■ ファンタジーの巣
日本の若きサラリーマン、聖野 空馬。
彼は市井の者と同様に、世の閉塞感にウンザリし抜け出したいと思ってはいるものの、現実的にはいかんともしがたい日々を欝々と過ごしていた。
そんな空馬の元に、知らない弁護士名で一通の手紙が届く。それによれば彼の祖父が死亡したので、その遺産を引き継ぐ気があるかどうかという内容だった。
遺産というのは、欧州某国の森に存在する邸である。
空馬は一人っ子の上、両親は既に他界しており、祖父についても「世界中を飛び回っている変わり者で、生きているか死んでいるかもわからない」という話しか聞いてはいなかった。
ちょうどその頃、空馬の会社ではリストラの嵐が吹き荒れており、若い社員ですらその標的となっていた。一念発起した彼は、同僚の代わりに自らが退職し、その某国へと向かう。学生の頃、その国へ短期留学していた経験があり、日常会話程度なら言語を習得していた事も彼の行動を促した。
空馬は空港で待ち構えていた弁護士と問題の邸へと赴き、ひと月程度住んでから結論を出すという運びとなる。
しかし一週間もしない内に、彼は悪い噂を耳にするようになった。それは「あの森には、化け物が出没する」という噂である。よくよく尋ねると、化け物とはファンタジー物に出てくるようなモンスターや亜人という話であった。
実は彼も怪しい影を何度か見ていたが、正体を突き止めるには至っていなかった。そんな或る日、町へ買い出しに出かけた帰り道、空馬は森でリザードマンと遭遇。襲われかけたが、空馬の顔をよく見たとかげ男は、驚いたように踵を返して森の中へと消えてしまった。
邸へ戻り「こんな森、一刻も早く出て行こう」と決心して荷物をまとめていると、地下室の方からドヤドヤと音がして、彼は正にファンタジーのキャラクターというべき輩たちに取り囲まれてしまった。
いざとなると、空馬は異常なほどに肝が据わる。これは祖父譲りのものであった。代表して話し始めたエルフの言い分を聞くと、だいたいは以下のようなものであった。
「かつて世界は、人と亜人、モンスターが共存していた。だがある時、それらを分かつ魔法が発動され、人だけが地上に残り、他のものは地の底にある異空間に封じ込められてしまった。
そしていつしか我らは、架空の存在としてのみ人間の記憶に残った。だがその魔法を解き放つカギの一つをあなたの祖父が手に入れて、ごく一部ではあるが我らを解き放ってくれた。そして我らの話を信じ、受け入れてくれた。
我らはあなたの祖父に感謝をし、彼と彼が指定した後継者に忠誠を誓うと約束した。
もしあなたが後継者となる事を拒否すれば、我らは盟約により再び地の底へ帰らねばならない」
空馬は戸惑ったが、受け継いだ邸の下にある異空間を「ファンタジーの巣」と名付け、彼らと新しい世界の在り方を模索していく事を決意する。
だが……、ファンタジーの巣は一つだけではなかった!
現代社会によみがえるファンタジーの住人たち。彼らと現人類が行き着く先とは? 空前絶後の新ファンタジー、ここに降臨!(しないと思う)




