■ 異端の色の物語
【神聖帝国グォルターナル。
その国の筆頭貴族の家柄に、双子の妹として生まれたフレイラ。
しかし”仮面の儀”において、呪われた青い仮面が現れたことで、彼女の運命は暗転する】
神聖帝国グォルターナル。
その国は三大貴族が支配しており、王すら彼ら一族の傀儡に過ぎなかった。
三大貴族とはすなわち、炎の貴族フレイマール、氷の貴族アイスミルン、雷の貴族サンダザームである。
その中の筆頭はフレイマールであり、一族の使う炎の魔法は帝国のシンボルとなっている。それには理由があった。フレイマール一族は一定以上レベルの高い炎の魔法を使う時、顔の色が変色し、更には何らかの模様が浮かび上がる。それは仮面のようにも見え、また帝国の始祖神・大フレーマルの姿に酷似していたのであった。
そして今、フレイマール一族にとって重大な儀式”仮面顕現の儀”が一族の教会で行われようとしている。
一言で仮面と言っても、色は三種類存在する。レベルの高い順に、赤、橙、黄色であった。一族の当主には赤い仮面の所持者が選ばれるしきたりだ。
その仮面の色が、初めて現れる儀式が仮面顕現の儀なのである。その者の将来が決定づけられる瞬間でもあった。
祭壇の前には現当主の十二歳になる双子の娘たち、ファイアムルとフレイラが跪いている。
始祖神の像に向かって神父が祈る。すると二人の顔が変色し始めた。親族たちは、どんな色が現れるかを固唾をのんで見守っている。
ところがここで、悲劇が起きた。
姉のファイアムルの顔は、燦然と輝く赤色へと変貌したが、妹のフレイラの顔はどこまでも澄んだ青色へと変わっていったのだ。
実は表立っては知られていないが、青い仮面は呪いの色だと一族の中では密かに伝えられていた。それは始祖神・大フレーマルの裏伝説に基づいている。
この国を建国したのは大フレーマルだとなっているが、実は建国の立役者は蒼炎の神ブルーノイアであり、フレーマルは兄のブルーノイアから国を奪い取ったという伝説だ。故に青き仮面をまとう者は、ブルーノイアの呪いで生まれるとされてきた。
驚いた一族の長は、フレイアに仮面が現れるような強力な魔法を使わないよう厳命する。そして次期当主の座がほぼ確定したファイアムルとは、ことごとく差をつける暮らしをフレイアに強いた。
時は流れ、十五歳になった双子の姉妹は、慣例に従い王立の魔法学校へと入学する。だが二人の扱いは、お姫様と使用人ほども離れていた。
そんなある日、フレイアは他の二人の学生と共に、とあるダンジョンの探索を課題として与えられる。氷の貴族アイスミルンの子女リアイスと、雷の貴族サンダザームの子女ボルティーナである。二人とも、何故か学校では浮いた存在であった。
実は彼女たち二人も、とある事情で一族の厄介者であり、今回のダンジョン探索は三大貴族と学校が企てた恐ろしい計画なのであった。すなわち課題と称して、恐ろしいダンジョンで彼女たちを葬ろうとしたのである。
最初はぎくしゃくしていた三人であったが、命の危機を迎えるにあたり、その絆は急速に強まっていった。そして三人は、それぞれの秘密を知ることとなる。
それは三人とも”呪われた色”の持ち主であるという秘密であった。青い炎を操るフレイア、真紅の氷を使うリアイス、漆黒の稲妻を放つボルティーナ。皆、一族から呪われた色を持つ者として疎まれていた。
しかしダンジョンの奥深く、三人は真の建国神・蒼炎の神ブルーノイアと、その親友である真紅の氷神と漆黒の雷神の存在を知る。このダンジョンは建国の秘密の一部を記した神殿でもあったのだ。だが長い年月の間に事実は忘れ去られ、単に呪いのダンジョンと認識されるに至ったのである。
真の建国者たちの顕現した者とダンジョンを統べる主に認識された三人は、歴史に葬られた神々の復興を託されダンジョンを後にする。無事に戻った三人に学校運営者や一族たちは驚くが、それ以上は表立って何もするわけにはいかなかった。
一方、ダンジョンの主の話によれば、偽りの建国譚のひずみにより、世界は滅亡へと突き進むという。それを止められるのは、真の建国者である三神の顕現した者たちだけだというのである。三人はとまどいながらも、滅亡を回避するために動き出す。
神聖帝国グォルターナルの建国の秘密とは何か。なぜ数千年たった今、呪いの色を持つ者たちが同時に出現したのか。世界の滅亡とは何か。様々な謎をはらみ、異端とされた者たちの英雄伝説が今始まる!




