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■ 宇宙人だけど転生しちゃいました。

地球へと侵略に来たものの、予想だにしなかったトラブルでそれを断念する事になったボンボゾル星人。悲劇の死を遂げた彼らの一員が、天使の慈悲によってファンタジー世界へと転生する。


しかし、手違いによって……。

月の裏に浮かぶ一隻の宇宙船。その隠蔽技術の前には、地球の観測機器など無力に等しい。


地球征服を目論むボンボゾル星人は、先遣隊として数名の乗組員を地球へと送り出した。隠蔽技術を駆使して、地球を調査する侵略者たち。


だが、すぐに母船へ凶報を届ける事となる。地球には、彼らを即死させるほどのウイルスが存在したのであった。


その報告は母船から本国へとすぐさま伝えられ、ウイルスの構造がつぶさに調べられたが、その力は彼らの科学力をもってしても無力化は困難との結論が導き出される。


彼らの支配者たちは、直ちに侵略計画の中止を決断した。たとえ地球を征服したとしても、そんなウイルスがあっては、運営する事が困難であると考えたからである。


この結果は地球へ降り立った先遣隊にも届けられ、彼らは撤退を余儀なくされる。だが、ここで悲劇が起こった。彼らは完全防護のスーツをまとっていたのだが、偶然のトラブルから隊員の一人のスーツに穴が開いてしまったのだ。


問題のウイルスに感染する悲劇の隊員。先遣隊の隊長は母船の命令を待つ事なく、自らの責任隠ぺいを目的としてその隊員を原子破壊銃で消滅させた。


身内に殺された宇宙人。名をラドンムという。


突然の災難に何が何やらわからぬまま死んでしまった彼は、何故か意識を取り戻す。周りを見るとそこは雲の上のような場所で、目の前には地球人と思しき者が立っていた。


さては、捕虜になってしまったか?


そう思ったラドンムであったが、何かがおかしい。それは眼前の人物に、翼のようなものが生えていたからだ。


おかしいな。地球人に羽根なんてついていたっけか?


事前に読み込んだ資料とは違う地球人の姿に慌てるラドンム。


「のう、そこの者」


翼を生やした地球人が口を開く。


「突然の事でびっくりするだろうが、ここは地球であって地球ではない。


いや、そなたの事は存じておる。星を征服に来た宇宙人であろう。


だが心配するな。別にお前を取って食おうというわけではないのだ」


ここはおとなしくした方が得策だと考えたラドンムは、素直に耳を傾ける。


憐れな宇宙人が天使から聞かされた話は、概ね次のようなものであった。


ここは死者が来る天界という場所であり、死後の処遇を神や天使が決定する。本来は地球人専用なのだが、決まりとしては”地球で死んだ者”を対象とするため、ラドンムもここへと運ばれたのだった。


「で、お前は侵略者とはいうものの、たいへん憐れな身の上であるという事から、通常の地球人と同じ転生の特典が与えられる」


「転生?」


地球のファンタジー小説など読んだ事のないラドンムは戸惑うが、聞けば異世界、いわゆる平行世界の一種に地球人として蘇らせてくれるらしい。


母星へ帰れないのは残念だが、思い切りの良いラドンムは発想の転換をした。


そもそも俺は侵略なんてガラじゃない。強制的に入らされた軍隊にいたから、仕方なしに地球へやって来たのだ。ここは一番、たとえ地球人としてでも、平穏な一生を過ごすのが良策だろう。


納得した旨を天使に伝えたラドンムは、生まれ変わりにあたっての説明を受けた。


まず、人間の姿で転生する事。次に本来ならば魔法の力などを授けられるところだが、なにせ宇宙人を転生させた前例はないのでそれは出来ない事。その代り、今もっている科学知識をそのままに、転生した先でそれらを存分に使える環境を用意する、という事であった。


科学者として先遣隊に選ばれたラドンムにとって、それは魔法を与えられるに等しい条件である。


一通りの説明が終わり、新たな人生を送る土地へと転送されるラドンム。そこは資料で見た地球を、数百年さかのぼらせたような世界であった。


「さて、これからどうするかな」


そう思ったラドンムの目に、地球人の娘が向こうからやってくるのが映った。


「あ、もしお嬢さん……」


近くにある街の情報でも仕入れようと、彼が声をかけたその時である。


「きゃあぁぁ!」


娘が、いきなり恐怖の叫び声をあげた。


何が起こったのか全く理解できないラドンムだったが、その声を聞きつけて数人の村人が駆けよってくる。


「こ、こんなところに魔族が! 誰か、すぐに冒険者を呼んで来い!」


リーダーらしき青年が、声を張り上げた。


魔族? 魔族ってなんだ?


