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■ 時と歴史と大佐と記憶

天才的な記憶力を持つ青年。彼がその能力を駆使して、歴史改ざんに立ち向かう。

役所の文書保存課に勤める青年、菅時(すがどき) 理一(りいち)。彼にとって今の仕事は、正に天職といえるものであった。


何故なら彼は、いわゆる”ギフト”として、一度見たり聞いたりしたものを忘れないという特技を持っていたからだ。彼にかかればデータの検索などは、ITをはるかに凌ぐ効率性を発揮する。


しかし最近、理一には大きな悩みがあった。彼は歴史が趣味で、その手の本やデータを山ほど所有している。だがそれらに記されている内容が、自分の記憶とくい違う場合がしばしば見受けられるようになっていたのであった。


自慢の記憶力にも陰りが生じ始めたのかも知れないと理一が落ち込む中、彼の身の回りで、次々と不思議な出来事が起こり始める。


そんなある日、正体不明のSF的な輩に襲われた彼を救ったのは、馬蹄マークの眼帯をつけた金髪の中年男であった。


男は自らを「馬蹄大佐」と名乗り、重大な秘密を理一に打ち明ける。それはおおむね、次のような話であった。


未来において、ついにタイムマシンが開発された。しかしそれを悪用する者たちのせいで、歴史が改ざんされ始めている。


普通は歴史が改ざんされれば、人々の記憶には改ざんされた歴史が”最初からある歴史”として刻まれる。


しかし理一は、とある理由で”改ざんされる前”の記憶を有しているので、記憶違いをしているような錯覚に陥っていたのであった。


とある理由とは、理一が「特異点」と呼ばれる存在である事だ。


特異点は、歴史改ざんの影響を受けない。改ざんのせいで消え去ってしまった、様々な記憶を有し続けていられるのであった。


また理一自身も、改ざんの影響を受ける事がない。たとえば彼が生まれる前に彼の両親のどちらかを殺害すれば、本来、理一は生まれてこないはずである。よって普通ならば、現在に存在する理一は消滅してしまうだろう。しかしたとえそうなった場合でも、特異点である彼は歴史上から消える事はない。


馬蹄大佐は平たく言えば新設されたばかりのタイムパトロール隊の一員であり、理一を隊員としてスカウトしに来たのであった。


大佐の話によれば、隊員は特異点である事が必須条件であるが、何重にも歴史が改ざんされた場合、それまでの歴史全てを記憶しておく事は難しい。公式の記録も、歴史が改ざんされた時点で変わってしまうので役には立たない。そのため、悪の組織にいつも裏をかかれているという。


しかし理一の素晴らしい記憶力をもってすれば、歴史を正しい方向へ修正するのに大変な威力を発揮するというのだ。この「特異点である」事と「天才的な記憶力を有している」事の両方を併せ持つ者は稀有な存在である。現在判明している限りにおいて、二つの力を同時に有する者は、理一の他には悪の組織にしか存在しないらしい。


にわかには信じられない話であったが、タイムマシンに乗せられて時空の旅をした理一は、タイムパトロールの一員になる事を決意する。正義感とは別に、大好きな歴史を自分の目で見られる事にも大いに興味をひかれたのであった。


本来の歴史では、完成するはずのないタイムマシンが作られたのは何故か。馬蹄大佐の言う事は本当なのか。悪の組織が歴史を改ざんする隠された目的とは何か。理一の存在理由と、彼と同じ能力を持つ者の関係とは……。


歴史改変騒動の中、型破りな大佐と生真面目な青年が繰り広げる、謎に満ちたタイムファンタジー、ここに開幕!

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(※ 気楽イラスト804のキャプション)


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