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普通の妹がお兄ちゃんを改造してみた。  作者: 釧路太郎


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第十九話 ドリンクお姉さんの事

 リンゴジュースを持ってきてくれたことは嬉しいのだけれど、さっきのお姉さんと目の前にいるお姉さんが別人のように思えていた。そんなわけはないと思いつつも、さっきのお姉さんと今のお姉さんが違う人にしか感じられなかったのである。

 でも、そんな事を聞いたところで気のせいだと言われて終わってしまう事だろう。

 それよりも、このジュース一杯でいくらお支払することになるのかが不安であった。


「先に聞いておきたいんですけど、そのジュースっておいくらですか?」


 私の気持ちを察してくれたのか、お兄ちゃんは何の躊躇もなくジュースの値段を聞いてくれた。こういう時に限ってお兄ちゃんは気が利く素晴らしい人になるんだけど、肝心な時には鈍感すぎてイライラしてしまうところがある。

 いつも私の気持ちになんて気付いてくれないところがあるんだけど、それって兄妹だから仕方ないって割り切らないといけないのかな。

 でも、そんなお兄ちゃんを少しずつ私好みに変えることが出来たらいいんだけどね。


「お代はいただきませんよ。こちらは全てサービスさせていただくことになってますから。もちろん、お食事も用意しますのでご希望があれば何なりとおっしゃってくださいね」

「え、いいんですか?」

「いいですよ。何か食べたいものでもあるんですか?」

「実は、一昨日からずっと食べたいなって思ってたものがあるんです。ゆまは何か食べたいものあるのか?」

「私は特にないけど。兄貴と同じものでいいんじゃないかな。変な物じゃなかったらって話だけどさ」

「それなら問題ないと思う。俺が食べたいのはね」


 お兄ちゃんが何を食べたいと思っていたのかなんて知らないし、別に興味は微塵もないはずなのにも関わらず、このタイミングで変な間をあけられてしまうとほんの少しだけ気になってしまう。

 どうせ大した事を言うはずがないと思うし、一昨日からずっと考えていたという事は凄く豪勢なものではないはずだ。一昨日の時点でこのホテルに来ることなんて知らなかっただろうし、何でも好きなものを頼んでもいいってことも知らなかったはずだ。

 それらを踏まえて考えると、お兄ちゃんはいつでも食べることが出来るようなものを食べたいというはずなのだ。

 ただ、一昨日から食べたいと考えていたという事を考慮してみると、お兄ちゃんが食べたいと思っているのは焼肉とかハンバーグの可能性も出てくる。もしくは、ここ最近食べに行っていない豚丼やスパカツの可能性もあるのかもしれない。

 お兄ちゃんの好物が海鮮丼なのは知っているけれど、昨日の夜に海鮮丼は食べたんだよな。お寿司を食べたいという可能性もありそうではあるが、お寿司屋さんに食べに行った時も海鮮丼を選ぶお兄ちゃんが一昨日からお寿司を楽しみにしているなんて考えはしないだろう。

 そうなると、お兄ちゃんが食べたいと考えていたものはいったい何なのか。謎は深まるばかりである。


「その前に、もう一つ聞いておきたいことがあるんだけど、いいですか?」

「私にかな?」

「はい、お姉さんに質問があるんですけど」

「まあ、私のプライベートに関わるような事じゃないのであれば答えてあげてもいいんだけど、答えやすい質問だったらいいな」

「答えにくい質問かもしれないんですけど、お姉さんってさっき何が飲みたいか聞いてきたお姉さんと違う人ですよね?」

「え!!」

「え!!」


 私が一番気になっていたことをお兄ちゃんが聞いてくれたのは嬉しいんだけど、このタイミングでそれを聞くのはどうかと思う。

 凄く気になる事だから悪いことではないと思うんだけど、お兄ちゃんが何を食べたいのか先に言ってくれてからの方が良かったんじゃないかな。お姉さんもきっとそう思ってるはずなんだけど、お兄ちゃんは変に空気を読まないところもあるのでソレが出てしまっただけなのかもしれないな。

 でも、さっきのお姉さんとここにいるお姉さんが別人だとしたら、双子ってことになるのかな?


「凄いね。君は本当に凄いよ。私とうまなちゃんを見分けることが出来るなんて、やっぱり君たちは特別なんだね」

「君たち?」

「そう、君だけじゃなくて妹ちゃんも私とうまなちゃんが別人じゃないかって思ってたんでしょ?」


 どう答えるべきか考えてしまったが、ここは素直に答えた方が良いと思って素直に伝えた。変に取り繕うようなことはせず、素直に思っていたことを伝えるべきだと感じたのだ。


「確信は無かったけど、私もお姉さんとさっきのお姉さんは別人なんじゃないかなって思ってました。いや、何となく感じていたってだけですけど」

「それでも十分凄いよ。私たちの親も髪色を変えてなかったら気付いてくれないんだからね。それってちょっと失礼な話に感じるかもしれないけど、私とうまなちゃんの秘密を知ったら仕方ないなって思うんじゃないかな」

「その秘密は教えてもらえるんですか?」


「うーん、プライベートな話になるから秘密かな」

「で、そのうまなちゃんって人とお姉さんの関係は?」

「だから、その質問には答えられないってことだよ。でも、あとで妹ちゃんにだけはコッソリ教えてあげるからね」


 お姉さんは私に向かってウインクをしてくれたのだけど、その顔は凄く可愛らしく女の私でも惚れてしまいそうになっていた。

 一方のお兄ちゃんは少し不満そうではあったけど、何を食べたいと思っているのか言わないのが悪いんじゃないかと思ってしまった。

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