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普通の妹がお兄ちゃんを改造してみた。  作者: 釧路太郎
魔法使い編

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第七十八話 いざ岩盤浴へ

 ケーキを持ってきた女の人が一人一人の前に配膳してくれたのだが、今までの物と違って見た目も美味しそうで作っている人が違うというのは明らかだった。

 自分の前に並べられたケーキとは別にテーブルの中央にもやや小ぶりなケーキがいくつも並べられている。一つでは物足りないと感じた時に食べてほしいとの事だが、見た目だけでもおかわりをしてしまうのは当然だと思ってしまう。


 実際に一口食べてみると、今までとは違ってちゃんと美味しく見た目通りの味で逆に怪しく感じてしまう。こんな風に作れるのだったら最初からそうしろよと言いたくなるような出来なのだ。

 それは私だけではなく他の人も感じていたようで、お兄ちゃんにいたっては私が二口目を口に運んだ時にはおかわりをしていたくらいだ。普段はそんなに甘いモノを食べることも無いのに、このケーキはお兄ちゃんの舌も心も満足させる逸品だった。

 もちろん、うまなちゃんとイザーちゃんの前にもケーキは並んでいるのだが、二人はまだどこか警戒心をぬぐい切れないようで私が最初のケーキを食べ終えるまでフォークを手に取ることも無かった。

 しかし、私が二つ目のケーキに手を伸ばした時にはとうとう我慢が出来なかったようで、ケーキを口に運んで幸せそうな表情を見せていた。

 最終的には並んでいたケーキを全て平らげてしまったのだが、私的にはちょうど良い満足感を得ることが出来て幸せな気持ちになっていた。お兄ちゃんも満足そうな顔をしているし、うまなちゃんとイザーちゃんも完全に心を許しているわけではないまでも満足はしているようだった。


「お腹も満たせたと思いますし、次は体をリラックスさせるのはいかかでしょうか?」

「リラックスって、何をするの?」

「人間世界ではデトックスというものが流行っているようでして、それをこの世界でも試してみたのですが、思いのほか好評で施設も新築したんですよ。体験するのもしないのも自由ですし、どんな場所かだけでも見に行ってみませんか?」


 ここまでのもてなしを受けていて断ることも出来なかった私たちは、女の人の案内に従って別の建物へと移動していた。道中に変わったものは特になく、会話もせずに黙々と歩いていたのだ。満腹感であまり喋りたくなかったというのもあったのかもしれないけれど、特に話すことが無かったというのが正しいのかもしれない。

 無言のまま歩いていると、つい色々なことを考えてしまうのだが、先ほど食べたケーキはあのマスターが作ってくれたものよりも美味しかった気がする。本当に申し訳ないのだが、ここで食べたケーキのほうがすぐにもう一度食べたいと思ってしまったのだ。これは好みの問題かもしれないけれど、私にはそう感じてしまった。


「さあ、着きましたよ。こちらが岩盤浴施設になっているんですが、試してみますか?」


 私は岩盤浴をしたことが無かったので少しだけ興味はあったけれど、どう考えても時間がかかってしまいそうだし遠慮しておこうかなと思った。

 お兄ちゃんも私と同じで岩盤浴は体験したことが無いんだけど、少しだけ乗り気のようでしきりに私の事をチラチラと見ていた。

 私に気を遣ってくれるのは嬉しいんだけど、もう少しお兄ちゃんからいろんなことに誘ってくれてもいいんだけどね。嫌だったらはっきりと断るし、それがわかっているからこそ誘いにくいって思っているのかもしれないね。でも、お兄ちゃんの誘いなら断ったりしないんだけどね。

 それと、意外だったのはうまなちゃんもイザーちゃんも岩盤浴には凄く乗り気だったという事だ。さっきまでとは明らかにテンションの違う二人、全く警戒心を見せないという事に驚いてしまったが、岩盤浴に対する好奇心は完全に別人のような振る舞いだった。


「こんなところで岩盤浴が出来るなんて最高じゃん。行こうよ。今すぐ行こう」

「ほらほら、まー君も遠慮しないで行こうって言いなよ。ゆまちゃんだって一緒に行きたいって思ってるって」

「いや、そう言われても。もう少し様子を見てからでもいいんじゃないかな」

「何言ってるの。そんな事で無駄な時間を過ごすのは良くないって」

「こういうことは思いっきり楽しまないともったいないでしょ」


 さっきまでとはまるで違う様子の二人に戸惑う私とお兄ちゃん。

 確かにこの岩盤浴施設はとても綺麗で問題なんて何もなさそうだけど、本当に信用しても大丈夫なのだろうか。さっきまで警戒していた二人がここまで心を許しているというのが逆に怪しく見えてくる。

 うまなちゃんもイザーちゃんも神側の人間ではないという事は確かなのだけれど、この短時間で何かあったんじゃないかと思われても不思議ではないくらいに豹変していた。

 お兄ちゃんもそれを感じていたらしく、困惑を隠せていないようだった。

 あれほど警戒していたうまなちゃんとイザーちゃんがここまで変貌してしまうのはおかしい。

 だが、これが演技だとしたら怪しさしか残らない。


 結局、私とお兄ちゃんは二人の勢いに流されるまま施設の中へと入っていった。

 更衣室は男女別になっていたのでお兄ちゃんとは離れ離れになっていたけど、うまなちゃんとイザーちゃんはさっさと着替えを済ませて出て行ってしまった。

 私の事を放置して岩盤浴を楽しみたいという気持ちの表れなのだろうが、この時点でうまなちゃんとイザーちゃんは異常なくらいに岩盤浴を愛しているんだなという事しかわからなかった。

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