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普通の妹がお兄ちゃんを改造してみた。  作者: 釧路太郎
魔法使い編

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第五十四話 妖精さんのお出迎え

 溶けた鉄に対して氷結魔法なんてよくない結果が待っていると思うんだけど、話しは最後まで聞いた方が良いんだろうか?

 嬉々として語る愛華ちゃんを見ていると、途中で話を遮ることなんて出来ないと思ってしまった。


「それで、一生懸命氷結魔法を使って溶けた鉄が来ないようにしていたみたいなんですけど、一対複数の勝負なんて結果は見えているじゃないですか。それなのに、私の友達は最後まで希望を捨てずに自分の周りを氷の壁で覆いつくそうとしたんです。天まで届くんじゃないかってくらいの勢いで氷の壁を作っていたんですけど、やっぱり妖精たちの物量にはかなわなくて氷の壁ごと溶けた鉄で覆いつくされたんです」

「そうなっちゃうんだろうね。でも、その後にも何かあったんでしょ?」


 愛華ちゃんは私の問いかけに驚いていたようだけど、誰がどう見ても何かあるんだろうなって予想は出来る。友達のピンチを話しているのに嬉しそうな顔を見せるってことは、何か逆転するきっかけでもあったんだろうと思うのが当然だろう。

 誰でも気付くようなことだとは思うんだけど、愛華ちゃんは私の事を観察眼が鋭く頭の回転が速い女だと思っているようだ。褒められるのは嬉しいことだけど、誰でもわかるような事でそこまで褒められるのは何となく気まずいモノがある。


「天才のゆまちゃんにはすべてお見通しかもしれないんだけど、ちょっとだけ言わせてもらおうかな。なにせ、私のお友達が文字通り命を懸けて反撃したんだからね」

「そうなんだ。それって、溶けた鉄が爆発して妖精に向かって飛び散ったとか?」

「もう、その通りなんだけど、先に言わないでよ。私が教えてあげようと思っていたのに。でも、やっぱりゆまちゃんは頭が良いんだね。何も言わなくてもそう言うことまでわかっちゃうなんて凄いよ。私の友達が死んだと同時に大爆発が起こったみたいなんだよ」

「ああ、それは大変だったね」

「そうなんだけど、爆発した時には友達の体はもう転送されていたから何一つ問題は無いんだけどね。本当は今日も一緒に来る予定だったんだけど、うまなちゃんとイザーちゃんがゆまちゃんの邪魔になりそうだからって理由で食堂の清掃係を割り当てられちゃったんだ」

「つまり、愛華ちゃんのお友達が生きている間は氷が水になることが無く手死んだと同時に氷が解けて水になったってことなのかな?」

「そうだと思うよ。でも、溶けた鉄がかかっても妖精は平気だったみたいだし、化け物みたいな耐久力で気持ち悪いよね」


 気持ち悪いとは思ったので同意したかったのだけど、ここで簡単に同意してしまうとお兄ちゃんの事も気持ち悪いと認めてしまっているような気がして何も言えなかった。

 それを察してくれた愛華ちゃんは小さく謝ってくれたけれど、そんな風に謝られると気を遣わせてしまっているみたいで申し訳ない。

 ここでいったん気持ちを切り替えるため、妖精のところへ行くことにしよう。


「じゃあ、そろそろ私も妖精のところに行ってまさ先輩が隠れていないか見てくるよ」

「うーん、今のタイミングはあまりよくないかもしれないよ。もう少し様子を見てからの方が良いと思うんだ」

「何で今は駄目なの?」

「だって、狩りに出かけていた妖精たちが戻ってきているからね。今の時間帯はあの村に住んでいる妖精たちがみんな村にいるんだよ。もう少し待てばさっきとは別のグループが狩りに行くと思うし、そのタイミングを待った方が良いと思うよね」


 私はここで考えた。

 妖精が全員揃っているというのは逆にチャンスなのではないか。誰もがまさ先輩の事を知っているとも限らないし、あの中で誰か一人しかまさ先輩の事を知らないという可能性もあるはずだ。

 どっちにしろ、全員に話を聞くことになるんだから、全員揃っている今を逃す手はない。愛華ちゃんには悪いけれど、せっかく訪れたチャンスを棒に振るようなことは出来ないんだ。


「うん、わかったよ。その真剣な表情は私が止めても無駄だってことなんだね」

「そう言うことになるかな。でも、大丈夫だから安心してね」

「心配はしているけど、大丈夫なんだろうなってわかるのが不思議だよ。ゆまちゃんとまー君から感じる安心感の正体って、いったい何なんだろう」

「さあ、それはわからないけど、私とお兄ちゃんのことなら何も問題ないからね」

「わかった。でも、ちょっとだけ待ってもらってもいいかな?」

「ん、どうかしたの?」

「私が完全に隠れるまでちょっとだけ待ってて」


 愛華ちゃんが完全に隠れるのを待ってから私は妖精の村へと足を向けた。

 私の背中を押すように弱い風が吹いているのだけれど、村に近付くにつれて気分が悪くなるような異臭を感じている。追い風にもかかわらず嫌な臭いがする。気は進まなくなってきてしまったけれど、今更引き返すことも出来ないし勇気をもって前へ進むしかない。


 村の入り口にはうまなちゃんとイザーちゃんによく似た人形が縛られて吊るされていたのだが、それ以外には目立つような物は無かった。

 何とも趣味の悪いオブジェだなと思いながらも村の敷地内に足を踏み入れた瞬間、私に向かって無数の矢が飛んできた。

 私はまずはお話をしたかったんだけど、こんな歓迎のされ方をしたのであればそれなりのお返しをしなくてはいけないと考えながら矢を払いのけようとした。


 私が触れたと同時に矢は爆発した。

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