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普通の妹がお兄ちゃんを改造してみた。  作者: 釧路太郎
魔法使い編

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第四十五話 変な顔の魔王

 二つに分かれたまさ先輩が再び一つに戻ったのだけれど、完璧に元に戻るという事が出来なかったみたいで微妙に左右の高さがあっていなかった。目も耳も口も微妙にずれているので違和感があるのだ。

 人間の顔はたいてい完璧な左右対称ではないのだが、ここまで歪な感じになると本当に人間なのか疑いたくなる。


「なぜそんな変な顔で俺を見ているんだ?」


 心なしかさっきまでと声も変わっているように聞こえる。もしかしたら、声帯にもダメージがあるのかと心配してしまった。全部俺のせいなんだけど、悪いとは思っていない。

 それに、変な顔は俺じゃなくてお前だろと言いたい。凄く言いたい。今なら言っても大丈夫だと信じて言いたい。でも、そんな事は言えない。


「変な顔って、鏡見た方が良いですよ」

「何を言ってるんだ。失礼な奴め」


 素直に人の話が聞けるまさ先輩は嫌がる魔物たちに無理やり鏡を持ってこさせると、まじまじと自分の顔を見つめていた。鏡を見て自分の顔の現状を知ったまさ先輩は感情が一切乗っていない声で俺に話しかけてきた。


「俺の顔が変になってるんだけど」

「そっちの魔物が一生懸命くっつけようとしてた時にズレちゃったんじゃないですか?」

「そうかもしれないな」


 可愛そうに思えるくらい意気消沈しているまさ先輩は一旦振り返ると、俺が魔物たちのせいにしたことで必要以上に怯えている魔物たちに向かって大丈夫だよというジェスチャーを送っていた。

 俺だってまさ先輩の体を真っ二つに出来るなんて思っていなかったし、別れた体を合わせることで再びくっつくなんて思ってもみなかった。普通、そんな風に再生するんだったらもっと綺麗になるもんじゃないかと思って見たけど、魔王の生態はよくわからないので何も言えなかった。

 よくよく見てみると、魔物の中にも肩の位置がおかしかったり左右で違う生物なじゃないかと思うようなのもいた。魔物ってバラバラにしてもくっつけたら大丈夫なのか?


「この顔じゃもう女に好かれることは無いか」


 さっきよりも寂しそうにつぶやくまさ先輩を見ていると、少しだけ意地悪したくなってきた。

 あんなに自信満々だったまさ先輩がこんなに落ち込む姿なんてもう二度と見ることが出来ないかもしれない。このチャンスを逃す手はない。この場に俺以外誰も知り合いがいないというのは不幸な話だが、まさ先輩にとっては唯一の幸運だったのかもしれないな。


「大丈夫ですよ。その顔じゃなくてもまさ先輩は女に好かれないと思います。だって、まさ先輩って見た目も中身も凄く良かったと思うんですけど、一番手に慣れないタイプですからね。ほら、バレンタインの時も義理チョコはたくさんもらっていたのに誰からも告白されなかったし、本命チョコだって誰からも貰わなかったじゃないですか。おっと、俺の知っているまさ先輩の話でこの世界のまさ先輩がどうだったかはわからないですけど、きっとそんな感じですよね?」

「言っている意味がわからないんだが。その、バレンタインとか義理チョコって何の話だ?」

「この世界にはバレンタインはないってことか。それならそれでいいんです。俺が言いたいのは、まさ先輩は顔が元通りになっても女の子から本命扱いされないってことです。ちやほやされることがあったとしても誰かの一番にはなれないってことですよ。真実の愛を知らずに死んでいくんじゃないですかね。でも、魔王ならそれでも問題ないですよね」

「言いたいことはわかるんだけどさ、もう少し優しくしてくれてもいいんじゃないかな。ほら、敵対している関係とはいえ、こんな顔になっちゃった俺に同情してくれてもいいと思うよ。それと、こいつらは俺の事を治そうと必死になってくれてたし、もともとの原因ってお前だよね?」

「まさ先輩の体を真っ二つにしたのは俺かもしれないですけど、先に手を出してきたのはまさ先輩ですからね。俺は避けた時にバランスを崩してたまたま蹴り上げた足が悪さしただけですから。どっちかって言うと、俺は被害者の立場なんじゃないかって思ってますよ。まさ先輩の体を切り裂く感触と骨を砕く音がいつまでも残っていて気持ち悪いんですから」

「まあ、お前の立場だったらそう言いたくなるよな。でもさ、もう少しこう、なんて言うかな。優しくしてくれてもいいと思うんだよね」

「優しくしてほしいって思うんだったら、自分から優しくしないとダメですよ。人に求めるばっかりじゃダメですから。それに、まさ先輩は魔王だからなのか知らないですけど、俺とゆまの事を殺そうとしたじゃないですか。それはどういうことですか?」


 俺の言葉が核心をついてしまったのか、まさ先輩は魔物たちと顔を見合わせている。明らかに返答に困っているようなのだが、俺は追撃を止めない。力だけではなく、言葉でも勝てないと思い知らせてやる必要があるのだ。


「それはさ、お前らが俺たちの縄張りに勝手に侵入してきたからでしょ。こっちから出向くことは基本的に無いことだよ。しかも、お前らは強い魔物を全員集合させろって指示してきたくせにさ。そう考えると、こっちの方が被害者だわ」

「ちょっと待ってもらっていいかな。俺たちがまさ先輩に強い魔物を集めろって指示したって、どういうこと?」

「どういう事って、うまなちゃんとイザーちゃんからそういうオーダーがきてたんだよ。ゆまちゃんとまー君を引き離すのが目的だから、まー君を殺さないように時間をかけていたぶってくれって。ほら、これが依頼動画だよ」

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