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再誕した勇者は誓った復讐を成す為、血塗られた道を進む  作者: YUU
序章

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20 クラリスの解放

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

「はぁ、はぁ、はぁ、うぐっ……!!」


 たった今、俺の脳内を埋め尽くした膨大な情報、それは目の前にいる少女、クラリスの憎悪の記憶だった。現実の時間にすれば恐らくは一瞬の出来事だっただろうが、俺の頭に流れ込んできた今の記憶はそうとは思えないほどの濃密なものだった。

 また、同時に彼女にも俺の記憶が共有されているのが、不思議と理解できた。


(これは……、一体何だっ!?)


 先程まで俺達を覆っていた黒い炎はいつの間にか消えている。だが、先程の謎の現象に俺と目の間にいるクラリスの間には困惑の空気が流れていた。

 しかし、感覚的に理解できることがあった。それはこの現象が起きたその大本は間違いなく俺の中にある怨念達だという事だ。

 そして、俺はそっと目を閉じて自らの内にある怨念に意識を向ける。その時、俺はこの共鳴の様な現象が起きた原因が理解出来た。


「……ああ、そうか。そういう事か」


 俺の中にある勇者としての力、その生贄となった無数の人間たちの魂の欠片達。それらの一部が彼女の記憶に出てきた村人達だったのだ。

 だからこそ、俺の中にある魂の欠片達が彼女と共鳴し、互いの記憶を共有するという現象が起きたのだろう。

 そして、同時に俺はクラリスとの魂の間に生まれていた強い繋がりを感じ取っていた。


 今のレベルでは自分のステータスしか鑑定出来ない筈の【全知の片眼鏡】で彼女のステータスが見れるのがその証だった。


・名前:クラリス

・種族:獣人族・火狐・女

・レベル:8 Next:1120 stock:0

・状態:衰弱・奴隷化

・ステータス

 生命力:96/408 魔力:201/201

 腕力:301  知力:151

 体力:285  敏捷:206

 耐久:223  器用:108


・スキル

 なし


・種族スキル

【火狐の炎】Lv:3


・固有技能

 なし


 クラリスのレベルは8、冒険者で言えば新人並みのレベルだ。しかし、彼女の境遇を考えればこれでも高い方だろう。

 そして、ステータスの数値で言えば、流石は獣人族といった所か。身体能力はかなり高めだった。

 また、スキルがないのもクラリスが元は小さな村の村娘であり、今迄グスタフの奴隷としてこの場所に捕えられていた為、スキルを習得する為の戦闘の機会が殆ど無かったからだろう。

 因みに、ステータスにある種族スキルは彼女の様な火狐やエルフ、ドワーフといった様な人間種以外の何らかの属性に特化した種族が生まれながらに持つスキルだ。

 彼女は火狐、火に特化した種族だ。故に種族スキルとして火を操るスキルを持っているのだろう。


「これは……なに……?」


 一方、気分を持ち直した俺と違い、クラリスは未だにこの事態を飲み込めないようだ。俺は困惑するクラリスの元まで歩み寄り、今も彼女を縛る無数の鎖を破壊していく。そして、最後にクラリスの自由を奪っていた奴隷の首輪を勢い良く切り裂いた。

 その瞬間、今迄彼女を縛り付けていた奴隷の首輪はカランという音を立てて地面に落下する。


「さぁ、これでお前は自由の身だ」

「あっ……」


 俺のその言葉でクラリスはやっと事態を飲み込めたのだろう。同時に、彼女は確かめる様に先ほどまで奴隷の首輪があった場所を何度も触る。

 そして、今迄そこにあった奴隷の首輪が既に自分の首に無い事を実感を持って確認できたクラリスはその口元を歪めた。


「……あはっ……」


 そう呟いたクラリスの表情は何処か悦に浸ったかのような歓喜の笑みを浮かべていた。

 そして、クラリスはそっと立ち上がると視線を俺へと向けてきた。その瞳には昏い炎が確かに宿っている。


「アークスさん、で間違いないですよね」

「ああ」


 俺がクラリスの記憶を見たように、彼女も俺の記憶を垣間見たのだろう。だからこそか、何も言葉を交わさずとも彼女の事が理解できる。彼女が抱く憎悪を、復讐心を理解できる。彼女が何を望んでいるのかが伝わってくる。

 そして、俺たちは互いに相手に何かを伝える様に目を合わせる。俺達にはそれだけで十分だった。


「アークスさん、この男を私に譲っていただけますか?」


 クラリスのその言葉に俺は小さく首肯する。彼女の憎悪の記憶を見た俺はクラリスの事を既にただの他人とは思えなくなっていた。そして、こいつへの憎悪の念はただ裏切られただけの俺よりも全てを奪われた彼女の方が遥かに深いだろう。

 それに俺の中にある魂の欠片達も俺ではなくクラリスが手を下す事を望んでいるのが伝わってくる。故にこの男への復讐を譲る事に異論はなかった。


「クラリス、これはお前の復讐だ。存分に愉しんでこい」

「ええ、勿論です」


 俺が一歩下がると、クラリスは代わりと言わんばかりに前へと歩み出た。


「ふふふふふふっ。さぁ、私の復讐を始めましょうか」


 そして、クラリスは嗤いながら、高らかにそう宣言するのだった。

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