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普通の妹がお兄ちゃんを改造してみた。  作者: 釧路太郎
魔法使い編

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第六十九話 ご相談

「神を殺すなんてとんでもない。まー君にどんな災いが降りかかるかわかったもんじゃないよ」


 まさ先輩はいつになく取り乱しているが、私の冗談を本気だと受け取ってしまったのかもしれない。私が神ごときを相手にしてあげるなんて本気で思っているのだとしたら、ちょっと面白いかもしれない。その事はまさ先輩だってわかっているはずなのに、魔王になってその役になりきっているから忘れちゃってしまっているのだろうか。

 本当に不憫な人だ。


「私がお兄ちゃんしか見ていないってのはまさ先輩もわかっているよね?」

「それは知っているけど、さすがに神にまで手を出そうとするのは間違っていると思うよ。いくらゆまちゃんが凄い力と能力を持っているからと言って、神を相手にするってのは良くないんじゃないかな」

「大丈夫。本気でそんな事を考えてるわけじゃないから。私とお兄ちゃんの事を邪魔してくるんだとしたら、容赦しないってだけの話だよ。そんなわけで、私がまさ先輩に何をしてほしいかわかってもらえてるかな?」

「全然わからない。申し訳ないけれど、こっちは魔王の仕事でいっぱいいっぱいになっていてゆまちゃんの事を見てなかったんだよね。良かったらなんだけど、何をすればいいか教えてもらえないかな?」

「まさ先輩が忙しいってのはわかってるからそんなに怯えなくても大丈夫だよ。これは私の願いなんだけど、まさ先輩にとっても悪い話じゃないと思うんだ。だから、いい返事をきかせてもらえると助かるな。今すぐに返事を貰えたりするかな?」


 私が何も説明せずに返事を求めるのは今回が初めてというわけではない。いつもまさ先輩は私のお願いをちゃんと聞いてくれるのだ。その信頼があるからこそ、説明する手間を省くことが出来ることになる。


「わかった。ゆまちゃんのお願いなら喜んで聞くよ。どんな事でも言ってくれていいからね」

「まさ先輩ならそう言ってくれると信じていたよ。私のお願いはただ一つ、お兄ちゃんに色目を使ってるうまなちゃんとイザーちゃんを生かしたままどこかに閉じ込めて永遠に出られないように見張っていてほしいだけなの。簡単だよね?」

「簡単だよ。なんて気軽には答えられない話だけど、出来る限りの努力はするよ。でも、あの二人を同時に相手にするのは難しいかもしれないな」


 うまなちゃんとイザーちゃんはいつもどんな時でもお兄ちゃんの事を見守っている。私というものがありながら、お兄ちゃんもそれを受け入れている節があったりする。

 でも、お兄ちゃんは何も悪くないし、お兄ちゃんは優しいんだからうまなちゃんとイザーちゃんを邪険に扱うことが出来ないって言うのも理解できる。

 だけど、その優しさに甘えてお兄ちゃんの近くにいようとするうまなちゃんとイザーちゃんの浅ましさには反吐が出る。どこに行ってもストーカー的に付きまとってくるし、どうにかしようとしても私ではどうすることも出来ない。不本意ではあるけれど、ここはまさ先輩に力を貸してもらうしかない。

 どういうわけか、私が直接うまなちゃんとイザーちゃんに手を出すことが出来ないのだ。

 きっとお兄ちゃんもうまなちゃんとイザーちゃんに攻撃することが出来ないのだと思うけど、優しいお兄ちゃんは二人に対して攻撃を仕掛けたりなんてしないと思う。

 私が直接手を出せないのであれば、間接的に手を出してやればいい。

 まさ先輩とその下にいる魔物たちには、そのための駒になってもらう必要があるのだ。


「ゆまちゃんが大量に俺の配下を殺してくれたおかげで数だけは充実してることになったけど、これから鍛えるのにしても時間はかかっちゃうと思うんだよね。そんなわけで、あいつらが瞬殺されない程度の強さになるまで鍛えてあげないといけないんだけど、待っててもらえるかな?」

「それは仕方ないと思うんだけど、まさ先輩のやり方はちょっと温いと思うんだよね。この世界では死んでも生き返ることが出来るし、魔物であれば弱くはなってしまうけど数を増やすことも出来るじゃない。それだったら、まさ先輩がやってる今みたいな優しい指導じゃなくて、もっと昭和的なスパルタ、いや、戦国時代のような死が隣り合わせにあるような状況で鍛えた方が良いと思うんだよね。まさ先輩もその方が効率的に育てられるってのはわかってるよね?」

「それはわかるんだけど、仲間殺しだと復活するのに年単位で時間が必要になるって知ってる?」

「それは知らない。そんな事があるの?」


 人間と魔物で違いなんてそんなにないのだろうと思っていたけれど、こういった些細な違いが人と魔物を分けているのかもしれない。

 人間であればちょっとした怪我や病気を治すのにも気軽に命を奪って再生させることが出来るのに、魔物であれば仲間殺しではペナルティがあるという。もしかしたら、人間よりも魔物の方が倫理観があると言えるのかもしれない。

 考えてみれば、人間は魔物に対して不意打ちや騙し討ちも平気で行っているし予告もせずに相手の陣地に乗り込んでいったりもしている。


 もしかしたら、魔物の方が社会的に成熟していると言えるのじゃないだろうか。


 だが、そんな事はどうでもいい。

 私とお兄ちゃんの邪魔をするうまなちゃんとイザーちゃんをどうにかしてもらうためにはそんな魔物でも利用しなくてはいけないのだ。

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