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普通の妹がお兄ちゃんを改造してみた。  作者: 釧路太郎


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第六話 ゆまちゃんは監視している

「これから始まるのは勝負と呼ぶにはあまりにも不公平かもしれないが、この店に女を連れてやってきたお前が悪いんだから納得してくれよ。簡単に説明だけさせてもらうが、俺たちとお前一人で三先の勝ち抜き戦を行う。俺たち八人を全員倒せたらここに女を連れてきたことを不問にさせてもらうけれど、お前が負けたらどうなるかわかっているよな?」

「いや、全然わからないけど。俺が一回でも負けたら愛華ちゃんをどうするって言うんだ?」

「そりゃ、あれだよ。なあ、アレをするんだよな?」


 お兄ちゃんのリアクションが想定外だったのか、それともメガネの女の子に何をするのか決めていなかったのかわからないけれど、お兄ちゃんを囲んでいる八人の男の人達はかなり困っているようだった。

 いかつい見た目の人もいるのに、誰一人として積極的に何かをしようという人はいないみたいだ。

 だが、そんな人たち相手でもお兄ちゃんが全員相手に三本先取して勝ち抜けるとは思えない。

 お兄ちゃんの得意な勝負であればなんとかなるかもしれないけど、そんなに都合よく話が進むとは思えない。むしろ、相手の得意なジャンルでの勝負になるんだと思うので、お兄ちゃんの勝機はほとんど無いと言ってもいいだろう。


「早速だが、俺からいかせてもらうか。勝負の種目はお前が決めていいぞ」

「俺が決めていいの?」

「当たり前だろ。俺たちに圧倒的に有利な条件なのにもかかわらず、俺たちの得意種目とか選んだらただの弱い者いじめになっちまうだろ。俺たちはそんな悪じゃないからな」

「そうか、意外といいやつなんだな。ちょっと見直したよ」

「そんな事はどうでもいいから、さっさと何にするか決めるんだな」

「一回も負けることが出来ないんだし、慎重に選ばせてもらうよ」


 そう言ってお兄ちゃんは部屋の中をぐるっと一周していた。

 温泉旅行に行ったときに見たゲームコーナーにあったちょっと古いゲーム機から最新の家庭用ゲーム機まで揃っている。好きな人だったら毎日遊んでも遊び足りないんじゃないかと思うくらいのゲームが充実しているのだけれど、お兄ちゃんが得意そうなゲームはあるのだろうか?

 そもそも、お兄ちゃんがゲームをやっているところなんて見た記憶が無いので何を選ぶのか予想もつかない。まだ私たちが小さかった頃に親戚のお兄ちゃんとマリオカートをやった記憶はあるのだけれど、その時のお兄ちゃんは全然うまくなかったと思う。

 メガネの女の子がどうなっても別に私は気にしないんだけど、お兄ちゃんが負けるところなんて見たくないし、女の子を守れなかったらお兄ちゃんはきっと落ち込んじゃうんだろうなと思う。お兄ちゃんは優しいから自分が犠牲になってでもメガネの女の子を守っちゃうんだよね。

 こんな時のためにまさ先輩を利用した方が良いと思うんだけど、あの人だけじゃちょっと不安だよね。何かあった時のために知り合いの元軍人さんにも声をかけておいた方が良いかな?

 なんてことを考えながらモニターを見ていると、お兄ちゃんが何で勝負をするのか決めたようだ。


「じゃあ、最初の勝負はアソビ大全の中から選ばせてもらってもいいかな?」

「もちろんいいぞ。出来れば短時間で勝負が決まるゲームを選んでほしいところだが、それもお前に任せることにしよう。なにせ、俺たちに凄く有利な状況なんだからな。あとで不公平だったと言われても困るし」


 一対八の時点で公平ではないと思うのだけど、最後の最後でほんの少しだけ譲歩したというのは男としてどうなのだろう。

 絶対に負けたくないので自分たちに圧倒的有利な状況を保ちつつも、最後に選ぶのはお兄ちゃんに任せて負けても納得してもらおうという魂胆が見えていて不愉快だ。

 それでも、お兄ちゃんは逃げずに立ち向かっているのが格好いい。そんなお兄ちゃんを見てメガネの女の子が惚れたりしないか不安になってしまうけど、表情を見ている限りそんな感じには見えなかった。


「もう一つ確認させてもらいたいんだけど、同じゲームを選んでも大丈夫なの?」

「それは構わない。何だったら、お前がずっと一緒でも構わないぞ。俺らの得意ジャンルはそれぞれ別なんだからな」

「じゃあ、ずっと将棋でお願いします」

「え、将棋?」


 お兄ちゃんとメガネの女の子を囲んでいる男たちは信じられないものを見たという表情を浮かべていた。

 メガネの女の子も驚いた顔をしてお兄ちゃんの事を見ているのだが、私もお兄ちゃんが将棋を選んだことに驚いてしまっていた。

 なにせ、お兄ちゃんが将棋をやっているところを見たことなんて無いし、将棋が好きだという話も聞いたことが無い。

 ちゃんとルールを知っているのかも疑問だが、あの八人の中に将棋が凄く強い人がいたらどうするのだろう?


「ちょっと待ってもらってもいいかな?」

「ああ、かまわんよ」


 先ほどまでとは打って変わってお兄ちゃんが優位に立っている。

 八人の男たちはメガネの女の子から離れて円陣を組んで相談をしているのだが、盗み聞きしている内容から察するに、誰一人として将棋をちゃんと理解している人はいないようだ。

 格闘ゲームやスポーツゲームやボードゲームにトレーディングカードゲームなど様々なゲームが得意な人はいるようなのだが、将棋やオセロがちゃんと強い人はいないみたいだ。

 お兄ちゃんの実力がどれくらいなのかわからないけど、この感じだったら全勝も夢じゃないのではないだろうか。

 あくまでも、お兄ちゃんがちゃんと将棋を指すことが出来ればの話ではあるが。


 あまりにも自信に満ち溢れているお兄ちゃんの姿はいつもよりも格好よく見えていた。

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