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新米探偵助手は読者の推理が頼りです!  作者: マフィン


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犯人はあなただ!谷川さん!エピローグ

 私は病床で横になりながら天井を眺めていた。真っ白の天井は考えを巡らせる上では、無駄な情報がなくて、集中しやすい。だがそれは逆に、かえって我に帰ることを忘れてしまう。


 「具合はどうだ?」


 探偵の声が聞こえた。今度はちゃんと肉声が聞こえてくる。何だか不思議な感覚だったが、むしろ宴会場でのあの状況の方が異常なことなのだ。


 「ええ、私は特に何もありません」


 「それが心配だ」


 あの後私は、突入してきたスワット部隊に保護されて、すぐに病院へ搬送された。誰もが、猛毒ガスを吸ってしまっている以上、私の命が助かるかどうかは一刻を争うものと思われた。

 

 しかし、検査をしてみれば、私の体には猛毒に犯された痕跡なんてこれっぽっちも見つからなかったそうだ。これは果たして、私の身体が特異体質なのだろうか?それとも他になにか原因があるのか?


 だが、あの場で猛毒のガスを撒かれていたのはまぎれもない事実だ。現にそれで三人が犠牲になっているのだから・・・。


 私はその時、ふとあることを思い出した。


 「来栖さんは?」


 すると探偵は、首を横に振った。


 「高瀬以外の三人は中毒反応を起こして、全員死亡が確認された。残念だよ」


 確かに残念なことに変わりはない。だが、私が言いたかったのはそこではなかった。


 「彼女は本当に中毒死だったのでしょうか?」


 「それは一体どういうことだね?」


 探偵は顔をしかめながらこちらを見ていた。


 「来栖さんは高瀬に撃たれているんです」


 私がそう言うと、探偵はさらに難しい表情を浮かべながら、考え込んだ。


 「普通産業スパイは、よっぽどのことがない限り、一般人に手をかけることはないんだ。罪が重くなれば、自分の仕事がしづらくなるだけだからな」


 まぁ拳銃を持っていた時点でその理論はあまり当てにならないと思った。とはいえ、確かにあのタイミングで来栖を撃った行動に、合理性を感じないのも事実だ。


 「だとしても、高瀬はなぜ彼女を撃ったのでしょうか?」


 「詳しいことはわからないが、少なくとも彼女が生きていることで、彼に不利益なことがあったのだろう。それこそ、彼のクライアント命のあの性格なら彼女が生きていることが、その命よりも大事なクライアントに不利益になることなら、ありえない話ではないんじゃないか?」


 やはり、私の推理はまだまだなのかもしれない。今の私の推理力ではその真実を結びつける材料がない。


 「もしかしたら、君がこうして生きている理由を、来栖さんが知っていたのかもしれないな。まぁ今となっては死人に口なしだがな・・・」


 「だとしたら、来栖さんだけじゃなくて、岩倉さんも撃つんじゃないんですか?」


 「単純に岩倉さんは知らないのかも」


 「どう言うことですか?」


 考えれば考えるほど・・・いや探偵の話を聞けば聞くほど、頭の中が混乱してくる。


 すると、探偵は立ち上がると、病室の外の景色を眺めた。


 「この病室から見えるこの木」


 探偵は急に窓の外にある木を指差した。


 「どうだ?大きいだろ?」


 確かに青々とした葉が何重にも生い茂っており、その一つ一つの枝が太く見えた。


 「確かに大きいように見えますね」


 私がそう答えると、探偵は木が見える窓をさらに覗き込んだ。


 「確かに、ここから見ると大きく見える。しかし違う角度から見てみるとどうだ?たとえば、この窓枠の外、つまり別の部屋から見たらどうだろう?」


 「何が言いたいんですか?」


 私は思わず、苛立ちを露わにしてしまったような気がする。


 「要するに、君はこの窓枠からしか事件を見ていなかったんだよ。窓枠から・・・つまり先入観を持ったまま、事件という木を眺めてしまったんだ。だから実際の大きさなんて分からず、ただ窓枠から見えた、生い茂った枝葉を見て、この木は大きいと君は考えた。だが実際、この気は上の階からは存在すら確認することができない。そしてここは2階だ」


 私はそんなことを言われながら、今回の私の事件に対する振り返りをした。確かに私は事件の断片しか見ていなかったのかもしれない。新人なのにも関わらず、有事の際に物怖じしないその態度、トイレと称して退出したあの空白の時間、そして、飲料をすり替えた事実。それらの全てが裏目に出たのだ。


 探偵の例え話はまだ続いていた。


 「しかもこの木、二つの木が重なって大きく見えているだけで、隣の部屋から見たら、全然小さく見えたぞ?」


 探偵は笑いながらそう言うと、病室の扉の方向へと歩みを進め、扉の前で止まった。


 「もしこれが最後の推理になったとしても、今後の君の人生において、その先入観の目は今後も大いに邪魔をするだろう」


 探偵はこちらに顔を見せることなく言い放つと、そのまま病室を後にした。私は、とても悔しい感情が頭の中を支配していた。


 なぜなら、私は結局青柳さんに手をかけた犯人を暴けていない事実に気がついたからだった。


 それから数ヶ月後、今回の事件を受けて、株式会社エナジーヘルスは大打撃を受けて、最終的に倒産してしまった。製品が裏社会で兵器として売られようとしていたゴシップがネット内で広がり、世間の風当たりが厳しいものとなった結果のようだ。高瀬のしてやったりという結果になった。


 だが、彼の好き勝手な結末では終わらなかった。谷川の大活躍によって事件は解決し、託されたデータを元に、現在裏社会のテコ入れが始まっている。


 ニュース番組では連日連夜、名の知れた要人たちの逮捕報道に日本だけでなく、世界までの注目を集めている。私も驚くような人物まで逮捕され、これが果たして今後この世界をどう左右していくのか心配になる程だ。


 私はというと、そのまま探偵事務所で働き続けることになり、現在探偵の助手として修行をしている。


 次こそは決して誰も死なせない。そして次こそは必ず、すべての真実を明らかにしたい。私はその思いを胸に刻み今日も事件現場へ向かうのだった。

お読みいただきありがとうございます。ぜひ評価、ブックマーク、感想をしていただけるとかなり励みになります。

よろしくお願いします。


第1話→https://ncode.syosetu.com/n1110mi/1


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