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新米探偵助手は読者の推理が頼りです!  作者: マフィン


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7/15

中止

 今、この宴会場にいるすべての人間の視線が、私に向けられている。今こそ特殊能力が発現するなら、こんなにも絶好のチャンスはない。できることなら、体が透明になれるような特殊能力であって欲しい。


 まぁ人生はそううまくいくものではない。


 私が一言も発さないせいで、宴会場には沈黙が流れている。その沈黙を破ったのは気が動転している様子の来栖だった。


 「馬鹿馬鹿しい。私は青柳さんの様子を見にいってきます」


 来栖はそう言い捨てながら、宴会場の扉へと進んでいった。すると、私を晒し者にした上司の声が再び宴会場の空気を震わせた。


 「ちょっと待ってください来栖さん。あなたはこの事件の容疑者候補ですので、申し訳ございませんがこちらの部屋からご退出なさらないようお願いできますでしょうか?」


 探偵は丁寧な言葉使いの奥から圧力をかけていた。来栖はゆっくりと足を止めながら、姿の見えない相手に憤りを通り越して呆れているように見えた。


 「バカにするのもいい加減にしてください。なぜ私が疑われないといけないんですか?」


 来栖は宴会場の空中に向けて言葉をぶつけた。


 「もちろん、あなただけではありません。容疑者候補は他にもいらっしゃいます」


 その瞬間、会場内にどよめき声が沸々と湧き上がった。まぁメディアの人間からしたら意味のわからない揉め事に巻き込まれでもしたら、この後の仕事に影響することを懸念しているのだろう。


 私は、会場にいる報道陣たちの様子を観察していた。


 「それで、そのほかの容疑者候補っていうのは一体誰なんですか?」


 痺れを切らした岩倉が、探偵に尋ねた。


 「わかりました。それでは私から今回の青柳さん殺人未遂事件の容疑者候補をお伝えします」


 宴会場は再び緊張の静寂に包まれた。


 「一人目は開発チームリーダーの岩倉さん。次に開発メンバーの高瀬さん。広報担当の来栖さん。そしてアシスタントの谷川さん。以上四名が今回の事件の容疑者候補です」


 わずかに谷川だけ表情が歪んだ気がしたが、ほかのメンバーは特に感情を表に出すことはなく、ただ名前を呼ばれたお互いの顔を見合わせている。


 その瞬間メディアから大量のフラッシュが放たれる。確かに探偵からはメディア側の人間の名前が呼ばれることはなかった。つまり、自分たちが蚊帳の外に出された瞬間に、一気に緊張の糸が解け、目の前の餌に群がった鳩のように彼らに寄ってたかって午後のニュースや夕刊のネタにしようと必死だった。


 「今、名前を呼ばれたみなさんは、大変申し訳ございませんが、こちらに残ってください。それ以外の皆様は、捜査に影響が出るため、ご退出いただけますでしょうか?」


 探偵の言葉を聞いた一部のメディアから抗議の声が上がった。


 「どうされたんですか?あなたたちは、この会の開始が遅れた時、口々に次の現場があるだの仰って、時間の遅れを気にされておりましたが、残念ながら、お察しの通りこのイベントは継続不可能となってしまいましたので、皆様におかれましては、心置きなく次の現場へ向かっていただけるかと。なんなら予定していた終了時刻を一時間以上も早く終われたので、次のお仕事の前に優雅なランチタイムなんてのはいかがでしょうか?」


 探偵が淡々とそう述べると、メディアの人々は不平不満を口々に発しながら、それぞれが帰り支度を始めた。だが、やはり中にはそれでも抗議の声をあげ、この場に留まろうと考える者もいるようだ。


 私はすぐに彼らの顔を覚えた。それが私の本来の仕事だからだ。


 男が三人ほどだった。彼らが首から下げている名札をよく見ると、大きく書かれた漢字フルネームの上に「フリー」と小さく書かれていた。やはり、このような態度を取れるのも、会社のようなものを背負っていないからなのだろう。


 すると、今度は高瀬が一歩前へ歩みでた。


 「探偵さん、私も彼らをこの場から退出させることにはあまり賛成できませんな。あなたは捜査に支障が出ると仰っておりましたが、それはあなたの立場であって、我々からしたら、得体の知れない者が捜査と称して何か我が社に不利益なことをするかも知れないではないですか?その監視役としてメディアの皆様にいていただくのも良いのではないでしょうか?」


 確かに高瀬の言う通りかも知れない。もし探偵の言う通りこの中の四人のうちの一人が犯人であるという真実が明らかになった時、その逆恨みでもかって、有る事無い事を言われるのなら、一層メディアという監視者がいても良いのかもしれないと思った。


 だが、探偵の考えは私や高瀬とは違ったようだ。


 「なるほど、それでしたらご心配には及びません。私は現在インターポールの管理下に置かれておりますので、彼らが私の身元を保証いたします。逆を言えば、インターポールの捜査にご協力いただけないとなると・・・」


 「なるほど!それでしたら、私も安心しました」


 私も探偵の今の発言は初耳だった。私にも言ってはいけないことだったのだろうか?


 「それではメディアの皆様、本日はこのようなことになってしまって大変恐縮ではございますが、ただいまを持ってお開きとさせていただきますので、最寄りの出口よりご退出をお願いいたします」


 高瀬が丁寧に告げると、来栖が慌ててお詫びのアナウンスを流していた。


 「皆様、この度は誠に申し訳ございませんでした。また日を改めて、このようなイベントを開催させていただきますので、その際は是非ともご協力をお願いいたします」


 来栖の誠心誠意の言葉は、彼らの心には届いていなかった。

お読みいただきありがとうございます。ぜひ評価、ブックマーク、感想をしていただけるとかなり励みになります。

よろしくお願いします。


第1話→https://ncode.syosetu.com/n1110mi/1


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