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普通の妹がお兄ちゃんを改造してみた。  作者: 釧路太郎
魔法使い編

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第五十三話 妖精さんの話

 想像していた妖精と実際にこの目で見た妖精は動くということ以外に何の共通点もない不思議な存在だった。

 いや、私が勝手に想像していただけで実物はこんなもんなんですよって言われたら何も言えないけど。限度ってものがあるんじゃないかな。妖精って言われて一般的にイメージするような羽も無ければ小柄でも無かったし、鬼みたいな角も生えているっていうのが混乱を招く要因だと思う。

 でも、それを言ったところで何も変わることなんて無いんだから気にするだけ無駄なのかもしれない。


「でも、あんなのが妖精だなんて信じられない」

「え、何か言った?」


 思っていたことを口に出さないように気を付けてはいたんだけど、我慢出来ずに出てしまっていたようだ。

 ただ、幸いなことに何を言ったかまでは愛華ちゃんに伝わっていなかったみたいなので気を付けるようにしよう。

 妖精本人に対して失礼な事を言ってしまうのは、さすがに気が引けるからね。


「悪いんだけど、私が案内出来るのはここまでかも。これ以上あの村に近付くのは命が危ないんだよね。ほら、妖精って昔からイタズラ好きだって話だし、何人も命を落としているからさ」

「妖精がイタズラ好きって言うのは聞いたことがあるけど、命を奪うイタズラとかするんだ?」

「先月末に私の友達が妖精に頼みごとをしにこの村まで行ったんだけど、その時にカプセルを渡されたらしいんだ。村に入るにはそのカプセルを飲んで体内を浄化しないといけない決まりになったって言われて飲んだらしいんだけど、そのカプセルの中身って小型の爆弾だったんだよ。村の中央まで行って村長さんを待ってたら、村人が全員集まって村長さんが右手を挙げた瞬間に私の友達が爆発してバラバラになっちゃったんだ。死んでも生き返れるから問題ないと言えばそうなんだけど、さすがに体がバラバラになるなんて体験をしたらもうここには来たくないって思うよね」

「爆発しても元通りに生き返れるんだ。命の価値ってそこまで重くなさそう」

「でね、普通だったらそんな事があった村にもう一度行こうなんて思わないじゃない。だけど、私の友達はどうしても頼みごとをしないといけなかったんで仕方なく村を訪れたんだ。でも、そこでも酷い目に遭っちゃって……」


 愛華ちゃんの友達がどんな目に遭ったかは聞きたくないし、愛華ちゃんも言いたくなさそうだからこれ以上詮索するのはやめておこう。

 まあ、私たちを見ている妖精の表情を見ているだけでもろくでもないという事がわかるし、性格も歪んでいるんだろうな。それが顔に出ているんだと思うと、あの見た目であるというのも納得出来るというものだ。


「それで、何があったかって言うと」

「え、続けるの?」


 私は愛華ちゃんの友達がどんな目に遭ったかなんて正直興味はない。顔も名前も知らないような人が酷い目に遭ったところで所詮は他人事だし、私が知る理由もないと思う。

 でも、友人が酷い目に遭ったという話をしている愛華ちゃんはいつもよりも生き生きとしているように見えるし、いつも以上に目に光がともっているようにも見える。なんだか、妖精だけじゃなくて愛華ちゃんのイメージも最初と違ってきたかもしれないな。


「まあ聞いてよ。前回は飲んだカプセルが爆弾だったってことで警戒して何も飲まないようにしてたんだけど、その点は相手も同じことを考えていたみたいで何かを飲ませようということは無かったみたい。でね、前回同様に村の中央に移動したんだけど、そこは前回の爆発でちょっとしたクレーターになっていて妖精に見下ろされる状態になってしまったんだ。私の友達はその時点ですごく嫌な予感がしたんだけど、前回同様に村長が近付いてきて合図を送ると……」

「なに、水でも入れてきたって言うの?」

「惜しい、凄く惜しいよ。水だったら私の友達も助かったかもしれないけど、正解はそうじゃないんだよ。なんて言うかな、もっと信じられないものを入れられたんだよ。ゆまちゃんが私の友達の立場だったら、絶対に助からないだろうって思うんじゃないかな」

「いや、私が愛華ちゃんの友達の立場だったとしたら、こんな村には近づかないと思うよ」

「そうだよね。普通はそうするよね」


 愛華ちゃんの友達がどうなったのか知りたいとも思わないし、妖精がいったいどんなことをしでかしたのかも知りたくない。

 これ以上、私の中にある妖精のイメージを穢さないでほしいと思っているんだけど、愛華ちゃんは何のためらいもなく話を続けてきた。


「友達がクレーターの中心に立った瞬間、逃げられないように両足を拘束されてしまってなすすべもなく立ち尽くしてしまったんだ。その姿を確認した妖精の村長が合図を送ると、真っ赤になってドロドロに溶けた鉄を流し込んできたんだよ。ゆっくりと流れる真っ赤な鉄は地面を燃やしながら私の友達に近付いていくんだけど、抵抗はしようとして氷結魔法を一心不乱に打ち込んでたんだ」

「私が想像していた状況よりもえぐいんだけど。この村に溶鉱炉なんて無さそうなのに、いったいどこから溶かした鉄を持ってきたんだろう?」

「それは、溶かした鉄を出す魔法でも使ったんじゃないかな?」


 そんな魔法があるのか。なんて野暮なことは聞かない。私が想像してみたところ、実際に解けた鉄が出てきたし、何でもありなんだろう。

 それにしても、友達が酷い目に遭う話なのになんで愛華ちゃんはこんなに嬉しそうな顔をしているんだ。

 そこには触れないでおこう。

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