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戦国時代の大魔導師  作者: あや
美濃大乱
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その3

「馬鹿者っ!!」

一人で戻った弥平次へと、光安の雷が落ちる。

「十兵衛殿は明智の跡継ぎぞ、もしもの事があれば兄に申し訳がたたぬわっ!」

「も、申し訳ありません」

打ちひしがれた様子で弥平次が謝罪する。

光安とてまだ数えで七つの息子が十兵衛を説き伏せられると思っているわけではないが、それで十兵衛に万が一の事があっては元も子もない

「その娘の言が確かなら、若狭(羽崎若狭守)は十兵衛に事が漏れていると考えるであろう……、庄左!」

「はっ」呼ばれた溝尾庄左衛門が一歩歩み出る。

「稲葉山の山城守殿へ内密に報告せよ」そう言って何事か耳打ちすれば、跳ねるようにして飛び出して行った

残った重臣へといつでも兵を動かせるよう指示を出しながら、なおも思案を重ねていく。

反意を知られたとなれば十兵衛の身は危ない、下手に動けばそれを後押しするようなものだ

といってこのまま手をこまねいていれば状況が好転するわけでもない。

光安としては、十兵衛が何も考えずに無策で乗り込むことはないだろうと考え何があっても対応できるよう準備を整えておくしかなかった。



「……ただいま戻りました」

「…にゃあ」

目の前にはひざまずく二人と一匹の姿があった

いや、一匹は座りこんで耳の後ろを掻いているだけだが

猫のことはどうでもいい

「羽崎若狭守様にはお初に御意を得ます、(それがし)明智光綱が遺児にて十兵衛と申します」

……問題はこの男だ。

見張りからの報告では若い、まだ子供といってよい武士が二人、娘と会っていたという

そしてその武士の小さい方が馬に乗り何処かへと去り、もう一人が娘とこちらへ向かっていると告げてきたときにはその正体が誰かはわからなかった

やがて馬で去った一人が長山の城へと駆け込んだとの報告を受けるに至り表情が変わった

二人は長山城主明智光安の家来ないしその関係者ということになる

その明智の関係者に娘が話をしたとすれば悠長にはしていられない

しかし、この城へと乗り込んできたその武士がまさか先の明智城主光綱の遺児で現城主光安の養子である十兵衛だったとは、流石に若狭守も思いもよらなかった。

ただの家人郎党なら始末してしまってもなんとでも言いようがある

が、明智の跡継ぎを殺したとあっては流石に言い訳が出来なくなる

とは言え、このままただで帰すわけにもいかない

この若者をどう扱うか考えあぐねていたところへ、十兵衛が意外な言葉を述べ始めた。

「この度は若狭守様に御祝いを申し上げます」

「なに?祝いだと?」

「はい、若狭守様には土岐家再興のため先駆けて兵を挙げられるとのこと、御立派な御心掛けと感じ入っております」

その言葉の真意を測りかねている間に、なおも言葉を続ける。

「若狭守様が挙兵なされたならば揖斐、山岸等の諸将は勿論のこと、この十兵衛も必ずや養父(ちち)を説き伏せ土岐明智氏の責務を果たす所存にて御座ります」

「ま、まてまて、待たれよ十兵衛殿、左様な話は某身に覚え無き事にて……」

「水臭いことを申されますな、お互い土岐を祖先とする者どうし、力を合わせ逆臣、斎藤山城を討ち滅ぼしましょうっ!」

そういうや十兵衛は羽崎若狭の手を取って押し抱く

その様子はとても、その場しのぎの嘘を言っているようには見えなかった。

それもそのはずで、山城守に対する十兵衛の感情は真実そのものであった

彼がついた嘘はたった一つ、たとえ己がどんな感情を抱いていたとしても、尊敬する養父に逆らうことなど考えもしないということであった。



熟考の末、若狭守は十兵衛を長山の城へと帰すことにした

そもそも何もしなければ明智は山城側の勢力だ

当主明智光安の妹は斎藤山城守へと嫁いでいて、二人は謂わば義理の兄弟になるのだ

当然山城守側と考えられるだろう

まして跡継ぎの十兵衛を斬ったとなればなおのこと対決は避けられない。

ならば、彼の話にのってみるのも一興と考えた。

もちろんただ十兵衛の話を鵜呑みにしたわけではない

十兵衛を返す代わりに光安の嫡男弥平次を人質として取る

代わりに若狭守の嫡男光信と家老の大森主馬が十兵衛に同行し、そのまま目附兼人質として長山城に残ることになった

これには他に二名が弥平次を引き取るために同行する。

また、光信達四人にはもし十兵衛の説得が不首尾に終わった場合、相討ち覚悟で十兵衛等を仕留めるよう命じられていた。


言ってしまえばそもそも事が他人の、それも山城守側と目される人物に漏れた時点で終わりと言えば終わりなのだ、このまま裏切られたところで現在より格段に状況が悪化すると言うものでもない

それに罠だとして、わざわざ十兵衛が危険を冒してまでこの場に現れる意味がない。

最初から光安に、あるいはそれこそ山城守に訴えればよいだけのことだ

それをわざわざそんな大掛かりな罠を仕掛ける必要性がない

そういった辺りを考え、分の悪い賭けではないと判断したのだった。


十兵衛が己の身を危険にさらした理由が、目の前にいる出会ったばかりの少女にあろうなどとは、若狭守には想像もつかないことであった……。

今回お仕事などの都合でかなり間隔が空きましたので、少々中途半端ではありますが投稿します

なお若狭守系の登場人物は資料がまったくありませんのですべてフィクション(オリジナル)となっています

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