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普通の妹がお兄ちゃんを改造してみた。  作者: 釧路太郎
魔法使い編

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第四十話 死ぬことは怖くない

 この世界の死は全ての終わりではなく、一定の条件を満たさなければやり直すことが出来るのだ。終わりではなく始まりと言ってもいいのかもしれない。

 死ねばここに戻ってくることが出来る。なんて言われたところで、実際に死んだ人が戻ってくるところを見ていないのだから信じることなんて出来ない。

 実際にこの目で確かめるまでは信じ切ることが出来ないのだ。

 その話を信じたとして、ボロボロになって殺されたお兄ちゃんがボロボロのまま生き返っても辛いだけだと思う。

 だから、私はお兄ちゃんに生きて戻ってきてほしいと願っているのだ。


「つまり、死んだお兄ちゃんがここに転送されてくることになっているのにまだ転送されていないってことは、お兄ちゃんはまだ死んでないってことでいいのかな?」

「まー君が死んでいたらここにきてるはずだから、死んではいないってことになるんだよ。他の場所に転送されているって可能性もあるんだけど、ここの連絡先を書いてあるから何かしらの連絡はあると思うんだ。何の連絡もないってことは、まだ死んでいないって可能性が高いってことになるんだと思うよ」

「でもね、それってあまり喜ばしくないことだと思うんだ。魔王軍に捕まっている状態で死ぬことが出来ないって事は、生かされたまま何らかの拷問を受けているって可能性が高いからね」

「まさ先輩だったらそう言うことも平気でしそうなんだよね。倫理観がちょっと人とズレているところもあるし、普通の人だったらブレーキを踏むようなところでも無視してアクセルを踏むような人だからね。そういうところが思春期の女子たちのハートをつかんでいて思春期の男子たちのカリスマになっているって面もあったんだろうね。でも、まさ先輩が主導してお兄ちゃんに酷いことをしているんだとしたら、私は絶対に許さないけど」


 お兄ちゃんが生きているというのは嬉しい事のはずなのに、私以外は誰も喜んでいない。

 まだ生きているのがほぼ確定しているというのに、神に祈るようなしぐさをしている人がたくさんいるのだ。どういう意図があってそんな事をしているのか気になった私はその人たちと話をしてみることにした。うまなちゃんとイザーちゃんとは違う視点で物事を見ている人の話を聞くことも重要だと思ったのだ。


「ねえ、なんでお兄ちゃんが生きていることに対してそんなに悲しそうな顔をしているの?」

「だって、まー君は魔王軍に捕まってしまってるんですよ。殺されていないという事は、慈悲の無い厳しい事態になっているという事なんじゃないでしょうか?」

「でも、生きているってことは希望があるってことなんじゃないの?」

「生きている時の方が希望はあるかもしれないけど、魔王軍が相手だったら死んでやり直した方が早いと思うんですよ。どうせ殺されるんだとしたら、長く苦痛を味わうよりもあっさりとやられた方が良いに決まってますからね」

「ゆまちゃんの言う通りで、生きている方が希望もあるし成長もするだろうよ。でもな、魔王軍に捕まったんだったとしたら話は別だ。魔王軍の拷問は人間にとって苦痛でしかないものだし、あんなのを食らって成長するのは変態だけだろう。まー君がそんな変態だって言うんだったら話は別だけど、俺もみんなもまー君には死んでいてもらった方が良いと心から願っているぜ」

「何で、お兄ちゃんが死んでいた方が良いなんて意味がわからないよ」


 確かに、魔王軍の拷問は凄惨な物だろう。生きていることを悔やむくらいに厳しいというのは想像できる。ましてや、魔物のリーダーがまさ先輩だという事が引っかかるのだ。

 誰よりも私とお兄ちゃんに執着しているまさ先輩だからこそ、お兄ちゃんに対して何かとんでもないことをしているんじゃないかと思ってしまう。他人には言えないような事をしている可能性だって十分にあるのだ。

 だけど、そんな事でお兄ちゃんに死んでいてほしいなんて思ってもらいたくない。

 まさ先輩によってお兄ちゃんの純潔が穢されてしまうことだって考えられるのだけど、私はお兄ちゃんに生き続けていてもらいたいと思っている。


 だけど、ちゃんとみんなの話を聞くと私は考えを改めることになった。


「ゆまちゃんはまだ信じてないみたいだけど、まー君が死んだら確実にここかどこか違う施設に転送されることになっているんだよ」

「でも、拷問された状態で生き返っても苦しいだけじゃないの?」

「多少はそういう記憶が残っているかもしれないけど、死ぬ直前のそういった嫌な記憶は残らないようになってるんだよ。いやな記憶が残っていたら、絶対にトラウマになって良くないからね」

「嫌な記憶がないというのはわかるけど、手足をもがれていたりしたら何も出来ないんじゃないの?」

「そういうのもよくある話だね。残忍なトラップに引っかかって全身がバラバラになって死んじゃうとか魔物に噛み千切られて殺されるとか考えられると思うけど、そんな時もご安心してください。ちゃんと体も健康だった時の状態で復元されます。場合によっては病気も治ることだってあるみたいだよ。 だから、まー君が拷問されて体がとんでもない状態になっていたとしても、一回死んじゃえば元の健康体に戻ってまた一緒にいられるってことなんだよ」

「じゃあ、お兄ちゃんの鈍感なところとかも治ったりするの?」

「さすがにそれは無理じゃないかな」


 健康な体になって戻ってくるのだとしたら、お兄ちゃんに死んでもらった方が良いのかもしれない。

 いや、さっさと死んでこっちに戻って来いよ。

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