第四十六話 隠れ家へ
うまなちゃんとイザーちゃんが俺とゆまを引き離そうとしていた?
その理由がいったい何なのか想像もつかないが、現にこうして俺とゆまは引き離されている。俺が知覚にいない今、ゆまの身に危険が迫っているのかもしれない。もしかしたら、うまなちゃんとイザーちゃんの手によって危機的状況に陥っているのかもしれない。
今すぐにでも俺はゆまのもとへと駆け付けなくてはいけないのに、ゆまがどこにいるのか見当もつかない。うまなちゃんとイザーちゃんに抱きかかえられながらどこかへ飛んでいったのだが、その方向すら思い出すことが出来ない。
途方に暮れている俺を救ってくれたのは、意外なことにまさ先輩であった。
「まー君に悪気がないってのはわかったよ。体のうちに秘めている凄い魔力が暴走した結果なんだって思えば、あんな凄い攻撃も納得だよな。何をされたのか全然覚えていないって言うのはもったいない話だけど、まー君だったらきっと俺よりも強い魔王に慣れると思うよ」
「魔王とか興味ないですよ。それよりも、今はゆまがどこに行ったのか探さないといけないんです」
「ゆまちゃんたちならきっと零楼館に行ったんじゃないかな。あそこは魔物も出入りできないし、うまなちゃんとイザーちゃんの隠れ家の一つでもあるからね」
「秘密の隠れ家ってことか。そんなのどうやって見つければいいんだよ。こうしている間にも、ゆまの身に危険が迫っているかもしれないっていうのに」
「ゆまちゃんに危険が迫っているかどうかなんて知らないけど、うまなちゃんとイザーちゃんの隠れ家なら知ってるよ。教えてやろうか?」
「え、秘密の隠れ家の場所をまさ先輩がなんで知っているの?」
「隠れ家ってだけで秘密でもなんでもないからな。俺たちが中に入れないだけで近くまではいけるし。まあ、行ったところで非戦闘地帯になってるんで何も出来ないんだけどね」
「それで、その隠れ家ってどこにあるんですか?」
「ほれ、あそこに見えるピンクのでっかい煙突がある家だよ。先代が使っていた時はもう少し目立たない色だったんだけど、うまなちゃんとイザーちゃんが使うようになってからあんなに目立つ色になっちゃったみたい。承認欲求が抑えられないのかなって俺は思ってるんだけど、他に深い理由があるのかもしれないね」
何度か視界に入って奇妙な建物だなと思っていたのがうまなちゃんとイザーちゃんの隠れ家だとは思いもしなかった。結構距離はありそうなのに、あんなに目立つという事はそうとう大きな煙突なのだろう。いったいあれは何の意味があるんだろう?
「バカみたいに大きい煙突だよな。普通はあそこまで大きくする必要なんて無いんだぜ。他のチームは自動開閉式の天窓があるくらいで煙突なんて設置してるのはうまなちゃんとイザーちゃんのほかに三か所くらいしかないんじゃないかな。そのどれもがバカみたいに目立つ配色なんだよ。こっちの事を挑発しているんじゃないかって思ったりもしたけど、きっとただ目立ちたいだけなんだと思うよ」
「あんなに大きな煙突を立てる理由って、サンタクロースを信じているからだったりして」
「サンタクロースってあの偉人のサンタクロースか。でも、サンタクロースが煙突を使うってのは聞いたことがないな。そっちの世界の常識なのか?」
「常識か非常識かで言えば、常識なんだと思うけど、実際に煙突を使っているサンタクロースを見た人はいないんじゃないかな。それよりも、こっちの世界のサンタクロースは偉人なの?」
「ああ、強い魔法使いを魔王に育てるプロフェッショナルだ。小さい子供のうちからスカウトして、大魔法使いにして魔王の芽を育てるのに定評があるんだぞ」
「よくわからないけど、今は聞かないでおく。それよりも、ゆまを助けに行かなくちゃいけないんでここでまさ先輩とはお別れだ。その、真っ二つにしちゃってごめんなさい」
「その事なら気にするな。時間をかけて元に戻るはずだからな。それに、隠れ家に行くんだったらそこにいるハーピーに連れて行ってもらうと良いよ。そいつはピンクの煙突を見に行くのが好きみたいだからちょうどいいしな」
「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、悪いんで遠慮するよ」
まさ先輩が紹介してくれたハーピーはゲームや漫画なんかで出てくる姿とは違って普通に全裸のお姉さんだった。
申し訳程度に足の指が猛禽類っぽさを見せているが、それ以外はどこからどう見ても全裸のお姉さんだった。
「あら、遠慮しなくてもいいのよ。私もちょうどピンクの煙突に座りたいって思ってたところだもの。あ、もちろん君を玄関先に送り届けてから煙突に向かうつもりだから安心してね」
「本当に大丈夫ですよ。自分の足で行けますから。ほら、俺って意外と足が速いんでうから」
「もう、そんな遠慮しなくてもいいんだから。それに、あの煙突まで一本道に見えるけど、途中にある崖はどうやって超えるつもりなのかしら?」
「それは、まあ、なんというか、気合と根性で」
「そんなの駄目よ。それに、あなたの妹さんが危ないかもしれないんだからね。少しでも早くたどり着くために、お姉さんが送ってあげるわよ」
「じゃあ、お願いします」
「うん、素直になってくれて嬉しいわ。じゃあ、背中の羽の邪魔にならないように抱っこしてあげるね。オッパイには触ってもいいけど、吸ったりしちゃダメだからね」
綺麗なお姉さんは声も綺麗だったけれど、触れてしまった肌もきめ細かく綺麗で弾力があった。
思えば、女体に触れるのってこれが最初かもしれないな。
でも、魔物だからノーカウントでいいか。




