第95話 真相
タカシは引っ越しで忙しそうな三人を残して外に出た。レインに感情的に言いがかりをされ、よくわからないままギアス契約をしてしまった。矢継ぎ早に話が進み、情報の整理がつかずにいた。
馬に跨り、セルマを探した。獣人族たちと話をしているところを見つけ、聞きたいことがあると連れ出した。
「レインがディオス男爵の愛人だと知っていたか?」
セルマは一瞬、罰が悪そうな表情を見せた。
「その話題ですか……どこでそれを?」
「もちろんレインからだ。彼女が言うには、領民全員が知っているそうだ」
「領民全員というのは大袈裟ですが、知っている者は多いようです」
セルマが知ったのは、ゴブリン大規模集落討伐の時だった。ゴブリンに拉致されていた被害者女性たちを馬車に誘導していた時、突然大声を上げて馬車とは反対方向に逃げ出した者がいた。それがレインだった。セルマには、レインがアーナスを見て取り乱し逃げ出したように見えた。そこで、アーナスには自分たちが知らない重大な事情があるのではと考え、調べた。背景を教えてくれたのは意外にも、目つきの悪いメイドのイーアスだった。イーアスはセルマの動きを察知し、変に疑いをかけられるよりはと全容を話してくれたのだ。
Bクラス魔法使いのレインは、Sクラス冒険者ディオスに憧れてディオス領にやってきた。ディオス男爵は元Sクラス冒険者ということもあり、自ら陣頭指揮を執って領地開拓を行っていた。ディオスに憧れるレインが出会うのは必然だった。開拓の人手はいくらあっても足りず、魔法を使えるレインは重宝された。二人は打ち解け、一緒に行動することも多くなり、信頼関係はすぐに男女の関係へと発展した。二人の関係は、開拓を共にする騎士団や開拓民たちの公然の秘密になっていた。騎士や冒険者、開拓民など危険度の高い最前線で働く者たちにとって、二人の関係は些細なことでしかなかった。
状況が変わったのは、レインが妊娠して開拓メンバーから外れた頃だった。当時の騎士団長は、まだ生まれていないレインの子供に目をつけた。レインは子爵家の娘で魔法使い、その子供は魔法が使える可能性があった。さらにSクラス冒険者ディオスの子供でもあるため、鍛えれば有能な騎士になると考えたのだ。当時アーナスも妊娠しており、騎士団長はレインの子供をアーナスの子供の従者にと考えた。ディオス男爵家への忠誠心からの考えだった。




