第91話 交渉
ホープが幹部入りした翌日の朝、アーナスから呼び出しがあった。
アーナスは王都で外交を行うため、しばらくディオス領を留守にする。護衛の騎士と兵士を多数連れていくので、辺境騎士団に領地の半分まで巡回を行ってほしいとのことだった。現在、ディオス領から王都までの道のりは治安が悪化しているらしく、多めに兵を連れていく必要があった。
王都では、グランスから提案してもらった戦場への食糧補給を請け負うため、第二王子と交渉するのが目的だった。ついでに外交を行って存在のアピールと情報収集をしてきますと、アーナスは笑った。
巡回範囲の変更をタカシが快諾した後、タカシにとって嬉しい話もあった。タカシが提案した、怪我をして働けなくなった獣人奴隷の下取りを、第一王子に進言してくれるとのことだった。
ただ、第一王子は敗戦で負傷し、その後一度も表舞台に姿を現していない。アポイントは取れておらず、直接話ができるかはわからない。代行との交渉になるだろうとのことだった。
「タカシ殿が個人的に奴隷を購入するのであれば、ディオスの名前を出しても構いません。そうすれば奴隷枠を気にせずに買えます。ただし、獣人は犬人族と猫人族限定にしてください」
タカシは一瞬笑顔になったが、すぐに考え込んだ。
「俺は……前回の奴隷購入時に無茶をして悪目立ちをした。今回はディオス領に残ろうと思う。代わりにグランスさんに買い付けを任せられないか、頼んでみるよ」
「一緒に旅ができると楽しみにしていましたが、仕方ないですね」
アーナスは残念そうな表情を浮かべるのであった。
メイドのイーアスから「魔物の素材や魔石などがあれば、すぐに冒険者ギルドで換金してください。一緒に王都に運びます」と業務連絡のような催促があった。
アーナスとの会談後、タカシはグランスと王都での獣人奴隷購入について交渉した。
「条件として、奴隷一人につき銀貨百枚の手数料をいただきます。アーナス様と一緒にディオス領に運ぶことになります。購入してすぐに運べない分、費用がかさみます。それと、できれば僧侶を手配してください。状態の悪い奴隷は長旅に耐えられないので……何かあっても補償できかねます」とグランスは困った顔で話した。
タカシは拠点に戻り、僧侶のホープにグランスに同行して王都での奴隷購入に付き合ってほしいと話した。ホープは不安な顔をしたが、交渉その他はグランスが行うため、奴隷の健康管理だけしてほしいと説得した。ホープの護衛として仲の良い元冒険者奴隷を同行させることで、ホープも納得した。
二日後、アーナスたちは王都に向かって旅立つのであった。




