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新米探偵助手は読者の推理が頼りです!  作者: マフィン


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13/15

捜査資料

 私はひとまず彼らを再び控え室に移動させて、探偵から送られてきた資料を確認していた。探偵から送られてきた資料の中身は、今回の事件に関わった被害者容疑者を含め五人の簡単な経歴がまとめられている。


 これは恐らく、探偵が精査した情報・・・言わば今回の事件のヒントなのだと私は捉えた。


 私はどこかこの事件捜査をすることに対してネガティブな感情が消えつつあるのを自覚していた。


 「青柳・・・上智大学経済学部卒。その後、大手広告会社に3年、大手飲料会社の広報に5年在籍。一年前エナジーヘルスの飲料事業拡大のためにヘッドハンティングされる形で入社」


 あの堂々たるスピーチに納得のいく経歴が記されている。ただエナジーヘルスにはわずか一年しかいないようだ。私は、気になる部分にハイライトをつけて、次の項目を見た。


 「岩倉・・・北海道大学院薬学部卒。その後エナジーヘルスに入社。研究開発部門に9年在籍。3年前にパナケイア開発に着手」


 青柳と打って変わって、岩倉はもう9年もこの会社の同じ部署に所属している。それこそまだエナジーヘルスが飲料事業に着手するよりも前からこの会社にいるとなれば、このパナケイア事業に関してはずっとやり続けていると言うこともあって、思い入れも強いのではないか?


 「高瀬・・・ペンシルヴァニア大学卒。その後アメリカ大手企業に4年在籍・退社後はコンサルタントとして幅広く活動。5ヶ月前に岩倉の大学の先輩からの紹介で、エナジーヘルスへヘッドハンティングという形で入社」


 確かに青柳と同様にあの佇まいに納得の経歴が並んでいる。だが、やはり肩書きが気になる。彼は海外の大学を卒業し海外の企業に就職して、その後コンサルタントとして活動している。だが、今の彼のポジションは製品開発のメンバーだ。


 これは果たしてどのような意味を持っているのだろうか?


 そして私はもう一つのポイントに注目していた。それは、このチームメンバー五人のうち、今のところ二人がヘットハンティングされている。つまり、相当この事業にこの会社が力を入れ、注目しているということになる。


 あるいは何かあったのか?どちらにせよ、それがもしかしたら、この事件の解決へ導く鍵になるかもしれない。


 「来栖・・・北海道大学大学院薬学部卒。その後エナジーヘルスに入社。研究開発部門に1年、その後広報部に3年在籍。3年前にパナケイア事業の広報担当として参加」


 前半の経歴はほぼ岩倉のものと同じだった。つまり、岩倉と来栖は大学院の先輩後輩という関係だった。そして、彼女が広報ではなく研究開発チームとして、このパナケイア事業に着手していた過去があったというのに、今は広報担当になっている。これは果たして彼女の本意なのだろうか?それとも・・・。


 私はこの後の取り調べはこの部分を明確にする必要があると思った。というより、これは探偵の指令ともとれた。


 私は、スマホの画面を上下にスクロールしながら、あることを探していた。


 「あれ?」


 思わず声を漏らすほどだった。


 「あった」


 しばらく探して、ようやく来栖の経歴の下に谷川の経歴が記されているのを発見した。だが、その内容は私が思っていたよりも簡素なものだった。


 「谷川・・・高卒。3ヶ月前にエナジーヘルス入社」


 私はまたしてもスマホ画面をスクロールし続けた。何度も擦りすぎて指紋がなくなるかと思うほどだった。だがどんなにスクロールしても、どんなに画面の更新を試みても、谷川の経歴はこの一行しか書かれていなかった。


 これは果たして何を意味しているのだろうか?探偵のことだ。まだ会って間もないとはいえ、言葉の選び方などを鑑みるに、この資料にも私に対して何か指令を与えているのは明白だ。


 これは谷川はこの事件に関与していないと言う意味なのか?もしくは谷川の経歴が、これしか明らかにできなかったというミステリアスな人物だということなのか?もっとひどいところまで行くと、それだけ危ない人間だからこそ関わらないほうがいいということなのだろうか?


 考えれば考えるほど、だんだん谷川に対して恐怖を覚えるようになった。


 すると、頭の片隅で、扉が開く音が鳴ったことに気付いた。私は考えることに没頭するあまり、その音を無視していたようだ。だがその音の正体が谷川だということが判明した途端、私の心拍数は一気に爆あがりして、胸を突き破ろうとしていた。


 「谷川さん、どうかなさいました?」


 驚きからの緊張と緩和で傍目から見ても引くほど息を切らしている。


 「すいません、驚かせてしまって・・・」


 私の反応を見た谷川はとてつもなく申し訳なさそうな顔をしていた。それはそれで逆に私もとてつもなく申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


 「どうされたんですか?」


 「ちょっとトイレに行ってもいいですか?朝から一度も行けてなくて・・・」


 これは断るべきなのだろうか?本心を言えば、先に彼女の取り調べをしたいところではあったが、彼女は今私の目の前で、お腹を両手で押さえながら少し前屈みになり、懇願するような目でこちらを見てきている。


 「わかりました。良いですよ」


 「ありがとうございます。ちょっと長引くかもしれませんけど・・・」


 ですよねぇ・・・


 「わかりました」


 私は本心とは違うことを口にしていた。そうなると取り調べの順番を練り直さなければならない。


 私は資料を見直した。


 「この通りで行くか・・・」


 私はそう呟くと、一人目の岩倉を呼び出した。

お読みいただきありがとうございます。ぜひ評価、ブックマーク、感想をしていただけるとかなり励みになります。

よろしくお願いします。


第1話→https://ncode.syosetu.com/n1110mi/1


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