第二十話 自信満々な三人
二人が隣に並んでいてもどっちがどっちだか区別がつかないくらい似ていた。
似たような動きをしているという事もあって全く違いが判らないのだけど、お兄ちゃんもこの二人のお姉さんの見分けがつかないようだ。
「普段は二人とも髪形を変えたり髪色を変えたりして区別しやすいようにしているから安心してね」
「今日は初回サービスってことで見た目だけじゃなく、喋るトーンも同じにしてみたんだけどね。君たちには見分けるの難しいよね?」
「全然区別つかなかったですよ。こうして隣に並んでもらっててもわからないですし、間に鏡があるんじゃないかなって思っちゃうくらいですもん」
「似たような事をよく言われるよ。この前も言われたばっかりだもんね」
「本気を出している私たちを見分けることなんて、不可能だもんね」
今の似せている感じが本気なのかまだまだ本気じゃないのかわからないけれど、今の時点でも私にはどっちがどっちだかわからない。
注意してみていなかったという事もあるのだが、右にいるのが最初にいたお姉さんなのか左にいるのが最初にいたお姉さんなのかもわかっていない。二人が順番に部屋に入ってきていたというのは確かな事なのに、どっちが最初に履いてきた人なのかがわからなかった。
「ねえ、兄貴は二人の違いって分かる?」
絶対にわかるはずがないと思っているけれど、あえて私はお兄ちゃんに聞いてみた。お兄ちゃんもわからないとってくれると信じての質問であったが、お兄ちゃんは私の求めていた答えとは違う事を言ってきた。
つまり、お兄ちゃんは意地を張ってきたのだ。つまらない見栄なんて張らなくてもいいのに、ちょっとでもいいところを見せようとしていたのかもしれない。
「まあ、パッと見は似てるなって思ったけど、こうして横に並んでもらうとやっぱり二人は別人なんだなって感じるよ。ほら、ゆまもそう思うだろ?」
「ごめん。悪いけど私には断定できる程の違いは分からない。兄貴が何を見て違うって言ってるのかわからないけど、私の目にはそっくりに見えているよ」
お兄ちゃんの答えを聞いたお姉さんたちは少しだけ驚いていた。
ただ、そんなお兄ちゃんの言葉を本気だとは思っていないようで、お兄ちゃんの事をたしなめるように優しく質問をしていた。
「妹ちゃんは私たちの区別がつかないってことなんだろうけど、君は私たちを見分けられるってことなのかな?」
「うん、あなたがジュースを持ってきてくれた人でしょ?」
「あてずっぽうにしては勘が鋭いね。確かに私が君たち二人にジュースを持っていったのは事実だけど、どうしてわかったんだい?」
「どうしてって言われても、そう思ったからとしか言えないかな」
お姉さん二人は驚いていたし、お兄ちゃんはこの二人を本当に見分けることが出来るんだと知った私も驚いていた。
お兄ちゃんの視界には二人の違いがどのように映っているのか気にはなっていたけど、きっとお兄ちゃんはその感覚を言語化することなんて出来ないだろう。そんなことが出来ていたのなら、メガネの女の子と買い物をしていた時にもっとちゃんと気を遣った言い回しとかもできていたんだと思う。
ただ、お兄ちゃんの観察眼が鋭いのだとしたら、私が飛ばしていた超小型ドローンの存在に気が付いていたという可能性も高まるのではないか。むしろ、あれだけカメラ目線になっていたのだから気付いていなかったという事はないと思う。
でも、超小型ドローンの存在に気が付いていただけだと思うし、超小型ドローンを操っていたのが私だとは夢にも思わないだろうね。お兄ちゃんはそう言うところの感覚はとてもとても鈍いのだから気が付くはずがないのだ。
「もう少しだけ私たちに君の時間を貰ってもいいかな?」
「本気を出した私たちを見分けることが出来るのか、試したいんだけどどうかな?」
私は今の状態でも見分けることなんて出来ていないのだから答えることは出来ないが、お兄ちゃんは自信満々にその挑戦を受けていた。
いったいどこからその自信がわいてくるのかわからないけれど、お兄ちゃんは今までに見たことがないくらい頼もしく見えていた。相手が綺麗なお姉さんだという事が少しだけ心に引っかかってしまうけれど、こんなに自信に満ちている鬼ちゃんを見ることが出来ただけ良しとしよう。
「それでは、本気で同化してくることにするから楽しみに待っていてくれよ」
「ちなみに、私の事はうまなちゃんと呼んでくれたまえ」
「そうだね。なのることを忘れていたね。私の事はイザーちゃんと呼んでくれたらいいよ。大丈夫、君たちの事は知っているから今更名乗らなくても問題ないさ」
「間違えたとしても君たちに罰を与えるつもりなんて無いからね。その点は安心してくれたまえ」
「本気を出した私たちを見分けることなんて、全知全能の神にだって不可能な事だからね」
私以外の三人は自信満々な感じを見せているけど、どうしてお兄ちゃんはこんなに自信満々なのだろう?
私には気付けない違いがあるのかもしれないけど、お兄ちゃんはかたくなにそれを教えてはくれなかった。
「兄貴はいったいどこを見て違うって思ったの?」
「どこって言われてもな。こればっかりは感覚的な物だから何とも言いにくいかな。きっとだけど、まさ先輩も俺と同じように見分けることが出来ると思うよ」
「ああ、そう言われたら納得出来るかも。まさ先輩は女性に対しては一人一人の事をしっかりと覚えているっぽいもんね。兄貴もそうなの?」
「うーん、俺はゆま以外の女の子の事はあんまり覚えてないかもしれないな」
このタイミングでそんな事を言うなよと思ってしまったけど、私は何か言い返すとに焼けた顔を見せてしまいそうだったので苦虫を噛み潰したような顔を必死で作っていた。
私の顔を見たお兄ちゃんはマズいことを言ったのかもしれないと思ったのか気まずそうな顔をしてから目を逸らしていた。




