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普通の妹がお兄ちゃんを改造してみた。  作者: 釧路太郎
魔法使い編

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第七十話 新作タルトとあたたかいお茶

 魔物にとっての住みやすい環境を整えることでより成長の速度が上がるかもしれない。そんな私の考えを否定したのはまさ先輩だった。

 曰く、昨今の魔物にとって住みやすい環境かどうか気にするよりもその環境に適応していった方が結果的には強くなるんじゃないかという考えが主流らしい。何でも、自分の得意な環境に身を置いていた方が確実に成長することが出来るという事だが、様々な環境に慣れておいた方が不得意な環境を減らすことに繋がるので結果的には強くなれると考えられているようだ。

 自分のホームだけで戦うのであれば、最初から最後まで自分の得意な環境で特訓を重ねるのがベストになるけれど、近頃では環境を変化させる魔法も多岐にわたって展開されているとのことで不得意な環境を作らないというのが常識にもなっている。

 つまり、環境を自在に変化させる魔物ではない生物と延々と戦い続けておけという結論に至ったわけだ。


「そう言うわけで、まさ先輩にはうまなちゃんとイザーちゃんを確実に封じることが出来る魔物を育ててもらう必要があるという事だね。そのためには、私のお友達がいくらでも協力するからね。大丈夫、私のお友達は命を奪う事に対して何の抵抗もないし罪悪感だって持たないんだから。だから、まさ先輩は安心して魔物をたくさん製造してくれていいんだよ。数をこなすことで可能性が高くなると思うし、うまなちゃんとイザーちゃんを封じる作戦が思い浮かぶかもしれないからね」

「そんな簡単に言われても無理だと思うよ。人間に向き不向きがあるように魔物にも向き不向きはあるからね。それに、俺自身がそういうの得意じゃない方だってゆまちゃんが一番よくわかってるはずだよね?」

「そうなんだけど、その辺は何とか努力でどうにかしてみようよ。まさ先輩なら出来るって」

「時間さえあればできるとは思うけど、今の状況じゃ難しいと思うよ。それだったら、他の魔王に得意な奴がいないか募集かけてみたらいいんじゃないかな?」

「普通の人間である私がそんな募集できるはずが無いでしょ。まさ先輩だってそんなお願いするの大変じゃないの?」

「大変だとは思うけど、俺が生み出す魔物を鍛えるよりもそっちの方が確実だと思うし、やる価値はあるんじゃないかな」

「じゃあ、そう言うわけで、よろしくね。私はいったん戻ってお兄ちゃんに報告してくるから。大事なことを忘れていたんだけど、マスターの奥さんはどこにいるの?」

「ああ、あの奥さんなら来週で契約が切れるから旦那さんのところに帰るんじゃないかな。そろそろ家が恋しいって言ってたし、時々ここに料理を作りに来てくれるためのスポット契約ならしてくれるってことだからね。今も厨房で新作料理の仕込みでもしてるんじゃないかな。ゆまちゃんは食べていかないの?」

「うーん、ちょっと気になるところだけど、やっぱり今日は早く戻ってお兄ちゃんに報告してくるよ。ついでにマスターにも教えておくね」


 今まで待っていたことを考えたのなら、来週まで待つのなんて余裕だろう。私はそう思ってマスターに伝えてからお兄ちゃんのところに戻ろうと思ったのだが、マスターの我慢はとっくに限界を迎えていたようだった。

 大人が泣くところを見るのはちょっと辛いものがあるけれど、私の事を信じて待っていてくれたんだと考えると別の意味で申し訳なく思ってしまう。だからと言って、初めて会った私の事をそこまで信用してくれていたというのもどうなんだろうとは思う。

 誰も壊せない自動ドアをたまたま壊すことが出来ただけのか弱い私。そんな私の事をそこまで信用してくれるのは他に何か理由があるのかもしれない。

 例えば、マスターの娘さんが亡くなっていて私に似ているとか、初恋の相手に私が似ているとかあるのかもしれない。どっちにしろ私には関係のない話であるし、あまりここに長居をするつもりもないのでさっさと帰ろうと思う。


「みっともないところを見せてしまったね。お詫びと言っては何だけど、お茶と新作のタルトをご馳走したいんだけど、時間はあるかな?」

「時間はあまりないんですけど、マスターの好意を無下にするのもどうかと思うので、お言葉に甘えていただきますね」

「そう言ってもらえると、こちらも助かるよ。じゃあ、さっそくお茶の準備をするね。今日のお好みはあるかな?」

「全部お任せでお願いします。マスターのいれるお茶はどれも美味しいので」


 こんなところでゆっくりしている時間などない。本来であれば、すぐに戻ってお兄ちゃんの事を守らないといけないのだけれど、マスターの好意を無駄にすることなんて誰も許してくれないだろう。

 お兄ちゃんだって少しくらいはゆっくりしてほしいって思っているのかもしれない。正直な話、いくら早く向こうに着いたところでお兄ちゃんのために何かが変わるとも思えない。

 早く着いた方が何かが起きる可能性も高くなってしまうとは思うけど、それ自体も誤差の範囲であまり影響がないと思う。


 私が自分に言い訳をしているように感じてしまったが、マスターのいれてくれたお茶と新作のタルトを口に運ぶ手間を惜しんではいけないのだ。

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