第十四話 ストーカー気質
お兄ちゃんと楽しくお話をしていたというのに、空気を読むことが出来ないバカがいた。
ずっと無視しているのだから諦めればいいものの、通知が届くたびに現実に引き戻されている気がして嫌だった。
「さっきからしつこいんだけど。無視してるってわかってないの?」
「無視されているってのは気付いていたけどさ、あとどれくらい待機していたらいいのかくらい教えてくれてもいいんじゃないかな?」
「お兄ちゃんとメガネの女の子は何かあるような雰囲気じゃなかったんでもう大丈夫です。まさ先輩に何かしてもらう必要なんて無くなりましたから」
「もう、それならそうと先に言ってくれたらよかったのに。俺も意外と忙しかったりするんだよ」
「ああ、そうなんですね。忙しいのにごめんなさい。じゃあ、また何か頼み事があったら連絡します。それまでは関わるつもりもないんで失礼しますね」
「ちょちょちょちょちょ、ちょっと待って待って。もう少し俺の話を聞いてよ。ゆまちゃんにとって損のない話だからさ。ね、聞いてよ」
「別に損とか得とかどうでもいいんですけど。まさ先輩の行動程度で私の人生に影響なんてないと思いますよ。それで、いったい何を言いたいんですか?」
「遠くからまー君の事を観察していて思ったんだけど、まー君と愛華ちゃんは多分恋愛的な発展はないと思うんだ。でも、男女二人で一緒に過ごしているのならば、何かが起こってしまっても不思議ではないと思うんだよね。そこで、俺が二人の間に割って入ってまー君と愛華ちゃんの中が進展しないように力をかそうかと思うんだけど、どうかな?」
「気持ち悪い。気持ち悪いですよ。お兄ちゃんの事をずっと遠くから観察してたなんて、本当に気持ち悪いですね」
まー君の事を観察していたのが気持ち悪いと言われるとは思っていなかったまさ先輩は困惑していた。
おそらく、ゆまも自分と同じようにまー君の事を観察していたはずなのにもかかわらず、自分の事だけを気持ち悪いと言い切ったゆまの思考を読むことは出来なかった。
それよりも、自分の提案をあっさりと流されてしまった事についてどうしたらいいのかわからなくなっていた。
「まさ先輩がお兄ちゃんの事を観察していたって、何か理由でもあるんですか? 返答次第ではただの気持ち悪い人になっちゃいますけど、私が納得できる答えはあったりするんですか?」
「どうしてって、ゆまちゃんから連絡が来た時ってたいていはまー君絡みの事だと思ったんだよ。ましてや、今日はまー君が愛華ちゃんと一緒に出掛けるってことになってたんだし、それをどうにかしたいってゆまちゃんが思ってて俺を頼ってきたんじゃないかなって考えたわけさ。そんなわけで、まー君たちに何かあってもいいように程よい距離を保って二人の事を観察していたって感じさ。それで納得出来たかな?」
「まあ、言いたいことはわかりましたけど、まさ先輩が気持ち悪いって事には変わりないですからね。まさ先輩がお兄ちゃんに対して興味があるって考えるのも気持ち悪いですし、あのメガネの女の子に対して興味があるってことだとしても気持ち悪いですよね。やっていることがストーカーチックで本当に気持ち悪いです」
自分の方がもっとストーカーっぽいことをしているじゃないか。なんて事をゆまに対して言いたいまさ先輩ではあったが、ここでそんな事を言い争っても意味がない。少しだけ大人なまさ先輩は自分が気持ち悪いと思われたことを素直に受け入れ、ゆまの出方をそっと見守ることにした。
「前から思ってたんですけど、まさ先輩ってそう言う変態っぽいところが女子と深く付き合えない理由ですよね。もしかして、お兄ちゃんの事が好きだってことは無いですよね?」
「まー君に対して恋愛感情はないけど、友達としては好きだよ。弟みたいなもんだとも思っているし、ゆまちゃんの事も妹みたいな存在だと思ってるしね」
「いや、それは遠慮しときます。私のお兄ちゃんは一人だけなんで」
「こっちが勝手にそう思っているだけだからさ。それと、俺はこう見えてもしないで一番モテる高校生に選ばれたんだよ」
「そんな事はどうでも良くて、お兄ちゃんとメガネの女の子の中が進展しないようにするって何をするつもりなんですか?」
「まー君と愛華ちゃんはもう少しで解散する感じになっていると思うんだけど、万が一にもどこかに寄ろうとしたらゆまちゃんは困るよね?」
「別に困りはしないですよ。邪魔はしたくなると思いますけど」
「そうならないように俺が手を貸そうかって言うんだよ。愛華ちゃんがまー君と遊ぶのを延長するよりも、俺と遊ぶ方がゆまちゃん的にもいいでしょ?」
「それは間違いないですけど、なんか気持ち悪い言い方と考え方ですよね。そんなんで本当にモテる男に選ばれたんですか?」
「俺が選んでって頼んだわけじゃないけど、選ばれたのは事実さ。ほら、証拠の映像もあるよ」
「あ、本当に興味ないんでいいです。時間の無駄なんで見ることは無いです。っていうか、お兄ちゃんとメガネの女の子は買い物も終えて出てくるみたいですよ。ちょっとイイ感じに見えるんですけど、まさ先輩は二人の事を邪魔するのに間に合うんですか?」
「大丈夫。店の前に移動してきたから」




