第二十七話 二人の小さな変化
金髪になったうまなちゃんと銀髪になったイザーちゃん。一目見ただけで違いが分かるようになったのはいい事なのだけど、もう少しわかりやすく違いを出してもらった方が良いのかもしれない。
お兄ちゃんでもパッと見で見分けがつくようにしないといけないんだ。お兄ちゃんが余計なものを見なくても済むようにしないといけないんだ。
「いつもはこんな感じで金と銀とかオレンジとピンクとかにしてるんだけど、ゆまちゃん的にはわかりやすいと思うかな?」
「うん、私としてはとても分かりやすいと思うんだけど、お兄ちゃんが最初に髪を見るかどうかがわからないからね。そこが悩ましいところだよ」
「だいたいの人は最初に顔を見てそのまま髪を見比べると思うんだけど、ゆまちゃんのお兄ちゃんは違うのかな?」
「さすがのお兄ちゃんでも最初に見るのは顔だと思うんだけど、その後に視線が上に行くか下に行くかはちょっとわからないかも。ちょっと陰キャ気味のお兄ちゃんは顔を見た後に恥ずかしくて視線を下げちゃうって可能性も高いと思うんだけど、胸元をちょっと見せてる二人に対してだったら視線を上げる可能性の方が高いかもしれないね」
うまなちゃんとイザーちゃんはさっきまでのシックな服装から胸元が若干見えかかっているカジュアルな服に着替えていた。
少しだけ見えている胸元には申し訳程度のふくらみがあるのだけど、年頃の男子にとってそこは注目するべき場所と言ってもいいくらいには開かれていた。
ただ、実際にお兄ちゃんがその場所を見るかどうかはまだわからないが、私としてはそこを見てほしいとは思えない。見てほしくないと思っている。
「そんなにじっくりと見られると照れちゃうかも。ゆまちゃんが女の子でもちょっと恥ずかしく感じちゃうよね」
「ゆまちゃんに見られてもいやらしいって感じはしないんだけど、なんかお兄さんとは違う視線のねっとり感があるよね」
「悪い気はしないんだけど、ちょっと気になるって感じだよね」
うまなちゃんとイザーちゃんがそう感じるのも仕方ない。私はお兄ちゃんが感じていたようにほんの小さな差があるのかと真剣に観察していたのだ。
でも、私の目にはとてもではないがその違いを見つけることなんて出来なかった。
もしかしたら、お兄ちゃんはうまなちゃんとイザーちゃんの体の違いを頭で理解しているのではなく感覚だけで見極めていたのかもしれない。そうとしか思えないくらいに誤差を感じられなかったのだ。
「うーん、お兄ちゃんが言っていたみたいに二人の体に差があるとは思えないよね。メジャーを使って測っても誤差なんて出てないし、お兄ちゃんは本当の事を言っていたのかな?」
「私たちでも気付かないくらいの差はあるのかもしれないけど、普通の人間がそれを見るだけで見分けることなんて出来ないと思うな。測る場所によってほんの少しの誤差なんて生まれると思うし、何を基準にして比べていたのかもわからないと何とも言えないよね」
「ゆまちゃんに測ってもらっても差なんて誤差レベルでしかなかったわけだし、どうしてそれをお兄さんは見分けることが出来たのかってことだよね。その真相を聞くためにも、起こしてみる?」
「お兄ちゃんを起こすのはまだ早いかな。二人にはもう少しお兄ちゃんがわかりやすいって思うくらいに変化してもらわないといけないからね」
「でも、この髪の色の違いは結構分かりやすいと思うんだけど、これ以上何を変えるって言うのかな?」
うまなちゃんとイザーちゃんの胸を順番に見比べていたけど、やっぱり違いなんて分からなかった。
そもそも、毎日のように会っているクラスメイトの胸の大きさだって意識したことなんて無いんだし、明確な違いがないとどちらが大きいとかもわからない。自分の胸が成長したかどうかはさすがにわかるけれど、他の人の胸の大きさなんて意識して生きてこなかったのだから気付かなくても仕方ないと思うのだ。
そんな私の考えを知ってか知らずか、うまなちゃんとイザーちゃんは私の視線を遮るように両手を交差させて胸元が見えないように隠していた。
そこで、私はとても良いアイデアが浮かんだことを二人に告げた。
「お兄ちゃんがジロジロ見なくてもわかる方法を見つけちゃった。顔を見た後に視線が上に言っても下に言っても簡単に見分けられるようになるって確信があるよ」
「なんだかすごく嫌な予感がするんだけど、それって大丈夫な感じかな?」
「大丈夫だと思うよ。うまなちゃんもイザーちゃんも納得して受け入れてくれたら嬉しいな」
「受け入れてくれたら嬉しいなって、その言い方ちょっと怖いかも」
「ゆまちゃんが何をしようとしているのかわからないけど、顔の形がわからなくなるまで殴るとかじゃないよね?」
「そんなことするわけないじゃないですか。私は女の子の顔を殴る趣味なんて無いですよ。それに、変形させるのは顔じゃないですから」
うまなちゃんとイザーちゃんは私の言葉を聞いて言葉を失っていた。
何か言おうとしているように見えたけれど、何も言ってこなかったのでそう言うことだと思う。
だから、私は二人に何をしようとしているのか伝えてあげることにした。
「うまなちゃんかイザーちゃんのどっちかの胸の大きさを三センチくらい小さくしようと思うんだけど、大丈夫だよね?」




