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新米探偵助手は読者の推理が頼りです!  作者: マフィン


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犯人はあなただ!来栖さん!エピローグ

 空気の中にだんだんと、さっきまでは感じなかった匂いが鼻をくすぐり始めた。もしかしたら、猛毒パナケイアが充満してきた証拠なのだろうか?


 「カフェイン?」


 岩倉は来栖が猛毒パナケイアを無毒化するための物質としてあげた名前を疑うように復唱した。


 「いいから早く!」 


 来栖は私たち全員に訴えかけた。カフェインということはコーヒーなのだろうか?それなら外へ出れればいくらでも手に入れることができる。だが、残念ながら我々はこの宴会場に閉じ込められている。


 その時、岩倉が声を上げた。


 「ウェルカムドリンクだ!谷川さん!」


 「わかりました!」


 そう言い残して、谷川はどこかへ走り去っていった。確かにこのイベントが始まる時に各テーブルの机の上には、ウェルカムドリンクとしてコーヒーが置かれていた。外へ出なくても、裏にそれが大量に用意されているのだろうか?


 「来栖さん、本当にカフェインでどうにかなるのですか?」


 私の質問を岩倉も投げかけたかったようだ。すると、来栖は真剣な表情で説明を始めた。


 「発見したのは偶然ですけど、毒化したパナケイアを無毒化させる方法は間違いなくカフェインです」


 「いつからそれを?」


 岩倉が質問すると、その回答がくる前に谷川が戻ってきた。


 「今、装置にありったけのコーヒーを入れてきましたが、特に見た目の変化はありませんでした。なので、無毒化できているかどうかは・・・」


 すると、高瀬がまた高笑いをした。


 「そんなものはでたらめだ!このパナケイアは無毒化できない完璧な毒ガス兵器のはずだ!みんなここでお陀仏になるんだよ!」


 すると、谷川は黙って高瀬に銃を突きつけた。


 「私が試します」


 聞こえたのは来栖の声だった。


 「何を言って・・・」


 岩倉の言葉を来栖は遮った。


 「無毒化できていれば飲んでも問題ないはずです」


 「でももし出来ていなければ・・・」


 「来栖さんは即死してしまう。そうですね?」


 岩倉は今回ばかりは黙って遮られているわけには行かなかったようだ。私は岩倉の発言の回答を来栖の代わりにした。来栖は自らの命を犠牲にする覚悟を込めた表情で頷いた。


 「何もあなたがそこまで・・・」


 岩倉はまだ納得がいっていないようだが、私はもはや彼女の決意を覆すことはできないと諦めた。


 「このパナケイアは私が生みの親なんです。子供の責任を取るのが、親の仕事です」


 「わかった、なら私も一緒に行こう」


 岩倉がそういうと、二人は装置の元へと向かった。


 「私はここで彼を見張っているので、二人をよろしくお願いします」


 谷川にそう言われた私は、二人について装置の場所へと向かった。そして、二人は余っていたコーヒーカップにパナケイアを注ぐと、お互いのカップを合わせた。


 「カフェインに!」

 「カフェインに!」

 「カフェインに!」


 私は飲まなかったが、二人は同時にパナケイアを飲み干した。猛毒パナケイアを摂取してから、人間が死に至るまでは1分から2分。ここから長い1分間が始まった。二人は緊張の面持ちでお互いを見合っていた。


 お互い特に体や意識の変化は見られなかった。


 私は時計を眺めていた。


 「間も無く摂取から2分が経ちます」


 私がそういうと、来栖と岩倉は自分達の胸に抱いた結論を確かめ合うように、お互いの表情をうかがった。


 「と言うことは・・・」


 「成功ですね!」


 二人は喜びを分かち合った。もしかしたら、パナケイアが完成した時も、二人はこんなふうに喜び合いハグをしていたのかもしれない。


 その時外で大きな物音が聞こえてきた。どうやら扉をぶち破って、スワット隊がこちらになだれ込んできたようだ。一瞬にして部屋は包囲され、高瀬の逃げ場は無くなった。


 「くそ!舐めやがって・・・」


 高瀬はそう言い残すと、スワット部隊に拘束されに連れていかれた。


 「みなさん!よかった、ご無事のようですね」


 インターポールの雑踏から現れたのは、私の上司の探偵だった。


 「あなたが探偵さんの上司の方ですか?」


 岩倉が質問した。


 「はい、この度はみなさんをこんな事件に巻き込んでしまって申し訳ございませんでした」


 探偵は軽く頭を下げると、説明をさらに続けた。


 「どうやら、クルゲン酸に目をつけ、五ヶ月くらい前から兵器として暗殺や大量殺戮用の持ち運びしやすい毒ガス兵器として秘密裏に開発をしていたようです。そして今日この日が、それを彼の顧客たちにいわゆる実演販売の場としてこのイベントを利用するつもりだったみたいです」


 「そんなことが?」


 岩倉は目を見開きながら、彼の話を聞いていた。

 

 「現に昨日の夜は、あなたが青柳さんと口論になっている時間帯に猛毒パナケイアとすり替えていたようですしね」


 すると、我々の目の前を観念して大人しく連行されている高瀬が通り過ぎていった。探偵はそれを見送ると、来栖に視線をむけ、真剣な眼差しになった。


 「来栖さん、あなたもご同行願います。一応重要参考人ですから・・・」


 「わかってます」


 来栖は静かに頷いた。どうやら彼女の中で罪を償う覚悟なるものができているのかもしれない。確かに事故とはいえ、人を殺めてしまうかもしれない重要なことを犯してしまったのは事実だ。こればかりは私もただ見守ることしかできない。


 来栖は探偵に連れられ、宴会場の出口へと向かった。


 「来栖さん、罪を償ってまた新しいパナケイアを作りましょう!」


 「ええ、今度こそカフェインに頼らない本当の意味でクリーンなエナジードリンクの開発を目指しましょう!」


 岩倉の呼びかけに、来栖はかすかな笑顔で答えた。


 「ではあとはお願いします。インターポールの谷川さん」


 探偵がそういうと、それを聞いていた岩倉と来栖が一斉に顔を上げた。私は今の発言を聞いてようやく全ての謎が解けた。


 「なるほど!だから、青柳さんの忘れ物を取りにいった時、あんなに長い時間会社にいたんですね。高瀬さんがスパイである証拠を掴むために」


 谷川は足を止めると、こちらに背を向けながら、軽く説明を返した。

 

 「彼が黒であることは明白でした。会社内の彼のアカウントには、クライアントのメールのやり取りや、パナケイアをガスにするための実験資料などがありました。それこそ今日のイベントの計画も丁寧に記載されておりましたよ」


 「それを知って、パナケイアを麦茶にすり替えたといわけですか」


 岩倉と来栖は私と谷川の話を聞けば聞くほど、目が大きく見開いていった。


 「彼にバレないように彼女を救うにはこうするしかありませんでした。とは言っても今回の事件は想定外なことも多かったですけどね」


 谷川はそういうと、再びこちらを振り返った。


 「では私はこれで!みなさん、本日は犯人逮捕にご協力いただきありがとうございました」


 彼女は力強くそう言いながら敬礼をし、再び我々に背をむけた。

お読みいただきありがとうございます。ぜひ評価、ブックマーク、感想をしていただけるとかなり励みになります。

よろしくお願いします。


第1話→https://ncode.syosetu.com/n1110mi/1


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