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普通の妹がお兄ちゃんを改造してみた。  作者: 釧路太郎
魔法使い編

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第三十九話 お兄ちゃんはまだ生きている

 まさ先輩が私の知っているまさ先輩と違う人だったとしても、まさ先輩であるという事実は変わることは無いし魔王と言っても何とかなるだろう。

 きっと、こっちの世界のまさ先輩にも人に言えないような弱点が色々とあるだろうし、それをネタに話を聞いてもらえばいいだけの話なのだ。

 雰囲気は少しだけ違っていたようにも思えたけれど、まさ先輩程度なら何の問題もない。とは思うのだけれど、お兄ちゃんは優しいからまさ先輩と戦うことなんて出来ないのかもしれない。


「まー君ってまだ死んでないみたいだね。意外としぶといのかな?」

「しぶといんだったらいいけど、魔物たちがわざと殺さないようにいたぶっているのだとしたら怖いよね。死なないといけない状況なのに死ねないってのは何よりも辛いことだもん」

「まー君にだけは説明しておいた方が良かったかもしれないけど、あの場面でなんて言えば正しく伝わるのかなんてわからないもんね」

「死ねば助かるよ。って言われても、それを信じることなんて、普通は出来ないだろうね」


 お兄ちゃんがまだ生きていると信じてくれているのは嬉しいんだけれど、あれだけの魔物に囲まれて無事なわけがない。素人の私でも感じられるくらいの殺気を放っている魔物たちに襲われたお兄ちゃんが生きているなんて気休めはやめてほしい。

 そう思っているのに、私は言葉にすることが出来なかった。

 なぜなら、うまなちゃんもイザーちゃんもお兄ちゃんが死んでいるという事ではなく生きているという事を心の底から心配しているという風に思えたからなのだ。


「お兄ちゃんが死んでいた方が良いって言葉に何か意味があるんだろうけどさ、死んでいてほしいって思うのはちょっと人の心が無さすぎるんじゃないかな?」

「私たちだって普通の状態だったらまー君に死んでほしくないと思っているよ。でもね、あの状況だったら普通に死んでくれたらいいなって思うものなんだよ」

「普通に死んでくれたらいいって、それは思っても口にしちゃいけない言葉だと思うよ」


 うまなちゃんの言葉の奥に何か大切なモノが隠れているというのは理解出来ていた。出会ってからまだ間もない間柄ではあるけれど、うまなちゃんがこんな酷いことを平気で口にすることが出来る人じゃないってことはわかっている。

 わかってはいるけれど、それだけは言ってはいけないという事をちゃんと理解して言葉にしてほしいと私は思った。そんな人じゃないと思っているからこそ、口にしてほしくない言葉というものがある。

 私は今まで人に向けたことのない感情をうまなちゃんに向けてしまいそうになっていた。


「ちょっと待って。さすがにその言い方は間違っているよ。うまなちゃんの言いたいことはわかるんだけど、それってこの世界の常識を知っているのであれば省略しても伝わるってことなんだよ。ゆまちゃんは誰よりも早くこの世界に適合することが出来ているとは思うんだけど、向こうの世界と違うこの世界のルールや常識はまだ何も知らないって言ってもいい状態なんだからね。ごめんね、ゆまちゃんは頭が良くてすぐに理解出来ると思っているからこそ、全部理解してくれているとうまなちゃんは勘違いしちゃってるんだよ。だから、いったんファイティングポーズは解除しようか?」


 私は無意識のうちにうまなちゃんに向かって殴りかかろうとしていた。イザーちゃんの介入がもう少し遅れいていたら、私はうまなちゃんに向かって一歩踏み込んでいたかもしれない。その一歩は、私のこぶしがうまなちゃんに届くには十分な一歩だったに違いない。

 でも、うまなちゃんは私の攻撃を避けようとしていなかったように見えた。


「ごめんなさい。ゆまちゃんは頭が良いからなんでも理解していると勘違いしてた。私たちと違ってゆまちゃんもまー君もそのままの状態でこっちの世界に来てるんだもんね。その世界のルールとか常識を聞かなきゃわからないって忘れてたよ」

「それって、うまなちゃんとイザーちゃんは違う世界に行っても自然に色々なことを知れるってことなの?」

「そう言うことになるね。私たちはゆまちゃんとまー君と違ってこの世界に自分から来ているんじゃなくて招待されている立場だからね。その点は優遇されているのかもしれないよ」

「招待って?」

「君たちみたいな特別な人を監視する立場だからね。あ、監視って言っても悪い意味じゃないからね」

「悪い意味にしかとれないと思うけどな。でも、私たちはゆまちゃんにもまー君にも悪い印象は持ってないって言うのは本当だからね」


 私たちがいた世界とよく似ているけど全く違う世界。

 何もかもがそっくりな世界なのに、細かいところは全然違う世界。

 そんな世界であれば、私たちの知らない常識やルールがあるのも当然かもしれない。


 そして、その違いを誰かに教えてもらわなくても理解出来るうまなちゃんとイザーちゃん。

 どっちが特別なんだろうと一瞬考えてしまった。

 でも、世界を作り変えていると思っていたのに別の世界に移動していたとは思わなかったな。

 別の世界から勝手にやってきた人を監視することにたいして文句なんて言えないと思うけど、私たちにも最初にいろいろと教えてほしいと思った。


 お兄ちゃんが死んだ方が良いって言った本当の理由とか、外に出る前に教えてもらいたかったな。

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