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普通の妹がお兄ちゃんを改造してみた。  作者: 釧路太郎
魔法使い編

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第七十二話 神の世界

 お兄ちゃんがどこかへ出かけてしまったという話だったので居場所を尋ねてみたところ、うまなちゃんとイザーちゃんと一緒に神を討伐しに行ってしまったそうだ。

 そんな事は私がやってあげるのにと思いながらもお兄ちゃんの帰りを待っているのだが、いつまで経ってもお兄ちゃんは帰ってこなかった。どれだけの時間が経ってしまっているのかわからないくらい待っていたのに、お兄ちゃんが帰ってくる気配は無かったのだ。


「うまなちゃんとイザーちゃんが一緒にってことなんだけど、お兄ちゃんの事を騙して神と手を組んでるとかないよね?」

「さすがにそれはないと思うよ。今までも何度か神殺しは実行してきたと思うけど、うまなちゃんもイザーちゃんも神の命乞いを受け入れようとはしてなかったよ。前回の神殺しは三日くらいで戻ってきたと思うから、明日には戻ってきてるんじゃないかな?」

「そんなに遅いなんて聞いてないよ。ねえ、今すぐ戻ってくることって出来ないの?」

「私に言われても困るんだけど。今からゆまちゃんも神のところに行く?」

「行ってもいいんだけど、お兄ちゃんと行き違いになって会えない可能性とか大丈夫かな?」

「一本道だから大丈夫だと思うよ。神のところに行くためのゴンドラって一つしかないから向こうについた瞬間にまー君に会えるかもしれないし」

「それだったら行ってみようかな。お兄ちゃんがどんな活躍しているか見てみたい気持ちもあるし」


 愛華ちゃんに連れられて神がいる場所へ行くための施設へと向かう事になった。

 この段階ですれ違ったらどうしようと心配していたところ、お兄ちゃんたちが使っただけでゴンドラはまだ向こう側にあるという事だった。今から予約しておけば私たちが着く頃にはちょうどゴンドラもこちら側に来ているという事だったのでお願いしたけれど、ゴンドラがこっち側に向かってくるときにお兄ちゃんが向こうで待っていたらどうしようかと思ってしまった。

 でも、少しでも早く会えるためだと割り切ってみたし、お兄ちゃんだって私と同じ気持ちのはずだから誰も悪くないと信じている。


「このゴンドラに乗ってたらすぐに向こう側に着くと思うけど、向こうには私たちが使えるようなものは何もないから忘れものとか気を付けてね」

「私たちが使えるようなものが無いって、どういうこと?」

「向こうの世界の物質ってこっちの世界と法則が違うからなのか、こっちの世界の人には動かすことが出来ないんだよ。このゴンドラの扉も窓も私たちには開けることが出来ないんだよ」

「へえ、簡単に開きそうなのに、不思議な話だね」


 ドアが開かないのは動いている時に危険だからだと思うし、窓が開かないのもはめ殺しになっているからじゃないかと思っていた。

 外を見る限りではあまりきれいな環境だとも思えないので窓を開ける必要はないのだけれど、ちょっとだけ窓を開けてみたいという気持ちになってしまった。ほんの少しだけ外の空気を吸ってみたいという軽い気持ちだったのだけれど、私が窓に手を伸ばして近付けてみた段階で音もなくスムーズに窓が少しだけ上に開いてしまった。

 慌てて窓を閉めようと伸ばした手を窓枠にかけて下におろそうとしたのだが、窓はピクリとも動かず窓を閉めることは出来なかった。外の空気は見た目ほど不快ではなかったものの、窓を開けて空気を入れ替えているのにもかかわらず若干息苦しいと感じてきたので窓を閉めるイメージを強く持ってみた。


「あれ、今窓が開いてなかった?」

「そんなことないと思うよ。この窓、私の力じゃ動きそうにないもん」

「いくら力が有ってもこの窓は開けれないと思うよ。でも、見間違いだったとは思えないんだよな。ゆまちゃん、本当に窓を開けてないよね?」

「私は開けてないけど。開ける必要もないし」

「それもそうだね」


 何か言いたげに私を見ている添乗員の視線に答えるようにじっと見つめていると、その添乗員は何も言わず私の意図をくんでくれたようだ。こんな時は物分かりの良い人が察してくれるのはとても助かる。

 私たちは添乗員に礼を言ってゴンドラを降りると、そのままの足で神がいるという場所へと向かう事にした。

 私たち以外にも神を見に来ている人は何人かいたみたいだが、お兄ちゃんたちが神に会っている時間だという事でその辺で土産物を物色しているようだ。お土産なんてあるのかと思ってどこにでもありそうなお饅頭を手に取ってみようとしたのだが、どう頑張っても私はその箱を持ち上げることもずらすことも出来なかった。

 お饅頭の箱が重いのではなく、触れることは出来ても掴むことが出来ない。触ることが出来ているのにそれ以上の事が何も出来ない。触っているだけで何も出来ない不思議な感覚が指先に残っていた。


「ココのお土産は見るだけなんだよ。触ることが出来たとしても、高すぎて普通に買えないんだけどね。お饅頭一箱で家が買えちゃうくらい高かったりするんだよ」

「そんなに高いお饅頭なら一回くらい食べてみたいけど」

「神の子が言ってたけど、人間世界にあるお饅頭の方が甘くて美味しいらしいよ。神の世界って、基本的に無味無臭で栄養素しか得られないんだって。見た目で何とか誤魔化しているけど、中身が伴っていないのでむなしいだけだって言ってたよ」

「じゃあ、食べる価値もないってことか。残念だね」


 今の時間はお兄ちゃんたちが神に会っているという事らしい。

 私は愛華ちゃんに案内してもらって神のいる場所へ向かったのだが、姿は見えないのにうまなちゃんとイザーちゃんが喧嘩をしている声だけは聞こえてきた。

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