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普通の妹がお兄ちゃんを改造してみた。  作者: 釧路太郎
魔法使い編

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第四十四話 切り裂きまー君

 勢いよく蹴り上げた俺の足がまさ先輩の体を割いている時に感じた衝撃は生涯忘れることはないだろう。

 まさ先輩の体の中心部を綺麗に蹴り上げた俺の足はまっすぐに天へと向かっているのだが、その間に感じていたのはまさ先輩の背骨を砕いていくメリメリという音と衝撃だった。厚焼きのせんべいを踏んだ時のような感触と小さな風船を割った時のような衝撃が交互にやってきていたのだが、その間もまさ先輩は俺の顔をジッと見て目を逸らすことは無かった。まさ先輩が俺のやっていることを認識しているのかしていないのかは今となっては定かではないが、倒れこんだ俺を見て嬉しそうに笑っていたのは見間違いではなかった。

 延々と続くと思われた嫌な感触ではあったけれど、最後はプリンのように柔らかい感触で気持ちよく終われたのだ。


 まさ先輩の体を真っ二つにした俺はバランスを保つことが出来ずに思いっきり背中を地面に叩きつけてしまったのだが、不思議と痛みは感じなかった。返り血を浴びすぎて何も見えなかったため、倒れた俺は手足を一生懸命に動かして起き上がろうとしていた時に何かに何度もぶつかっていた。俺がぶつかったモノはそのままはじけ飛んでいったようなのだが、その頃にはスローモーションの体験が終了していたようだ。

 顔についた血を汚れていないと思われる袖で拭って視界を確保したのだが、俺の目に飛び込んできたのはありえない光景だった。


「お前、いったい何をしたんだ。俺はどうしてこんなことになっているんだ。なあ、教えてくれよ」


 体が完全に真っ二つに分かれているまさ先輩は別れた体を繋げようと必死に腕を伸ばして左右の肩を押さえていた。そんなもんでどうにかなるのかと思いながら俺は見ていたのだが、周りにいた魔物たちが慌ててまさ先輩の体をくっつけようと左右からグイグイとおしているのを見て、こいつらはバカなのかと考えてしまった。

 魔法が使えるような世界なんだから魔法でどうにかしろよと思っていたのだが、もしかしたらこいつらは攻撃専門で回復をすることなど出来ないのではないかという考えにたどり着いたのだ。

 残念な事にその予想は外れてしまっていたのだけれど、真っ二つにされた体を再生させる魔法なんて存在しないという事を後から聞いて考えを改めることにした。あの状況では魔物なりに必死になってまさ先輩を治そうとしていただけなのだと、魔物たちはまさ先輩の再生力を信じて行動していたのだと気付かされたのだ。

 実際に、まさ先輩は体が真っ二つになっても体を圧着させることで再生してしまっていたし、先ほどと比べても動きが鈍くなっているような印象も無かった。


「俺はお前の動きが全く見えなかった。お前が倒れそうになっているところまでは見えていたのだが、それ以降の事が全く見えていない。なんで俺は体が真っ二つになっていたんだ?」

「いや、それよりも。何であんたは体が真っ二つになっていたのに、両側から押さえつけられただけで再生してるんだ?」

「質問に対して質問で返すなバカが。だが、こんな体験は初めてなのでちょっとだけ興奮していて気分が良いから答えてあげよう。俺は魔王だから、再生力は他の魔物や人間よりも高いってだけの話だ」

「答えになってないと思うんだが。まあ、いいや。まさ先輩の体が真っ二つになっている理由は、俺が思いっきり蹴り上げて体を真っ二つに割いたから。それだけだね」

「何の武器も使わずにその足で俺の体を真っ二つにしたっていうのか?」

「そうだけど。まあ、なんかまさ先輩の攻撃を避けたあたりから時間の流れがゆっくりになったと思うんだけど、俺もよくわかってないんだよね。倒れそうになった時に抵抗してみたら、まさ先輩に俺の足が当たって蹴り上げてたってだけなんだよ。本当に、それ以上でもそれ以下でもないんだ」


「時間がゆっくりになるって、お前はとんでもない魔法使いだな。普通の魔法は何も使えなさそうな感じを出しておいて、そんな恐ろしい魔法を隠し持っているなんて卑怯だぞ。誰も反撃出来ないような魔法を使うなんて、神も悪魔も魔王だって許さないぞ」

「俺に言われても困るし。俺が自分の意志でそんなことしてるわけじゃないって言うのはわかってもらえるかな?」

「そんなの知るか。無意識のうちに発動する魔法って、一番たちが悪いだろ。お前が油断している時でも襲えなくなってしまうって可能性が高くなっちゃうし、どうやったって俺に勝てる見込みなんて無くなるだろ」

「そう言えば、脳みそは大丈夫?」

「おいおいおい、急にどうした。喧嘩を売ってるのか?」

「そういう意味じゃなくて、まさ先輩を蹴り上げた時に脳みそを破裂させたような感触があったから大丈夫かなって思っただけなんだって。深い意味なんて無いから」

「脳まで破壊するなんて殺意高すぎだろ。俺じゃなきゃ死んでるな。でも、心配はいらないよ。俺の知識も肉体もちゃんと魔法でバックアップとってるから。魔王は生き返れない代わりにバックアップ体が順番待ちしてるからね」


 人間と違って魔王は死んでも代わりがいるという事か。

 今の感じだと俺が負けることはほぼ無いと思うので気にならないけど、俺よりも強い相手がいた時には死なないように気を付けないとな。

 魔王と違って俺は死んだらやり直すことなんて出来ないのだから。

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