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再誕した勇者は誓った復讐を成す為、血塗られた道を進む  作者: YUU
序章

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8 冒険者ギルド

「おい、あんた。起きてくれ」

「ん、んっ、なん、だ……」


 目を開けると、そこには今の雇い主であるケインの姿があった。こうして俺を起こしたという事は何か用があるのだろう。


「どうした、何かあったのか?」

「いや、特に大きな問題はない。もうすぐクルストに到着するから起こしたんだ」

「ああ、そうか」


 どうやら、俺が眠りに入ってからは何事も問題なく、目的地まで到着したようだ。今は街の入り口で行列に並んでいる最中のようだ。

 そして、俺が思い出すのは先程まで見ていた夢の事だった。


(それにしても、随分懐かしい夢を見たな……)


 もう戻れない、既に失われた過去。未来への不安はあったが、エイミーという妹と共に過ごしたあの幸せな日々。叶わぬ夢と分かっていながらも、どうしてもあの日々に帰れたらという思いを俺は捨てられそうにない。


(……はっ、随分と甘いな……。俺は選んだんだ、復讐者という悪鬼外道に堕ちる事を)


 そして、俺はその過去への思い、未練を断腸の思いで振り切る。

 それから少しすると街の門の付近まで来たようで、ケインが衛兵らしき男と何やら話している。すると、その衛兵は俺の乗っている荷台まで迫ってきた。どうやら、荷台に違法なものが積まれていないか検査をするようだ。


「お前は?」

「俺はこの馬車の護衛だ」

「そうか」


 その後、衛兵は手早く馬車の荷台の荷物を確認すると、外へと出ていった。


「よし、通っていいぞ」

「ありがとうございます」


 そして、衛兵の許可を受けた馬車は街の中へと入っていく。



 それからの馬車はゆっくりとした速度で街中を進んでいき、少しすると街の一角にある建物の前で停車した。ここがケインの所有している建物のようだ。


「これで護衛は終了だな」

「じゃあ、これが護衛の報酬だ。今回は助かった。もし、縁があればまた護衛をしてもらえれば助かる」

「縁があればな」


 そして、ケインからの依頼料を受け取った俺は次の目的地へと向かうのだった。






 ケインと別れた俺の次の目的地、それはこの街にある冒険者ギルドだった。

 この街には以前にも何度か訪れており、その際にここまで来た事もあった。その為、迷わずここまで来る事が出来ていた。

 そして、ギルドの中へと入ると、そのまま奥のカウンターにいるギルド職員の元へと向かう。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。今日はどういったご用件ですか?」

「冒険者として登録に来た」


 かつての俺は勇者として選ばれるまでは普通の小さな村の一村人だった。そして、勇者として帝国に連れていかれた後はそのまま帝国が命じるままに魔物の討伐等を行ってきた。

 その為、今まで俺は冒険者としての登録をする機会が無かったのである。


「分かりました。では、こちらの書類に記入をお願いいたします」


 受付嬢から渡されたのは冒険者登録の為の申請の書類だった。俺はそれに自分の名前等、必要事項を記入していき、それを終えると申請書類を受付嬢へと差し出した。


「確認いたしました。では、続けてあなたの現在のステータスを確認いたします。こちらの鑑定の羅針盤に手を乗せてください」

「分かった」


 そして、受付嬢が用意した鑑定の羅針盤に手を乗せると、今のステータスが表示された。




・名前:アークス

・種族:人間・男

・レベル:1 

・ステータス

 生命力:281/281 魔力:152/152

 腕力:101  知力:62

 体力:128  敏捷:84

 耐久:115  器用:92

 

・スキル

 なし




 そこに表示されているステータスを見た時、その内容に俺は少しの驚きと納得感を抱いた。


(……やっぱり、レベルやステータスも初期から、あれだけあったスキルもなし、か……)


 かつての勇者時代、俺のステータスは激戦を経て大抵の強者でも互角以上に渡り合える程には高かった。レベルで言えば、最大値である100まで到達しており、スキルも多数取得していた。

 しかし、あの日の皇城での儀式で力を奪われた後、俺のレベルは15にまで下がってしまっていた。それでも、その後の逃亡生活の中で経験値は僅かながら貯まっていた筈だが今はそれすらも残っていない。


(……これも復活の代償か)


 復活した時に感じた身体能力の低下具合から薄々そんな予感はしていたが、今更どうこう言ったところで現実が変わるわけもないので受け入れるしかない。

 それにレベルとスキルが初期値に戻ったからと言っても勇者時代に積み上げた戦闘経験と技量が残っている。そこまで悲観する事もないだろう。

 だが、そんな俺の内心とは裏腹に受付嬢は何やら訝しげな表情を浮かべていた。


「表示されているレベルは1、ですか……」

「そのステータスに何か問題が?」


 ここまでの会話で何かボロを出すような迂闊な事をした記憶はない。表面上は冷静になりながらも、内心では身構える。

    

「いえ、あなたからは何故か高位冒険者に似たような雰囲気とでもいうものが感じられましたので……」


 確かに、俺が今まで潜り抜けてきた激戦の数々は高位冒険者でないと経験できないほどの濃密なものだ。恐らく、この受付嬢は俺が乗り越えてきた激戦の経験を雰囲気として感じ取っているのだろう。

 しかし、表示されているステータスのレベルが1である以上、その雰囲気を気のせいとして誤魔化す事が可能なはずだ。

 また、冒険者は犯罪で国から追われている身でもなければ過去に多少後ろ暗い所があっても受け入れられている。今の俺の身の上ならば受け入れられるだろう。


「勘違いじゃないんですか?」

「ですよね……。ステータスを見る限り、そうは思えませんし……」


 受付嬢はそう呟くと何かを納得するように頷く仕草を見せた。その後、受付嬢は何らかの手続きをしていく。そして、暫く待っていると、受付嬢はその視線を再び俺へと向けた。


「では、犯罪歴や指名手配等も見つかりませんでしたので、アークスさんの冒険者登録の方を行いますね」


 そう言いながら、受付嬢は銅色の一枚のカードをカウンターの上へと置いた。


「では、こちらがアークスさんの冒険者カードになります。冒険者カードを紛失すると、再発行に手数料と時間が必要になるのでご注意ください。

 また、アークスさんのランクはGからとなります。では、続けて冒険者についての基本的な説明を始めますね」


 そして、受付嬢が話し始めたのは冒険者としての基本的な決まりや、魔物の氾濫等による緊急事態に際しての強制招集といった決まり事だ。

 だが、それらの知識については一応知っている。かつて、勇者として帝国に連れていかれた際、それらの座学に関しても一通り教えられているからだ。

 その為、俺は受付嬢の話を半ば聞き流しながら、時間が過ぎるのを待っていた。


「以上となります。ご質問等はございますか?」

「いや、大丈夫だ」


 そして、冒険者としての登録を終えた俺は冒険者カードを受け取った後、街の一角にある宿屋の一室を取り、明日に備えて眠るのだった。

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