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戦国時代の大魔導師  作者: あや
序章
3/32

その3

ふう、お茶が美味しいですね……

私は今、縁側でお茶を飲みつつ猫を撫でながら日向ぼっこをしています。

何故こうなったかといいますと……


あの日、騒動を収めるために魔法を使ってしまった私でしたが、“御仏の慈悲による奇跡”と言うことで納得していただきました。

勿論誰もがそれをすんなりと受け入れた訳では無かったのですが、あのお爺さんを中心とした方々が「騒ぎを収めて村を救ってくれたのだから」と説得してまわられ、その甲斐もあってどうにかそれを受け入れていただきました。

その際に村の外れにある荒れ寺へと身を落ち着けるよう薦められました。

私は最初遠慮しようとしたのですが、お爺さんより「お坊様がこの村に残っていただければこの度のような事があってもまた助けていただける、奇跡の事もそう言って納得させた」と耳打ちされましたので、このお話をありがたくお受けすることにしました。


長い間放置されていたようで、小さな仏像が置かれた本堂以外の建物はほぼ朽ちてしまっていましたが、私一人が寝起きするには充分な広さでした。

村の方々が屋根の修理や内装の手入れなどをしてくださり、どうにか当面の落ち着き先が決まりました。

食事についても、炊事場などは無いので一日に二度近くの家から運んでいただける事となりました。

恥ずかしいお話ですが私は料理というものをしたことがなかったのでこれは本当に助かります。

それと、お爺さんに麦粉を分けていただきました。

これは麦を煎って挽いた粉で、お湯で練れば食べ物になりますし、また粉の量を減らせばお茶のようにもなります。

食べ物は分けていただけるらしいのでこれはお茶代わりに頂こうと思います。


村の方々が帰られた後、少し建物の回りを散歩してみようと思いました。

特に理由は無かったのですが、やはり自分の足で外を歩けることが嬉しかったのかもしれません。

足元に気を付けながらゆっくりと歩いていると、何かか細い声が聞こえてきました。

急いで声のする方へと近づいてみると……、縁側の下で小さな子猫が鳴いていました

親とはぐれてしまったのか、もう何日もなにも食べていないような痩せ細った姿でした。

私は子猫をつれてお堂に戻ると、指先に水をつけて舐めさせます。

少しは落ち着いてきた様子でしたが、お水だけでは栄養になりません。

着ていたローブで包み込みながら体温で温めていると、体の震えも幾分かましになったようです。

これで食べ物さえあれば……、そう考えていると、村の方が食事を届けてくださいました。

そして、その中に小さな魚の干物を見つけた時には、私は神様に感謝しました。

このタイミングはただの偶然とは思えなかったからです。

実際には少し先の川で幾らか魚が捕れるので、そう偶然というほどの低い確率ではなかったらしいですが……

干物の身をほぐし水でふやけさせながら少しずつ与えると、ようやく安心したのか丸くなって眠ってしまいました。


そうして毎日少しずつ干物を与えると、やがて仔猫はみるみる回復していきました。

私はしばらく迷い続けたのですが、この子がすっかりうちに居着いてしまい野生に戻れそうにないことを確認すると、思いきって決断し実行に移すことにしました。

入念に準備をし、猫が眠っているのを確認すると、儀式に入ります。

やがて……、私は子猫と契約を結び、この子を使い魔としました。

この子を野生に戻せるのならばその方がいいのだと思うのですが、人の手に慣れてしまった子猫にそれがかなうとも思えず、それなら精神や感覚が共有できる使い魔とした方がこの子を守れるのではと思ったのです。

……たった一人でこの世界に来た私が、なんらかの繋がりを持った相手を欲しいと願ってしまった、ただの我儘だった可能性も捨てきれませんが。


そしてしばらくの間私は、お堂の掃除をしたり縁側で子猫とのんびりしたり、たまに遊びに来る子供たちの遊び相手や簡単な文字を教えたりして過ごしていました。

その間隣の村とは小さな揉め事はあったものの大きな騒ぎには至りませんでした。

私の存在も多少は抑止力としての効果があったのかもしれません。

「向こうも生活がかかってますから、このままとはいかんでしょう」とお爺さんは言っていましたが、私はこのままお世話になり続ける事が心苦しくなってきました。

そこで、お寺の空き地に畑を作ることにしました。

石人形(ストーン・サーバント)の術で呼び出した従者を使って土を耕し、村から分けていただいた麦を植えました。

村では麦は米の収穫後の田を使って育てていたらしいのですが、水田を作るとなるとさすがに大変なのと、お茶としての用途を考えて麦を育てることにしました。

秋頃には収穫できると言うことなので今から楽しみです。


そうして田植えの季節も過ぎた頃……、遊びにいっていたやまとがとんで帰ってきました。

やまとというのは例の子猫の名前です。

この子とは精神を共有しているので、最初名前の由来を理解したためか難色を示していましたが、今ではすっかり慣れたようです。

(ごしゅじん!ごしゅじん!むらでなにかあったみたいだよ!)

私のことは愛理でいいと言ったのですが、ファミリアー契約のせいかこの呼び方を変えてくれません

なので、私の方も慣れてしまいました。

それで、村で何があったの?

(わかんない、おじいさんたちがこっちにむかってるよ!)

たち、ということはお爺さん以外にも何人かが一緒ということなのでしょう。

私はとうとう隣村との騒動が再発したのかと残念に思いました。

ですが、実際にはもっと大きな、大変なことが起こっていたのでした……。

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