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新米探偵助手は読者の推理が頼りです!  作者: マフィン


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10/17

捜査開始

 「お待たせして大変申し訳ございません。早速、今回の事件の捜査を始めたいと思います」


 私は震えそうな声をごまかすように、いつもよりも少しばかり大声を出した。私の目の前には、四人の容疑者がこちらを向いて並んでいる。


 一人目は、開発チームリーダーの岩倉。年齢は三十代後半くらいで、恐らく彼が容疑者の中では一番の年長者なのだろう。この雰囲気に物怖じすることなくどうどうとしている。スーツよりも白衣が似合うイメージで、彼がかけている小さめのメガネがザ理系な雰囲気を助長させた。


 二人目は、開発メンバーの高瀬。年齢は二十代後半から三十代前半といったところだろうか?岩倉との歳の差も遠からず近からずといった感じだ。逆に彼はどちらかと言えば、技術者というよりは、スーツを着こなして、やり手ビジネスマンのような雰囲気が漂っている。彼も物怖じすることはなく、リーダーである岩倉とまるで意は同じと言わんばかりに、右に習えな態度でこちらを見ていた。


 三人目が、広報担当の来栖。年齢は二十代中盤から後半。先ほどまで司会を担当していたせいか、見た目よりも実年齢は高いのではないかという推測を見事に裏切ってくる佇まいだ。女性ということもあるのか他の二人の男性地は違い、少し動揺して常に震えているように見える。彼女はスーツを着こなし、バリバリ働くキャリアウーマンというよりは、そういった人に着いて回って勉強しているタイプに見える。もしかしたら、被害者の青柳とはそういった関係性があったのかもしれない。


 そして最後は新人っぽい谷川。年齢は来栖と同じくらいに見えるが、あのドジっぷりなところを考えると、もしかしたら、彼女なんかよりも随分と若いのかもしれない。彼女は言わずもがな、青柳にひどく叱責されている新人のようだ。彼女の様子を見る限り、毎日のように被害者に叱られているようだ。それだけ聞くと、動機のようなものは、彼女が一番あると言っても過言ではない。それに、私は彼女の行動で青柳さんが倒れた後の初動などを考えても、どことなく違和感を感じるところが多かった。今も、動揺を隠しきれていない来栖とは裏腹に、他の容疑者のように堂々とした面構えでこちらを見ている。


 こうやって見るだけだと、私は谷川に非常に興味がひかれた。だが、先入観が邪魔をすると、視野が狭くなってしまい、結論も半ば決めつけのようなことになってしまうかもしれない。それだけはどうしても、避けなければならない。


 「それで、我々に聞きたいことは何でしょうか?」


 岩倉が尋ねてきた。もしかしたら、いろいろと考え事をしていたせいで、知らないうちに沈黙を作ってしまっていたのかもしれない。私は気を取り直して、気づかれないようにため息をついた。


 「まずは、このホテルにそれぞれがいつ到着されたかですね」


 昨日の足取りとしては、全員がこのホテルに来ているところを考えるち、まずはそこから話を進めるのが一番であろう。


 「ホテルに到着したのは、青柳も含めて全員、昨日の14時頃です。その時間にチェックインを済ませたあと、我々開発チームは青柳さんの部屋で、最終ミーティングを行いました」


 岩倉がすべて答えた。高瀬も岩倉の説明に、大きくうなずいていた。恐らく、自分が岩倉と一緒にいたということを主張しているのだろう。


 だがすぐに、彼の上下に揺られた頭は、横に傾いた。


 「確かその時に青柳さんは、谷川さんに何かを頼んでいたような?」


 「確かに」


 高瀬の証言に岩倉も納得していた。


 「谷川さん、差し支えなければ何を?」


 「忘れ物をしたということで、それを会社に取りに行っておりました」


 即答だった。だが、それはこの質問を前もって予測していたからなのか?私の中で先入観が捜査の邪魔をしている。


 「その時の青柳さん、少し苛立っていたようにも見えましたね」


 高瀬の証言がさらに先入観を募らせる。


 「いや、谷川さんにはいつもあんな感じだよ。いつもとは言ってもこの三カ月の話だけど」


 岩倉の言葉にも引っ掛かりはしたが、恐らくこのまま話を続ければ、勢いで谷川を犯人に仕立て上げる自信が込み上げてきた。


 「その最終打合せは何時ごろ終了しましたか?」


 私は気になることをメモに残し、後ほどそのことについて聞くことにした。


 「あれは確か・・・」


 どうやら岩倉の記憶があいまいになっているようだ。


 「17時頃ですね。その後は、岩倉さんの部屋で我々だけの打合せが」


 高瀬が助け舟を出した。


 「それはいつまでですか?」


 「夜通しです。夜中の3時に作業が終わってそのまま高瀬も私の部屋に泊まりました」


 岩倉の話し方には、昨日の大変さが伝わってくるおかげか、そこに嘘はないように聞こえる。


 「それはお互いに証明できるということですね?」


 「ええ、そうだよな?」


 岩倉が高瀬に振った。しかし、高瀬はすぐに頭を縦に振ることはなかった。


 「いや、でも確か18時頃に一回岩倉さんどっか行きましたよね?あれ、どこに行ってたんですか?」


 全員の視線が岩倉に注がれていた。


 「あれはちょっと気分転換に散歩だよ」


 「一時間もですか?」


 間髪入れずに高瀬が突っ込みを入れた。


 一時間の散歩と聞いてもあまり違和感はなかった。それこそ先入観なのだろうか?だが、高瀬の突っ込みの入れ方や、夜通しの作業が必要な状況下である点を踏まえると、確かに、その外出に理由がないのは違和感があるのかもしれない。


 私はひとまずその部分をメモに残すと、話を強引に進めることにした。


 「ありがとうございます。では今日の朝からの動きは?」


 「朝は二人でホテルの朝食を食べてそのままこの会場へ向かいました。そこからは普通にイベントの準備を進めております。もちろん、お互いが証人です」


 そこは高瀬もうなずいてはいたが、岩倉の今の淡々としたしゃべり方を見て、一つ確信したことがあった。


 やはり、あの一時間には何かがあるようだ。それに私は高瀬に関しても気になることを見つけた。それは岩倉の説明が終わった後に毎回何かを考えている。何もなければ、最初は二つ返事でうなずいていたにもかかわらず、話が進むにつれてまるで、人のあら捜しをしているようだった。


 もしかしたら高瀬は岩倉を疑っているのだろうか?


 話せば話すほど、私の中のありとあらゆる側面で先入観が活発に仕事をしてくれる。

お読みいただきありがとうございます。ぜひ評価、ブックマーク、感想をしていただけるとかなり励みになります。

よろしくお願いします。


第1話→https://ncode.syosetu.com/n1110mi/1


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