■ 大江戸 千夜一夜物語
花のお江戸に現れた、ご存じアラビアンナイトの指輪の精。これが、ハタマタご存じ江戸の変人、平賀源内の手に渡り……。
ご存じ江戸の発明家、平賀源内。
五十路の坂を超えた源内は、知り合いの古道具屋から奇妙な一品を見せられた。
それは長崎帰りの医者が持ち帰ったという異国の指輪で、かの地への留学費用の借金返済のため、泣く泣く手放した品だという。指輪をいたく気に入った源内は、その指輪を半ば強引に古道具屋から買い取った。
自宅に戻り、酒を飲みながらしげしげと指輪を眺める源内だったが、やがて自らの指にそれをはめてみて、なおかつ指でこすってみた。
すると、どうだろう。指輪から淡い光を放つ煙がモクモクと立ちのぼり、その中から青い肌をした異国の豪傑風の男が現れたではないか。
驚く源内に、青い肌の精霊は「ご主人様、なんなりとご命令を」と慇懃無礼に言葉を発する。聞くところによれば、彼は指輪の精霊ジンで、持ち主の命令を出来る範囲で叶えるという。
肝っ玉が太く不思議な事が大好きな源内は、時が経つにつれ、心は驚きから興味へと移り変わっていった。
それから源内は、小さな事から様々な命令をジンに下し、その結果に満足していく。
だが、ジンの心は違った。彼は指輪の契約上、源内に従っているだけで、それは正に機械的な行動に過ぎなかった。それどころか自分が極東の小さな島国にたどり着いてしまった現実を嘆き、そこの原住民にいいように使役されている事を大いに憂いていたのである。
しかしそんな心は微塵も表には出さず、彼は慇懃無礼に源内へと従い続けた。とある計画を胸に秘めながら……。
指輪の精霊と主人の契約は、指輪を手放す以外にも、一定の条件が整った時、契約を解除できる仕組みになっていた。ジンは源内にその条件を知らぬ内に果たさせるよう、様々な策をめぐらしていく。
そんなある日、源内は彼を疎む存在の企てにはまり、人ふたりを傷つけ殺した無実の罪で投獄されてしまう。
喜び勇んだのは、ジンである。指輪の持ち主が処刑されたり獄死でもすれば、自分は無条件に解放されるからだ。しかし源内は、全てを見通していた。ジンの計画の事も、彼が密かににほくそ笑んでいる事も。
自らが死の淵にいるにもかかわらず、ジンの行く末を考えている源内に、ジンは強く心を打たれた。今まで使えた主人はみな、彼を便利な奴隷程度にしか扱わなかったからだ。自らが解放される事しか眼中になかったジンは、源内がまるで同等の友人の如く自分に接していた状況にも全く気が付いていなかったのである。
ジンは、自らの不明を大いに恥じた。そして「真の契約」を交わす事を申し出る。
真の契約とは、単に指輪をはめている間だけ主従関係を結ぶのではなく、その者が寿命で死ぬまで只一人の主人とするものであった。精霊は、主人が寿命以外で死ぬ事態を最大限の努力で防ぎ、それが叶わぬ時は主人と供に消滅するという内容も含まれている。
源内と真の契約を交わしたジンは、源内の提案で、偽の死体を牢内に残し脱出する計画を実行した。そして死んだはずの源内が町をうろつくという事態を避けるため、彼を二十歳に若返らせ、別人として新たな人生を共に歩んでいく事となる。
真の契約を交わした精霊は、その発揮できる力も大幅にアップするのであった。ちなみに契約の儀式の一環として、ジンは源内に新たなる名前「ジン太」を与えられる。
順風満帆に思えた源内の第二の人生であったが、彼の身の回りに次々と危険な出来事が起こり始めた。ジン太の言うには、そもそも源内を罠にかけたのも、幕府の重臣に深く取り入っている日本の精霊、この国の言い方で呼べば「妖怪」の差し金であり、源内たちの秘密の脱出を知った彼らが、源内を改めて抹殺しにかかっているという。
日本が妖怪に占領されかけている事態を知った源内は、信頼できる仲間を集め、彼ら及び忠臣ジン太とともに日本を守る決意をかためた。
源内を亡き者にしようとする妖怪たちの目的とは何か。指輪の精霊ジン太を上回る力を持つ、ランプの精霊とその主人とは何者か。そもそもジン太の指輪が遥か日本へやってきた隠された経緯とは何か。
西洋モンスター、日本妖怪、陰陽師、僧侶、そのほか諸々のキャラクターたちが、極東の小さな島国で繰り広げる奇想天外な大江戸ファンタジー、ここに降臨!
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気楽イラスト806のキャプション




