますで」

「なんとか刈り入れまでには終わってくれるとええがのう」

「それに隣村の連中のこともあるでな」

そうでした、まだその問題が残っていました。

もし隣村の領主がこの村の領主と敵対している場合、危険が大きくなるかもしれません。

そう思い訊ねてみたところ、どうやら同じ領主が治めているようです。

なら安心ですねと言うと、甘いと言われました。

「お坊様は人がええだ、村と村の争いはそんな簡単なもんじゃねえですよ」

そういうことらしいです。

「とにかくお坊様、なんとかお力をお貸し願えませんだか」

そういって皆さんが頭を下げます。

お力というのは魔法、……いえ、御仏の奇跡でしたか、その事でしょう。

私は目を閉じると、何か良い手段がないか考えます。

男手の不足はやはり女性で補うしかないのでしょうがその場合どんな魔法が使えるか

筋力増強(ストレンクス・エンチャント)は数分しか効果が保ちません

これでは長時間の作業には不向きです。

では、畑を耕すのに使った石人形(ストーン・サーバント)は?

確かに力は十分ですし持続時間も一時間程はありますが、単純作業しか出来ないのが難点です。

それに、数を揃えるとなると少し大変です……。

いっそのこと竜牙兵(スケルトン・ウォリアー)を兵隊代わりに提供しては……?

駄目です、そもそも素材がこの世界では手に入らないでしょうし、それに竜牙兵を多数引き連れた私の姿はまさに悪の魔法使いそのものです。

私は、幾つかの手段はありますがどれも決め手にはなりにくいと伝えます。

結局は隣村が事を起こした場合の協力と、何か出来ることはないかもう少し考えてみると言うのが精一杯でした。

今日のところは一先ず解散して今後のなり行きで判断することになりました。


一人になると私は、先程聞いたばかりの周囲の状況について考えます。

この村を納める領主の住むお城は羽崎城、城主は羽崎光直

次にこの羽崎城からおよそ南東に一里(約4Km)行った所にある久々利城

ここの城主は久々利三河守といって羽崎氏の本家筋に当たるらしいです。

そしてここから北におよそ一里行った所には兼山城

城主は斎藤大納言正義といって斎藤山城守の養子だそうです。

この兼山の斎藤さんが久々利・羽崎両氏の上司となるそうです。

なのでこの3人は斎藤方ということになるでしょう。

次にそれ以外のお城について考えてみます。

まず一番近いのが北の方に六町ほど(約700m)行った所にある明智城、城主は明智光安

この人の妹は斎藤山城守の奥さんらしいので、たぶんこの人も斎藤方でしょう。

明智と言えば私でも知っている明智光秀とよく似た名前ですが、関係者でしょうか?

よく似ていると言えば斎藤山城守の経歴を聞いていて、斎藤道三を連想したのですが、村の方々に聞いてみても道三なんて名前は聞いたことがないとのことでした。

次に東へ一里と十町ほど(約5Km)行くと御嵩城、城主は小栗信濃守

噂では野心的な人物らしいとの話で、斎藤方に付くのではないかという話でしたが決めつけるわけにはいきません。

今城は南西に一里ほどの所、城主は小池刑部

周囲が斎藤方で囲まれている中無理に敵対する事はないだろう人物との評価でした。

楽観は出来ませんがまず大丈夫だろうということです。

羽崎から西へ一里半行くとあるのが土田城、城主は土田源太夫

この人は明智さんの部下とのことなのでやはり斎藤方でしょう

他にもいくつかの城がありますが、近場の様子は概ねこんなところらしいです。


こうして考えてみると、いますぐこの村が襲われることはないでしょう

特に一番近い場所にある明智城が山城守の親族というのが大きいです。

そして人手の問題は、まだ多少は時間の猶予があります

ですから、まずは隣村の問題から手を着けることにしました……

今回の執筆作業中に資料誤読によるミスを発見しました

羽崎光直を久々利頼興の兄弟と想定して書いていましたが、実際には久々利康頼(久々利氏初代)の兄弟でした

この人は土岐康貞の子なので南北朝期の武将になってしまいます

ただ羽崎城の開城時期が天正11年頃(おそらく本能寺以降の美濃大乱関係かと)とのことですのでこの時期(天文11年)には羽崎氏が治めていたと考えて良いと思います。

ですので、今回は同じ名乗りの子孫ということとして修正せずに進めることとしました。

名前の出た時点で年代を推定する手段となる唯一の史実人名だっただけにミスリードをする結果となってしまいまして申し訳ありません

今後はより注意して資料確認するよう気を付けてまいります

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