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新米探偵助手は読者の推理が頼りです!  作者: マフィン


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8/17

状況証拠

 宴会場は、すっかり人がいなくなってしまい、残されたのは容疑者候補として名前が上がっている四人と、私だけになってしまった。


 「探偵さん、メディアのみなさんは全員退出しました。早くその捜査とやらをしていただけませんか?」


 岩倉の声は、さっきよりもよく響いて聞こえた。


 「ご協力に感謝します」


 探偵は一言だけ答えたが、それ以上何も言わなかった。


 「そもそも本当にこの四人の中に犯人がいるんですか?それこそ、これほどの人数の出入りがあったのなら、我々以外が容疑者として名前が上がっても不思議ではなかったと思うのですが?」


 それは確かにそうだ。今回のイベントには彼ら以外にもホテルの人間やメディアの人間など様々な立場の人間が集まっている。それこそ、探偵の目的である産業スパイの仕業なのだとしたら、彼ら以外にも犯人になりうる人間はいそうな気もするが・・・。


 するとようやく探偵の饒舌な弁解が始まった。


 「そうおっしゃるのであれば、まずは状況を整理してみましょう」


 探偵の言葉を彼らは各々の姿勢で耳を傾けている。


 「青柳さんはイベントの開始早々にスピーチを行い、その後アシスタントの谷川さんによって運ばれてきたパナケイアを試飲。その数分後に彼女は体調不良を訴え、会場を退出した。あの力強いスピーチを聞く限り、以前から倒れるほどの体調不良ではなかったと仮定しましょう。となれば、ここまでの状況のみで考えると、犯人はこのパナケイアを使って反抗に及んだ可能性が非常に高いと言えるというわけです」


 確かに、現場で見た状況だけで鑑みれば、あんなにエネルギッシュで力強いスピーチをした数分後にあんなことになるなんて、誰も想像していなかっただろう。


 「もちろん、これはあくまで状況のみで考えればの話ですよ?このあといろいろわかってくれば、導き出される真実も変わってくるかもしれませんから」


 探偵は念を押すように伝えた。その場にいなくても、彼らの反論しようとしている空気感がマイク越しに伝わっていたのであろう。


 岩倉は真剣な表情で何か考え事をしている様子だ。


 「確かに青柳さんから体調不良の話は聞いておりませんでしたねぇ。ですが彼女は強い人ですから、無理をしていた可能性だってあるでしょう?」


 岩倉の発言に、来栖も大きく頷いて賛同していた。


 「だとすれば尚更、今日この日、もしくは昨日の時点で青柳さんと接触している人間、つまりあなたたち四名が犯行に及んだ可能性が高いということになるでしょうね」


 「しかし・・・」


 岩倉はそれ以上何も言えなかったようだ。どうやら墓穴を掘ってしまう結果となった。


 「それで、誰なんですか?探偵っていうのは推理をするんですよね?早くしてくださいよ!我々だって今日の失態の尻拭いをしなければならないんですから。それに早く青柳さんの容体を!」


 「そうしたいのは山々なのですが、私も忙しい身でありまして、代わりに私の助手が今回の事件を華麗な推理で解決してご覧に入れましょう」


 嫌な予感が的中した。


 「ちなみ、青柳さんは先ほど病院に運ばれました。恐らくすぐに血液検査が始まることでしょう」


 そんな補足は今はどうでも良かった。今私は、八つの目から疑いの眼差しが注がれている。


 「本当に、この人で大丈夫なんですか?」


 来栖の声が聞こえた。


 「あまりこういった場に慣れていないように見えるのですが?」


 谷川の声も聞こえる。正直今の言葉は彼女に一番言われたくなかった。


 「隠していても仕方がありません。確かにこの者は今回が初めての現場仕事です。だが、私もまさかこのような事態になるとは全く思っておりませんでしたからなぁ」


 そう言うと、探偵の笑い声が宴会場に響き渡った。


 「笑い事ではありませんよ!我々はあなたがインターポールから直々に捜査を依頼されているということで、あなたの探偵としての素性を保証できるはずなのに、結局あなたが推理しないのであればなんの意味もないじゃないですか!」


 来栖がまたもや怒っている。だが、私は反論できない。なぜなら、その通りだからだ。


 「すみません。ですが、今はどうしても産業スパイ絡みの事件の捜査中でして、そっちに手が離せないんですよ。ただその私の責任でこの者を助手として指名しているのですから、意味合いは同じではありませんかな?私も別にインターポールの人間ではありませんし」


 いや、全然意味合いは違う気がする。だが、彼女たちはそれ以上のことは言わなかった。


 「それで助手さん。誰が犯人なんですか?」


 岩倉と高瀬と来栖は高圧的に詰め寄ってきた。どうやら、探偵の口から出まかせにまんまと乗せられてしまったのか、それともこれ以上、姿が見えない相手と話していても埒が開かないと思ったのか?どちらにせよストレスの矛先をこちらにシフトチェンジされてしまった。


 これではそもそも考えたくても考えることができない。


 「あのー!」


 久しぶりにこんな大きな声を出して、一瞬その次になんて言おうとしていたのか忘れてしまいそうになった。


 「なんですか?」


 岩倉が尋ねた。


 「少し私の上司と話をさせてもらってもよろしいですか?」


 すると、それに探偵が答えた。


 「わかりました。では電話をします。みなさんはその場で待機していてください」


 私はふと、宴会場の後ろのパーテーションの裏なら会話を聞かれないと思い、その方向へ向かおうとした時、高瀬に肩を掴まれた。


 「こっちに控えの個室があるのでそこへどうぞ!」


 確かに暗いより明るいところの方が良い。


 「みなさん、くれぐれも妙なことは考えないでくださいね」


 探偵が念を押すと岩倉は鼻で笑った。

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よろしくお願いします。


第1話→https://ncode.syosetu.com/n1110mi/1


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