頭の中を数多くの疑問が駆け巡るが、どうやら自分にとって好ましくない状況である事を理解したラドンムは、急いで森の茂みの中へと逃げ込んだ。幸いにも、すぐに追ってくる気配はない。


どこをどれだけ走ったただろうか。疲れ果てたラドンムは森の中に泉を見つけ、乾ききった喉をいやそうとした。


「あっ!」


彼が驚いたのも無理はない。水面に映ったのは人間の顔ではなく、ボンボゾル星人そのものであったのだ。


人間の姿で転生するのではなかったか?


実は宇宙人を転生させるという初めての試みのため、その工程に予想外のトラブルが生じてしまい、見た目は変わらずそのままの姿で転生してしまったのだった。


「いや、困ったなぁ……」


姿を見ただけでもあれだけネガティブな反応を返されるのだ。安楽な人生を夢見ていたラドンムの希望は、はかなくも打ち砕かれる。


その時、後ろの茂みから突然声が発せられた。


「おい、あんた。どこの魔族だ。人間たちに、追われているみたいだが……」


振り向いたラドンムが見た者は、人間ではない、また自分自身とも違う異形の者であった。


「あ、あなたは……」


とりあえず言葉を返すラドンム。


「おぉ、俺は見ての通りコボルドのゴンザってもんだ。あんた、見慣れない種族だなぁ。だがその面体、魔族には違いないだろ?」


顔が犬という動物で、体が人間……?


地球の勉強をしていたラドンムだったが、さすがにコボルドの存在までは知らなかった。


「人間の偵察をしに来たら、偶然にもあんたに出っくわしたってわけさ。なんで、一人でこんな所に……。人間に見つかったら、大変な事になるぞ。って、もうなってるか」


「あ、あぁ実は……」


ここは話を合わせた方が良いと考えたラドンムは、適当な作り話をしてその場を誤魔化した。


「いたぞ!」


村人の通報を受けた冒険者たちが、二人のモンスターを取り囲む。


「ちきしょう。多勢に無勢、どうするか!?」


圧倒的な劣勢を悟ったコボルドが舌打ちをする。


「さぁ、生け捕りだ!」


襲い掛かる冒険者たち。


だが小さな槍を構えたコボルドの前で、奇跡が起きた。


後ろから放たれた黄色い光線が冒険者に当たると、彼は途端にその場へ崩れ落ちてけいれんを起こす。


コボルドが振り向くと、そこには右手を突き出したラドンムがいた。


彼は腕輪に内蔵されたマルチガンから、麻痺の光線を発射したのだった。天使との取り決めの際、死んだ時に身に着けていた装備はそのまま持ち込める約束であったのが、功を奏したのである。


「あんた、魔法を使えるのか!」


ゴンザが驚嘆する。魔族といえど魔法を使える者は限られていて、それはエリートとして扱われるのであった。


「おい、見た事もない麻痺の魔法を使っているぞ、気をつけろ」


冒険者のリーダーが叫ぶ。


「ゴンザ、耳をふさいで!」


ラドンムの言葉を聞きつけ、反射的にその大きな耳をふさぐゴンザ。


次の瞬間、ラドンムは喉に装着された音波兵器を作動させた。声を衝撃波に変えて打ち出すのだ。その威力に冒険者たちは全員が気絶してしまう。


「おい、あんた凄いなぁ。連中のセリフじゃないが、見た事もないも魔法だ」


倒れた冒険者の状態を確かめるべく、槍の先で彼らを軽くつついて回るゴンザが言った。


魔法……。そうか、彼らには、科学が魔法というものに見えるのか。


ラドンムが考え込んでいると、


「なぁ、あんた。俺のいる城へ来ないか? こいつらが帰らないとわかれば、すぐに追手がかかるぞ」


と、多少の耳鳴りを抱えたコボルドが誘う。


……この姿では、人間の里で暮らすのは不可能か。ならば……。


そう判断したラドンムは、ゴンザとともに魔族のいる居城へと向かった。



人間に迫害される魔族の仲間となり、科学と魔法の融合で、世界を大きく変える事になる”宇宙転生人”ラドンムの冒険譚が今始まる!


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気楽イラスト818のキャプション


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