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新米探偵助手は読者の推理が頼りです!  作者: マフィン


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犯人はあなただ!来栖さん!その4

 来栖は、岩倉が出したスライドを眺めながら、このスライドの意味を考えている様子だった。岩倉はそんな来栖の様子を見ながら、説明を始めた。


 「青柳さんは最後にこんなスライドを用意していたんです。彼女はどうしても来栖さん、あなたの想いを無視してはいけないと言っていました。実はこのプロジェクトも社内で賛否が分かれていて、三年前のあの事件の影響で中止させられるところでした。ですが、青柳さんはそれをなんとか阻止しようと奮闘し、その結果中止になることはなかったのですが、その変わりに存続の条件として、味の改善とかなり無理な売り上げ目標を設定されてしまったんです」


 来栖は岩倉の顔を見ることができずにいた。


 「昨日、私が彼女と話した時、青柳さんはこうも言っていました」


 それでも岩倉は来栖から視線をそらすことはなかった。。


 「ここで終わってしまったらパナケイアどころか、クルゲン酸までもがこの世から消えてしまう。私はそれだけは絶対に阻止したい。だって人類の歴史を変える可能性を秘めた素敵な想いのこもった商品なんだからと」


 「そんな・・・」


 来栖は崩れ落ちた。


 「では。来栖さんが感じていた孤独感は単なる勘違いだったと言うわけですね。岩倉さんも青柳さんも商品そのものだけではなく、来栖さんの想いに動かされてここまでプロジェクトを進めて来られた・・・」


 私がそう言うと、岩倉は黙って頷いた。


 「さっきも言ったかもしれませんが、この話はもっと早く来栖さんにも話すべき内容だったと思います」


 そう言うと、彼は来栖の前に改めて立ち直り、もう一度深く頭を下げた。


 「本当に申し訳なかった。君をそんな寂しい想いをさせてしまっていたなんて・・・」


 すると、来栖は岩倉に顔を上げさせ、自分の大きな瞳からこぼれ落ちた大量の涙を手のひらで大きく拭いながら、控えめな笑みをこぼしていた。


 「わかっていなかったのは私だけだったみたいですね。それなのに私はとんでもないことをしてしまいました・・・」


 私が彼女に何か声をかけようとしたとき、それを横から奪うかのように探偵の声が聞こえてきた。


 「しっかりと罪を償えば、あなたにはまだ人生がある。それに青柳さんは先ほど病院から命に別状はないと連絡がありました」


 「それはよかった・・・」


 岩倉は安堵の声を漏らしながら、空中を眺めている。すると来栖も岩倉と同じように、誰もいない宴会場の天井に向かって訴え始めた。


 「探偵さん、でも誓って私は青柳さんを殺すつもりはありませんでした」


 今度は私の方にも顔を向けた。


 「睡眠薬を盛ったのは事実ですが、本当はあんな倒れるほどの量を飲ませてはいません。私自身が一回服用する分量しか入れていないのですから・・・」


 その疑問に答えることができるのは、私だろう。


 「それには悲劇的な偶然があったんです」


 「偶然?」


 岩倉も私の説明に興味を示した。


 「谷川さんがとりに行った忘れ物、確かピンクのポーチだったと思うのですが、その中にはラムネのようなものが入っていたとおっしゃっていました。実はそれが睡眠薬だったみたいなんです」


 すると今度は探偵の声が補足に入った。

 

 「しかも、青柳さんは昨日の深夜にそれを摂取していた痕跡が見つかました」


 なぜ探偵がそれを知っているのかは定かではないが、これで完璧に今回の事件の顛末が明らかになった瞬間だと思う。


 「と言うことは・・・」


 来栖の震える声がかすかに聞こえた。


 「それが合わさってしまったことによる悲劇だったということですね」


 私がそういうと、来栖は私と岩倉を含めたこの会場にいるすべての人間の前に立った。


 「皆さん、本当に申し訳ございませんでした」


 来栖は深々と頭を下げた。私もこれで事件は一件落着したという大きな達成感と、安堵のため息をついた。


 「ところで来栖さん、なぜパナケイアと麦茶をすり替えたんですか?」


 「え?」


 岩倉の質問に来栖は変な声をあげた。

 

 「いや、え?って・・・」


 来栖の反応に岩倉も困惑している様子だった。確かに、それに関しては私も言及したものの、そうなってくると、辻褄が合わない。犯人はわかったはずなのに、こんなに歯切れの悪いことがあるのだろうか?


 「ですから、それも私ではないです・・・」 


 来栖は全力で否定した。


 「だったら誰が?」


 その答えは私の上司が知っているようだった。


 「すいません。実はそれが私が今、割り込んだ理由なんです」


 彼らは再び空中を眺めた。


 「先ほどもお話ししましたが、私は実は産業スパイの捜査をしておりまして、今回の事件を私の助手に捜査させている間に、私も捜査を進めておりました。その過程で谷川さんにもご協力いただいて、どうにか麦茶とすり替えられる前のパナケイアを発見することができたんです」


 その瞬間、彼らの表情が安堵から再び、緊張感のある表情へと変わった。それはすり替えられる前のパナケイアが見つかったと言う事実はもちろん、その捜査に谷川まで関与していたと言う事実も合わさってのことだった。


 「では谷川さん、そのパナケイアうぃ持って来ていただけませんか?」


 探偵が合図を出すと、ゴロゴロと音を立てながら、谷川がさっきのイベントの時よりも落ち着いた面持ちで、車輪のついたテーブルの上に乗せられたパナケイアをこちらへ運んできた。


 「ですがどちらにしても、その件に関しては解決していて、このパナケイアは飲んでも問題ないはずです」


 岩倉は自信たっぷりに答えた。


 「そのようでしたね。それでしたら、高瀬さん、そのパナケイアを飲んでいただいてもよろしいでしょうか?」


 探偵が名前を呼ぶと、皆が高瀬に視線を向けた。すると、高瀬は呆れた笑みを浮かべながら、前へ進み出てくる。


 「探偵さん、今の話を聞いていましたか?このパナケイアはもう安全だと私と岩倉さん、そして青柳さんと昨日の打ち合わせで一緒に飲んだ上で確認していますから・・・」


 「でしたら、このパナケイアを今ここで飲んでも問題ないと言うことですよねぇ?」


 探偵が高瀬の言葉に被せると、高瀬は黙ってパナケイアが注がれたグラスを眺めた。


 「高瀬さん、飲んでいただけますか?」


 岩倉がそう語りかけた。だがしかし、高瀬がそのパナケイアを飲むことはなかった。

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よろしくお願いします。


第1話→https://ncode.syosetu.com/n1110mi/1


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