犯人はあなただ!高瀬さん!その3
岩倉と高瀬は、お互いに同じことを考えていると確信すると、岩倉が高瀬に何かアイコンタクトを送った。
「探偵さん。このままこの話を続けていいのでしょうか?正直、あなたの推理はいささか破綻しているように聞こえるのですが・・・?」
こちらに話しかけてきたのは高瀬の方だった。私は彼がそう投げかけてくるとは思っていなかった。一方の岩倉も後ろで高瀬の言葉にただ頷いているだけだった。
「では今朝、パナケイアをこの会場へ用意したのはどなたですか?」
私は聞こえないふりをして話を続けた。
「探偵さん・・・」
高瀬が再び呆れた声を上げる。私もすかさず人の話を聞かない頑固者を演じた。
「まさか、一人でにパナケイアがこの会場に現れたわけではないですよねぇ?」
高瀬は大きくため息をついた。
「それは私です」
すかさず岩倉が間に入ってきた。
「ですが、彼は昨日の打ち合わせから私の部屋にいましたし、朝、私の部屋から朝食会場を含めて、この会場へは私も一緒に行動してます」
岩倉はまるで彼の弁護士にでもなったように、言葉巧みに彼のアリバイを主張した。
「ではその間に、お二人どちらかでも結構ですが、そのパナケイアを口にされましたか?」
「いいえ」
「前の日に確認していますからする必要がないでしょうよ」
「ということは、今日の時点で昨日の物とすり替えられていてもわからないというわけですね?」
すかさず私は結論を述べた。
「いや、ですから・・・」
高瀬と岩倉は一心同体で私に歯向かってくる。だが、私だって負けてはいられない。だんだん岩倉も、彼の弁護というよりかは、私に反論することに躍起になっている。探偵から言われた通りに事が運んでくれていればいいのだが・・・。
岩倉は大きく息を吸いながら、気持ちの昂りを落ち着かせて、話の続きを述べようと口を開いた。
「何度も言ってますが、私と彼はずっと・・・」
「いいえ、岩倉さん。恐らく探偵さんがおっしゃりたいのは、あなたが一度退出された時のことをおっしゃっているのだと思います。」
高瀬が岩倉の言葉を奪った。岩倉は高瀬の言葉を聞いて、その言葉の意味を一生懸命考えていた。
「岩倉さんが青柳さんのところへ向かわれた時であれば、すり替える事ができるのではないかと探偵さんはおっしゃりたいのだと思います。そうですよね?」
高瀬の目が鋭く光っているように見えた。何か企んでいるのだろうか?だが、彼が言っていることは正解だった。
「私の仕事をあまり奪わないでいただきたいものですなぁ」
「すみません・・・。私も早く自分の疑いを晴らしたくてつい・・・」
高瀬はイタズラな笑みをこちらに向けてきた。私にはそれが挑発のように見えたのは、考えすぎなのだろうか?
「では、その件についてはいかがですか?」
岩倉が何か言いそうだったもので、急ぎ足で質問をした。
「確かにその時であれば、私の部屋は岩倉さんの部屋から見て、青柳さんの部屋とは反対側でしたから、彼らの口論を目撃していた、来栖さんや谷川さんを含めて、私の姿を見る事ができる人間はいなかったはずです。そうなると確かにあなたのおっしゃる通りのことが起きている可能性はあるかもしれないですねぇ」
高瀬は自分のことを話しているはずなのに、なぜか人ごとのような口ぶりだった。すると、岩倉が高瀬の顔を覗き込んでいた。
「高瀬さん、そんなことを言って良いんですか?このままだと君に疑いがかかってしまうではないか!」
岩倉も恐らく高瀬の話している内容と、口調の不一致に違和感を覚えていたに違いない。何せ私も混乱してしまうくらいだった。それこそ、私は岩倉に罪をなすりつけようとしていると思っていた。
まぁもしかしたら、岩倉も罪をなすりつけられると思っていたのかもしれない。
だが、高瀬は涼しい顔をしながら、こちらに挑発的な視線を送っている。
「ええ。ですが私もその時間に岩倉さんの部屋を出ていない証明はできないかもしれませんが、それと同様に、探偵さんも私がパナケイアをすり替えたことを証明できませんからね」
確かにそれはそうなのだ。だがここまでの話を聞いていて、岩倉は犯人ではないことだけはわかっている。果たして選択が間違っていたのか?それとも・・・
高瀬は自分の左手首についているスマートウォッチを右手の人差し指で軽く触れた。
「そういえば、そろそろ青柳さんの血液検査の結果が出る頃合いじゃないですか?」
まるでタイミングを見計らうかのように、私のポケットが短く震えた。スマートフォンの通知が来た音だろう。私はすぐにスマホをポケットから取り出した。
「どうやらそのようですね」
「もしかして、本当に青柳さんの検査の結果が出たんですか?」
岩倉の質問に、私は軽く頷いた。
「でしたら、その結果次第でまた新たな真実がわかるかもしれないですねぇ」
私はスマホアプリを出し、探偵からのメッセージを読んだ。
「それで・・・何か分かりましたか?」
彼らからしたら、この結果によっては自分たちの疑いが晴れる。私は不本意ながら、青柳の血液検査の結果を伝えることにした。
「どうやら青柳さんの血中には睡眠薬が過剰摂取された痕跡があったようです」
「睡眠薬?」
まさかの展開に話を聞いているだけだった来栖が思わず声を上げていた。
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第1話→https://ncode.syosetu.com/n1110mi/1




