KATUDON~丼の底に横たわる玉葱の皮
「あのこれは……」
と私はポスターを指さした。
「あぁ、この子カワイイよな。神国でいま人気のアイドルなんだ」
と神国警察の男は答えた。
「あぁそうですね」
と私は言った。
カツ丼食えるんですか。
と聞きたいのに聞けない。
「なんだ。お前もアイドルオタクか。俺もなんだ」
と神国警察の男は言った。
「あぁそうですか」
と私は言った。
別にアイドルオタクだった過去はない。
「お前掃除人だろ。という事は前世は掃除が上手い奴だったわけだ。
俺もなんだ」
と神国警察の男は言った。
「あなたも元警察だったんですか?」
と私は尋ねた。
「いやいや。違う。営業マンだ」
と神国警察の男は答えた。
俺はなんて答えればいいんだろう。
カツ丼が気になって、話に集中できない。
「あのカ……」
と私がそう言いかけた時、ノックの音がした。
「はい」
と神国警察の男は扉を開ける。
そこには恥ずかしそうにする師匠の姿があった。
「師匠。師匠のせいでとんでもない事になってますよ」
と私は言った。
「お前ら知り合いか」
と神国警察の男は尋ねた。
「知り合いだって言ってるでしょ」
と私は言った。
神国警察の男は師匠の方を見る。
「いえいえ。こんな奴知りません」
と師匠は口笛を吹いている。
「いや。師匠ひどすぎません」
と私は抗議した。
師匠はこちらをジロリと睨みつけ、
「お前なんて知らないんだ……」
と言いかけ、言葉を止めた。
「あの刑事さん。このポスター、まさかカツ丼注文できるんですか」
と師匠は目を見開いた。
「あぁこれな。調査への協力者だけ、注文できるシステムなんだ。お前はこいつの知り合いじゃなさそうだし、除外だ」
と神国警察の男は言った。
師匠は俺の顔をじっと見る。
「あれ?お前アトムか」
と師匠は言った。
師匠……。
本当にクズすぎだろ。
「はいはい。アトムですよ。あなたの弟子のね」
と私は言った。
「お前ら知り合いなのか」
と神国警察の男は言った。
「えぇ。最近目がかすんでしまうようで、知らない奴に見えてました。こいつは私の弟子。愛弟子です」
と師匠は笑った。
なにが愛弟子だ。警察が来た時に、さっさと逃げただろう。
「それでカツ丼の件なんですが。注文したいです」
と私は言った。
「俺も俺も」
と師匠は手をあげた。
「そうか。ちょっと待て。注文してやる」
と神国警察の男は外に出た。
「しかしアトム。お前ついてるな。カツ丼食えるんだぜ。最高じゃねぇか」
と師匠は笑った。
「本当にそうですね。最高でした……じゃねぇわ。この人でなし」
と私は叫んだ。
(がちゃ)
扉の開く音がする。
「ははは。本当に仲がいいな」
と神国警察の男は笑った。
神国警察の男の手には丼が二つあった。
口の中に唾液が溜まる。
「こっちがお前で、こっちがお前。そしてこれが割りばしだ」
と神国警察の男はポケットから割り箸を取り出す。
丼の蓋を開けると、
ぶわっと湯気が出た。
(いただきます)
私と師匠は同時に食べ始めた。
ひさしぶりのカツ丼だ。
この出汁の味。
醤油の香り。
ご飯のうまさ。
最高だ。
そしてカツ……。
うん。
このカツ。
何かがおかしい。
(ハムカツだ)
私と師匠は目を見合わせた。
騙された。
そう思いポスターを見たが、
どこにもトンカツだとは書かれていない。
ハムカツの可能性だってあったはずだ。
ハムカツ丼 VS カツ丼
どちらもタンパク質は取れるが、
まるで違う。
ハムも豚の場合が多いが、
まるで違う。
「悪い事はするもんじゃないな」
と師匠は呟いた。
「そうか自供する気になったか。それでガイシャをやったのはお前か」
と神国警察の男は身を乗り出した。
「ちょっと待って。なにの話?」
と師匠は眉間にしわを寄せる。
「グレーの※ンコを探しています。
見つけた方はご連絡ください。お礼をします。って張り紙をした人物が、殺されてダイイングメッセージに“グレーの※ンコに気を付けろ”と書いてあったんですって」
と私は言った。
「おぅ説明ありがとう。お前説明うまいな」
と神国警察の男は言った。
説明うまいか?それよりお前元営業マンなら、もっと説明うまくてもいいだろ。
私は思った。
「なんだ。そういう事だったのか」
と師匠はうなづいている。
この人は、どんな想像をしてたんだ。
(こーんこーんこーん)
突然大きな音がした。
「そろそろ始まるぞ」
と神国警察の男は言った。
「法廷ですか?」
と私は尋ねた。
「そうだ。見に行こう」
と神国警察の男は言った。
私たちは神国警察の男についていった。
私たちは会議室に入る。
そこには大きなモニターが設置され、
もうすでに多くの警官たちで埋め尽くされていた。
モニターには法廷が映し出される。
(キーン)
とつぜんマイクのハウリング音がした。
(これより第108法廷~外界干渉罪の裁判を行う)
アナウンスが入る。
(うぉー!!!!!!)
会議室では警官たちが熱狂している。
隣の神国警察の男の顔も興奮に満ちている。
やはり法廷は興奮するんだ。
(赤コーナー!神国検察神代表タイホヤネーン!!!!!)
法廷の熱気が一段とあがる。
赤コーナーに大仏のマスクをかぶったスーツ姿の人物が現れた。
(うぉー!タイホヤネーン。俺らの星。俺らの地道な捜査の力を見せてやってくれ)
警官たちが叫ぶ。
そうか。
検察と警察は協力関係なのか。
(青コーナー!神国弁護神代表マモルーデ!!!!!)
ごんごんごんごん。
足元を踏み鳴らす音が聞こえる。
青コーナーに大仏のマスクをかぶったスーツ姿の人物が現れた。
(マモルーデ!ひっこめ)
警官たちがブーイングを鳴らす。
(こーんこーんこーん!静粛に!!!!!では被告神A)
リングにスーツ姿で大仏のマスクをかぶった人物が現れ、
リングの中央の椅子に座る。
会場はシーンとする。
突然、画面で見たリングの上側にスポットライトが当たる。
(今回の裁判は、私裁判所長官のサイバーンカーンが取りしきらせていただく)
とスーツ姿で大仏のマスクをかぶった人物が挨拶をした。




