■ 剛鉄巨人デュラゼインの憂鬱
恐ろしい謎の侵略者来襲。人類唯一の希望は、完全AI制御の戦闘ロボ・デュラゼインだった。だが”彼”の存在は……。
突如、どこからともなく侵略者が現れた。いや、侵略者というよりも破壊者といった方が正しいだろう。彼らが繰り出す異形の大型兵器たちは、地球政府に降伏勧告を迫る事もなく、一方的に破壊行為を繰り返していたからだ。
交渉の余地がないと知った地球政府は、かねてより開発中の巨大戦闘ロボットを抵抗運動に投入する。何といってもその特徴は、AIを導入した完全自立型の兵器である事だ。操縦者が乗り込まないために人命は損なわれないし、遠隔操縦の曖昧さや通信妨害もない。
ロボットはデュラゼインと名付けられ、抵抗勢力のシンボルとなった。
デュラゼインは人類の予想以上の働きを見せ、ついには破壊者を打ち破り勝利する。人類は、この偉業に沸き立った。だが識者の中には、とある疑問を抱く者もいた。
敵との交戦中、デュラゼインは何度か危機に瀕したものの、そういう時には何故か敵の攻撃の手が緩んだように見えたのだった。だが世界中が勝利に酔いしれる中、彼らの疑問は黙殺された。
平和が訪れると、今度は別の大きな課題が持ち上がった。それは、デュラゼインの処遇である。
地球を破壊されてはたまらないと、デュラゼインは人類が持てる全ての破壊的英知を詰め込んだロボットだった。どの国が管理するかによって、今度は地球で内戦が引き起こされかねない。
地球政府に加盟する国の全会一致の結論として、デュラゼインの破壊が決定される。もし将来において再び侵略者が現れた時のために、設計図だけは各国が分散して所有する折衷案で決着がついた。
だがその計画にも問題があった。デュラゼインは究極のAIを使用していたため、体は機械でも心、いや心に見えるものは人間そのものであった。ゆえにあらゆる場面で的確な行動を取れたし、人間を自らの”仲間”として最優先する事も出来た。つまりデュラゼインは”準人間”といって良い存在にまで高まっていたのである。
そんなデュラゼインが、自身の破壊を納得するわけがない。彼の心は、もう人間そのものなのである。地球に平和をもたらした功労者である自分が廃棄される事態など、受け入れるはずがない。
AIの進化を微塵でも妨げないため、地球政府の言う事には絶対服従という制限はつけていなかったのである。侵略者に地球を破壊される事態を考えた時、これはやむを得ない措置であった。
それゆえ自己を守るため、デュラゼインは地球政府に反抗するかも知れない。強力な侵略者を討伐した実力の持ち主を敵に回すのは、愚行以外の何ものでもなかった。
また彼は戦いの中で一般市民とも数多く交流し、絶大な人気を得ていた。それを用済みとばかりに破壊するのである。反対する者たちも少なくないだろうし、場合によっては大混乱が生じる恐れもある。せっかく脅威が去ったのだから、各国政府ともそれは避けたいところであった。
そこで地球政府は、ある秘策を講じる事になる。
平和になった地球に、デュラゼインが活躍できる場はない。それは市民もデュラゼイン自身も納得せざるを得ないだろう。そこで彼に”家”を与え、そこで余生を過ごしてもらう事にしたのである。
その”家”とは、博物館だ。新たに建築される施設には彼専用の部屋が設けられ、一人では寂しいだろうと様々な機械類も展示された。もちろん市民との交流イベントも盛んに行われる。これで、デュラゼイン自身も彼を支持する市民たちも納得するだろうと為政者たちは考え、それは現実のものとなった。
幸せな余生を過ごすデュラゼイン。
だが、裏では恐ろしい計画が進行していた。
実はこの博物館。デュラゼインのAIやセンサーを鈍らせる機能を持つ鋼材で作られている。そして専門知識を持つエージェントたちが、夜な夜なデュラゼインの攻撃力を少しずつ削る工作を着々と進めていたのだった。
これによって、時間はかかるがデュラゼインは力を失う。そこを一気に機能停止させれば良い。また”彼は、戦闘の後遺症で機能停止になった”とでも言えば、最初は多少の抗議もあろうが、移ろいやすい民衆はやがて納得するだろう。
全ては地球政府の思惑通りに進もうとしていた。
ところが、そうは問屋が卸さない。政府の認識以上に進化を遂げたデュラゼインのAIは、ほどなく為政者たちの陰謀を見破ったのである。
激しく怒り悲しむデュラゼイン。
だが、不満をぶつける術がない。腹いせに街を壊せば、それは親しんだ民衆を困らせる事になる。かといって、政府の策略に没するのも納得がいかなかった
ジレンマの中、機能停止寸前に追い込まれたデュラゼインのAIは混乱し暴走する。それは彼に内蔵された様々な機能を劇的に進化させ、更には削られた自己の機能を補完するため、周りの機械たちを融合し始めた。
デュラゼインが吸収した機械たち。それらは博物館の体裁を整えるために、政府が急遽集めたガラクタであり、主に頓挫した研究の試作品の成れの果てであった。
デュラゼインに吸収された廃棄品たちは彼に融合され、その結果自らもAIの複製を得て意思を持つ事となる。
デュラゼインをはじめ、彼らは悲しみと怒りを爆発させた。自分たちを身勝手に捨てた研究者に、政府に、そして果ては人類そのものに。
ここで一つの大きな偶然があった。吸収された機械の中に、タイムマシンの出来損ないが存在していたのである。
もとよりそんな機械が完成するはずもなかったのだが、補助金欲しさの企業が政府高官に取り入り、名目だけのタイムマシン開発が行われていたのだった。
既にわけのわからぬ一体化した機械に変貌したデュラゼインと兄弟たち。そのすさまじい進化と怒りは、取り込んだタイムマシンの機能の一部を一時的に発動させた。そして酷い目に遭った”過去”への怨念が、おぞましい機械に時間を遡らせる。
彼らは過去の地球へと辿り着いた。しかし時空間を漂ったせいで、デュラゼインたちの記憶の殆どは消滅し、ただ人類への怒りの感情のみが、そのおぞましい機械を支配していた。
そして彼らは侵略者、いや復讐のため、地球の消滅のみを本能とする破壊者へと変貌したのである。
もう、おわかりであろう。このおぞましい機械こそが、デュラゼインが命をかけて戦った敵の首領なのだ。デュラゼインに危機が訪れた時に敵の攻撃の手が緩んだのは、過去の自分を倒してしまえば今の自分たちが消滅する事を、タイムマシンの機能の一部が認識していたためであろう。
今、再び凄惨な戦いが始まろうとしている。閉じられた時間の輪が開く事は永遠にない。
【終わり】
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気楽イラスト817のキャプション




