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■ アンノウンの忍者

忍装束の男。記憶のない彼の前に現れた、顔が狼の忍者とオーガーの忍者は……。

男が目を覚ますと、そこは森の深淵であった。男は自らの記憶をなくし、身に着けている服、刀、その他の武器らしきものにも全く覚えがない。


そんな男の前に、突然、男と同じ装束、すなわち忍装束をまとった二人の男が降り立った。


だが、その一人の顔は正に狼であり、もう一人は巨体のモンスター、オーガであった。


驚く男を「ニホン忍者」と呼んだ異形の忍者たちは、男を生け捕りにすべく襲い掛かる。


反射的に身をかわし、記憶がないにも関わらず、刀や手持ちの武器を駆使して応戦する男。だが、そのちぐはぐさに付け込んだ敵の忍者たちは、男を段々と追い詰める。


「生け捕りは無理だ。仕方ないが、殺して連れ帰ろう。なに、司教が屍になったコイツをよみがえらせ、秘密を聞き出せるさ」


狼忍者が叫び、オーガ忍者もそれに呼応した。各々が必殺の忍法を放ち、男に死の危険が迫る。


だがその瞬間、男は青い光に包まれ消失した。とまどう異形の忍者たち。


男が気が付くと、彼は洞窟の中と思しき場所に寝かされていた。穴の中は何故か仄明るく、女性のような、やはり忍者装束をまとった者が、男の傍らにつき添っていた。


「あなたが、助けてくれたのか……?」


起き上がろうとする男の喉元に、くノ一はクナイを突きつける。


「あんたは誰? 佐助の波導を感じるけど、その顔は佐助じゃない」


佐助……、それが俺の名前なのか……。戸惑う男だったが、彼は更に驚くべき事に気が付いた。女の耳は人の耳より遥かに長かったのである。


「その長い耳は!?」


そう口走る佐助に、


「は? エルフの耳が長いのは当たり前じゃない。あんた、本当に誰なのさ!?」


と、怒りがこもった声で詰め寄るエルフのくノ一。


「おぉ、救い出せたようだな」


洞窟の暗がりから、長身の男が近づいてきた。やはり耳の長いエルフ忍者だ。


「リッセル、こいつ”佐助”のようで佐助じゃない。一体、どういう事なの?」


成り行きの一部始終を聞き、リッセルと呼ばれた忍者は、


「ふむ。たぶんこれは肉仮面の術だ。普通は敵地に潜入する際に使うのだが、今回は佐助の正体を隠すため”あの方”が術を施したのだろう。


だが、記憶まで無くしているとは一体……」


と、難しい顔をする。


「どういう事なんだ。俺にもわかるように説明してくれ」


佐助の懇願に顔を見合わせるエルフたちだったが、意を決してこの世界の成り立ちを話し始めた。


この世界は五十年前に新たに誕生した世界であり、幾つもの世界が融合されている様子であった。それが神の意志なのか、魔法の暴走なのかは未だもって不明である。


そして当初、混乱の極みにあったこの世界に、取りあえずの秩序をもたらしたのが「忍者」と呼ばれる存在であった。


最初は「ニホン忍者」と呼ばれる者たちが世界を統治していたが、十年前に反乱がおき、ニホン忍者は絶滅したと思われている。それに代わって、いわゆる剣と魔法の世界の住人たちが、新たな支配忍者として君臨しているのだった。


しかし各種族間の争いはかえって激化し、軍湯割拠の世となっていた。そんな折、絶滅したはずのニホン忍者がいるという噂が立ち、彼らの秘術を手に入れようと、各勢力が血道をあげているのが今の状況である。


その話を聞き呆然とする佐助であったが、頭の奥の奥で、霧に包まれるようにボンヤリと見える風景があった……。


この混沌とした世界は、なぜ誕生したのか。男は本当に伝説のニホン忍者なのか。そして、この争いの世はどこへと向かうのか。


剣と魔法の世界の住人たちが侍や忍者に扮し活躍する、異色の時代ファンタジー活劇、ここに開幕!


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