第93話 教会とは
小さい家の寝室で、激しく交差していた体が離れた。リオンはぐったりとして息は荒く、体は小刻みに震えていた。タカシはそんなリオンを観察しながら、形の良い胸を優しく掴む。リオンは息を整えようと大きく深呼吸するが、しばらく時間がかかりそうだ。その様子を可愛いと思いながら、掴んでいたリオンの胸を放し、背中に回して抱き寄せた。
タカシはリオンが落ち着くのを待って、教会のことについて質問をした。しかし以前教会で聞いた時と同じで、聖者のことは詳しくないとのことだった。それは教皇についても同じだった。アーナスから教えてもらった、教皇には三つのクラスがあることもリオンは知らなかった。初級から中級の神聖魔法の知識をホープよりも多少知っている印象だ。
「教会では、どのような修行や勉強をして神聖魔法を覚えるんだ?」
「神様について考え、毎日の祈りや奉仕活動を通して近づくことです」
「え?神聖魔法としては、教わらないのか?」
「神聖魔法は神様に認められると使用することができるので、教わるものではないですから……。タカシ様もそうでしょう?」
「確かに……」
ここで、タカシは疑問を持った。レベルという概念はあるのか。神聖魔法は神を感じることで使えるようになる以外に、影響を与える要素はないのか。モンスターを倒して経験値が貯まりレベルが上がる、そういったもので変化はしないのか。もしかするとレインから教わっていた魔法も、レベルという概念がないから使えないのか。
魔法の習得は体内の魔力を探すことだった。これは神を感じ近づくことに似ているとも言える。つまりレベルという考え方はこの世界にない?
しかしここで、戦士としてダンジョンに入り剣が上達していったことを思い出した。レベルとそれによる能力の大幅な上昇は確実にある。そうでなければ、サーベルボアやゴブリンジェネラルを倒すことは不可能だ。
タカシはこの世界にステータス画面がないことにいらついた。ステータス画面さえあれば話が早く、悩むことも少ないはずだ。鑑定やアイテムボックスも、標準スキルでついてもいいだろうと続いた。ジョブや転職ができるシステムも……。
タカシは神への恨みが強くなりそうだったので、感情を抑えた。折角授かった聖者の能力を失うのを恐れたからだ。全ては、説明を聞かずに異世界のゲートに飛び込んだ自分の自業自得だと納得した。
リオンは、教会では神聖魔法の担い手としてどう振る舞うか、一般人との接し方などを厳しく教わると語った。一番の軸になる考え方が「神聖魔法を使った場合は対価を受け取る」というもので、それが自分を含め教会関係者全員を守ることに繋がると教わった。この考え方は、いくつもの具体的なエピソードを通じて理論補強もされた。ただし例外もあった。貴族からの要請や、自分に直接的なメリットがある場合など。また教会を運営するにあたり、最低限の魔法行使は奉仕活動として行うというのもあった。
タカシは例外の範囲の広さに、ボランティア活動に傾倒しすぎて身を滅ぼさないようにという戒めが根底にあるのだと感じた。
また、ゴブリンの被害者への対処の仕方や、疫病・飢饉などへの対応も一応教わるとのことだった。リオンは思い出したように言った。「神聖魔法を使える者が現れた時の対応も教わります。二人以上の僧侶による確認と、教会本部の面談があります」
タカシは一瞬で体が熱くなり、強めの声で言った。
「大丈夫だと思うが、俺が聖者なのも、神聖魔法を使えるのも内緒だ。これは絶対だ」
リオンは「はい」と言って、タカシの腕にしがみつき、ギアス紋に押し当てるのであった。




