4 断罪の復讐剣
「さて、まずは固有技能を確認するか」
歴代の勇者達はそれぞれ固有技能という特別なスキルを与えられていた。それは本人の才覚に応じて形作られた特別な力を持つ神器とでもいうべき武具を召喚できるというものだった。
そして、歴代の勇者はその固有技能に則った称号を与えられていたのだ。
俺の固有技能は【光輝なる聖剣】というものだった。その為、俺には【聖剣の勇者】という称号を与えられていた。
【光輝なる聖剣】はその名の通り、勇者に相応しい光り輝く聖なる力を持った剣を召喚できるスキルだった。
しかし、あの時に力を奪われた影響か、今迄の逃亡生活では聖剣とは名ばかりの少しだけの力を持つ張りぼての聖剣しか呼び出す事が出来なかった。
だが、復活して力を取り戻した今なら再び力を奪われる前とはいかずとも、以前よりもまともな聖剣を召喚できるだろう。
「【光輝なる聖剣】、召喚」
そして、俺が聖剣を召喚したその瞬間、手元に現れたのは俺の想像とは違い、形状は今迄と同じだが、昏く悍ましい気配を放つ漆黒の剣だった。
そこにはかつてあった筈の聖剣から放たれていた神聖な雰囲気は欠片もない。
「これ、は……」
それは最早、聖剣というよりも魔剣と呼んだ方が相応しい。光輝なる聖剣がこうなった原因として考えられるのは恐らく俺の中にあるこの憎悪と怨念によるものだろう。
「はっ、ははっ、魔剣か。丁度良い、復讐者に堕ちた俺にはお似合いのスキルだ」
かつての聖剣とは似ても似つかぬその剣はまるで俺の中にある昏い復讐心が形になった様だった。今のこの剣には聖剣という名は到底似合わない。ならば、別の名前を与えるべきだろう。
「そうだな……。新たに名付けるとすれば【断罪の復讐剣】と言った所か」
そして、俺が新たにそう名付けた瞬間、まるで歯車がカチリとかみ合ったかの様に自分の中にあった力と名前が一致したのを感じ、同時にこの断罪の復讐剣から放たれる昏い雰囲気が一段と強いものへと変わったのだ。その瞬間、俺は理解した。
【断罪の復讐剣】、それこそが俺が新たに手に入れた力だという事を。
それに聖剣から放たれる雰囲気が変わった事は俺にとってもう一つのメリットがあった。
(丁度いい。これなら、俺の正体が露呈する心配も減るだろう)
かつての俺は勇者として魔王を討伐する力を蓄える為に各地を転々としながら、強大な力を持つ魔獣を討伐していた。
その為、使っていた聖剣は勇者の象徴として数多の人間達にも知られていた。しかし、聖剣から放たれる雰囲気が変化したおかげですぐに俺の正体が露見する可能性が減った。
よく知る人間が見れば、或いは気付くかもしれないが、それでもこの剣から放たれる雰囲気から一目だけではすぐにこの断罪の復讐剣がかつての聖剣と同じものだとは気付く事は無い筈だ。
後は何らかの方法で顔を隠すなり、変装をするなりすれば余程親しい相手でなければ俺だと分からなくなるだろう。
そして、俺は断罪の復讐剣を自らの中へと仕舞う。だが、その時だった。
「……うん? これ、は……?」
ふと自分の中に復讐の断罪剣とは異なる力の存在を感じ取ったのだ。そして、その力へと意識を向けると、その力の正体を本能的に悟った。
「そうか……。これは昔の勇者達の固有技能か」
そう、俺の中にある【断罪の復讐剣】以外の力、それは今迄の勇者たちが持っていた固有技能の数々だった。
つまり、今の俺は名実共に歴代の生贄となった勇者達の無念を背負っているという事なのだろう。
だが、その数々のスキルを今の俺では使う事ができなかった。
その理由は単純、経験値が全く足りていないのだ。例えるならば、今のそれらのスキル達は水の入っていない器のようなものだ。
中身が空の状態でこれらの力を使える筈もない。
もし、これらのスキルを使おうとするならば、その器を満たす必要があるだろう。
そして、その器を満たす方法にも俺は心当たりがあった。それはかつての魔王討伐の旅での経験だった。
かつての旅の当初、俺の光輝なる聖剣はそこまで強いものではなかった。しかし、各地で強大な魔物を討伐し、経験値を得る事によって光輝なる聖剣は魔王を討伐出来る程に成長したのだ。
実際、光輝なる聖剣から転じた今の復讐の断罪剣も全盛期の力を取り戻しているとは言い難い。
ならば、かつてと同じ様に経験値を稼いでいけば、いずれは復讐の断罪剣はかつての力を取り戻すだろうし、今は使えないかつての勇者たちのスキルも使う事が出来るようになるだろう。
「目標は決まった、まずは力を蓄える。そして、必ず俺はあの時に誓った復讐を成す」
そして、決意を新たにした俺は遂にこの復讐の旅路の歩みを始めるのだった。




