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■ 最強小悪魔は露出狂!

【天使と悪魔の間で起こった大戦争も今は昔、双方は自らの頭領だった神と大魔王を封印し、協力し合って暮らしていた。


しかし、神と大魔王を封印した森では今も……】


昔々の大昔。


神が率いる天使軍団と、大魔王が率いる悪魔軍団が熾烈な戦いを繰り広げていた。それは数万年続いたものの決着がつかず、戦っている兵たちは、もはや何のために戦っているのかすらわからない状況にあった。


それぞれの頭領につき従う副官たちは「そろそろ和平の頃合いでは」と進言したが両者とも耳を貸さず、天使と悪魔は塗炭の苦しみを味わい続けることとなる。


戦いのさなか、偶然懇意になった幾人かの天使と悪魔は互いの境遇を嘆き、自らの主人への反逆を企てた。


苦難の末それは成功し、神と大魔王は”閉じ込めの森”の神魔殿に封印され、数千年の時が流れ去る。


--------------------


ここは、”今”の閉じ込めの森。


「さぁ、今日も暴れるわよ~」


赤い肌が美しい小悪魔のセシリアは、そう叫ぶと着ている服を一気に脱ぎ捨てた。魅惑的な肢体には、もう体のほんの一部しか隠さない小さな飾りが数個ついているだけである。


かつては天使も悪魔も、今の彼女と同じような全裸に近い格好をしていた。その方が魔力を解放するのに都合がいいからだ。わずかに身に着けている宝飾品も実は魔道具で、素っ裸では魔力が暴走するため、それを防ぐ目的でしかない。


だが、現代の彼らは違う。


それはいつの頃からか”人間”が大繁殖し始め、彼らが服を着ていたことに起因する。


世界のいたる所に人間があふれるようになると、天使や悪魔も彼らと付き合わないわけにはいかなくなった。ただ、素っ裸同然の格好では、人間に奇異な目で見られ都合が悪い。防寒など実用的な目的で服を着る必要のなかった天使や悪魔も、人間に合わせて服を着るようになった。


すると彼らに不思議な感情が芽生えてくる。それは”羞恥心”であった。かつては裸同然の格好が当然であった彼らも、実用的な意味とは別に服を手放せなくなっていった。


だが、服は魔力の解放を妨げる。それは彼らにとって不自然な格好であるからだ。しかし天使と悪魔の大戦争が終結した今、これという支障はなく、それが当然の生活スタイルとなっていった。


”古来”の出で立ちに戻ったセシリアは、閉じ込めの森に常に湧いて出るモンスターを狩り始める。


神と大魔王を封印したとはいえ、完全にそれが成し遂げられたわけではない。神魔殿からは常に彼らの恨みの瘴気が流れ出し、異形のモンスターを作り出していた。天使と悪魔は協力し、怪物たちの排除に腐心する。放置すれば、神と大魔王の復活を許すかも知れないと考えたためである。


幼い頃から素っ裸に開放感を抱くセシリアは、進んでその役目を買って出た。大切な役目を果たすためならば、魔力を解放するため裸に近い格好になるという”恥さらし”が、大目に見られていたからである。


遠目には全裸に見える小悪魔セシリアが、森のモンスターたちを次々と屠っていく。服を脱いだ解放感と相まって、彼女は怪物退治を堪能していった。


同じころ、神魔殿の近くに天使の青年ギルコットがいた。彼は学者であり、神殿の封印をより完璧にするための研究をしている。今日も、そのための調査に赴いてきたのであった。仕事を滞りなく進めるため、彼にはモンスターに察知されない特別なマントが支給されている。


そこにいきなり、セシリアとモンスターの戦いが持ち込まれた。


「あぁ、もうしつこいモンスターね!」


口では文句を言いながら、彼女は戦闘を楽しんでいる。


ギルコットのマントは、悪魔にも隠蔽効果があり、セシリアは彼に気づかないでいた。


「ようし、トドメよ!」


空中に浮かんだ彼女が詠唱を始めると、その頭上には特大のファイヤーボールが形成されていく。本来、神魔殿の近くでこんな強力な魔法を使うのは非常識であるのだが、恍惚とした彼女にそれを気にする様子は微塵も感じられない。


「お、おい! やめろ! こんなところで……」


隠蔽マントを外し、ギルコットが叫ぶ。神魔殿の周りには、第一の結界である六つの宝珠が祀られていた。もし、そこに影響が及ぼされれば……。


「なに? あんた、どこから出てきたの!」


慌てるセシリア。しかし後の祭りであった。


巨大な火の玉は既に彼女の制御を離れ、最後の抵抗を見せようとする眼下のモンスターへと解き放たれる。


モンスターを一瞬で屠った火の玉はその勢いを止めることなく、辺り一面を大爆発させるに十分な威力を発揮した。


「あちゃ~、またやっちゃった……。


あ、あの天使は大丈夫かしら」


一面焼け野原になった神魔殿周辺。


セシリアは焼け焦げた大地に降り立ち、あわれな犠牲者をさがす。


「あ、あれは……」


彼女の目に、淡く光るフィールドが映った。その中には、何が起こったのか必死に理解しようとするギルコットの姿がある。


緊急時に使用を許された防御魔道具を発動させたのだ。”きちんと服を着ている”ギルコットには、自前の魔法であれだけの炎熱攻撃のトバッチリを防ぐ能力はなかった。


「お、おい、キミ! 何を考えているんだ!」


普段はおとなしい学者天使が、セシリアを激しく指さして叫ぶ。だが顔は彼女から大きくそらされて、全く別の方向を向いていた。


「はい? あんた、なんでアサッテの方を見て喋ってるのよ」


セシリアが、不思議そうに尋ねる。


「その恰好だよ、その恰好! まぁ、なんて破廉恥な!」


顔を真っ赤にして怒鳴るギルコット。勉学一筋でやってきた彼にとって、妙齢な女性の素っ裸に近い格好は刺激が強すぎた。


「恰好って何よ。これが悪魔本来の姿じゃない」


破廉恥呼ばわりされたセシリアが、口をとがらせる。


「いいから服を着ろ、服を!」


ギルコットの余りの剣幕に、裸悪魔はしぶしぶ魔法でしまっておいた服を取り出し身に着けた。


セシリアが服を着るのを横目で確かめたギルコットが、


「キミは、なんてことをしてくれたんだ。この場所で、あんな馬鹿みたいに強力な魔法を使うなんて!」


と、ヒートアップする。


自分でもチョットまずかったかなと反省しているセシリアが、


「まぁ、そうカリカリしないでよ。あんたも服を脱いで天使本来の格好に戻ってみたら? ミミッチイことなんて気にならなくなるからさ。


お互い、裸のつき合いと行こうじゃないの」


と、笑って誤魔化そうとした。


「キミは、変態か――!!」


彼女を刺した指をブンブンと上下に振って、顔を真っ赤にしたギルコットが怒号を発する。


「変態!? 人のことを破廉恥だの変態だの、あんた一体ナニサマなのよ!」


今度はセシリアが怒り出した。


「あぁ、もしかしてキミか――。閉じ込めの森で暴れまわっている露出狂の小悪魔ってのは?」


ギルコットが、同僚に聞いた噂を思い出す。



「露出狂ですって? もう、許せないわ!」


天使と悪魔の小さな戦争がぼっ発しようとした時、大きな厄災の序章となる出来事が起こった。


神魔殿の周りに配置された宝珠に異変が生じたのである。それら全ては独特の瘴気に包まれ不気味に光り出した。


”許さぬ、許さぬぞ。我らは必ず世界に復讐する。全てを破壊しつくしてやる。天使も悪魔も人間も、一匹たりとも残しはしない。


呪いの宝珠どもよ。世界の破滅を開始せよ”


神殿の奥から響く恐ろしい声は、宝珠を通じて増幅される。


「なんだ? 何が起こっている?」


赤く染まっていたギルコットの顔が、とたんに青く変わった。


「あっ!」


呆気にとられるセシリアの目の前で、六つの宝珠が突然空に浮かび上がる。そしてそれぞれ別の方向へと飛び去って行った。二人はその状況を、黙って眺めているしかなかった。


異常事態の報を受けた天使と悪魔の合同評議会は緊急会合を開き、次のような結論を得る。


セシリアの放った大火球は、一時的に宝珠の力を弱めてしまった。そこに神と大魔王の怨念の一部が乗り移り、おそらくは独自の意志を持って世界のあちこちへと飛散した。


セシリアとギルコットが聞いたメッセージから推測すると、宝珠は飛び去った場所で何らかの存在として顕現し、神と大魔王の復活を画策するだろう。


それは何としても阻止しなくてはならない。だが、宝珠が変化した”なに者か”を特定するのは容易ではない。その見た目は天使かも知れないし、悪魔かも知れない。はたまた人間かも知れないし、動植物かも知れない。


ただ、希望がないわけではなかった。


二人の報告によれば、宝珠はそれぞれ別の独特な瘴気をまとっていたという。その瘴気を感知すれば、宝珠が変化した何者かを判別できる可能性が高い。さすれば、そのせん滅も可能だろう。


しかし現場にいたのは、セシリアとギルコットの二人だけである。ゆえに、それを判別できるのも二人だけであった。


また崩壊したのが一番外側の結界だけとはいえ、守りが脆弱になったのは間違いない。天使と悪魔が全力を挙げて補完するが、のんびりと構えているわけにはいかない。


セシリアとギルコットには、評議会より宝珠探索の命が下った。各地に散らばっている天使や悪魔と連絡を取りつつ、宝珠奪還、もしくは破壊を遂行するのである。


神と大魔王が、執拗に戦い続けた真の理由とは何か。それは人間の誕生と関係があるのか。また天使・悪魔連合評議会に渦巻く陰謀とは……。


かくしてここに、露出狂の子悪意と純情堅物天使が世界を救う”お色気ハチャメチャ道中譚”解禁!



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