↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

90/96

第90話 聖者の力


翌日の夕方、幹部会議を行った。タカシよりホープが幹部に加わったと説明され、ホープが挨拶をした。ホープは緊張で声が小さく早口になっていたが、皆に拍手で迎え入れられた。ホープの幹部入りは、タカシとシャロン、セルマで話し合い、従属契約の僧侶を軽く扱えないという判断から決まった。


次に、タカシが大規模農法による輪作の説明をした。輪作とは一年おきに作る作物をローテーションで替えていく農法で、収穫量が増えて安定するとして説明された。実はタカシ自身も輪作に詳しくなく、前世の記憶で効率的な農法というイメージを覚えているだけだった。そのため説明は簡単なものになった。


「今年は、ミナタカ村は小麦、ニラム村はジャガイモ、アルニタク村はクローバーを育てる。翌年はミナタカ村はジャガイモ、ニラム村はクローバー、アルニタク村は小麦と一年で替えていく。一年目に小麦を育てるミナタカ村は、開墾作業を丁寧に行ってくれ。ニラム村で育てるジャガイモを皆は知らないと思うが、土地を選ばず育てやすい作物だ。今年は時間がなければほどほどの開墾でいい。アルニタク村はクローバーを育て、牛や馬などを放牧したいと考えている。まずは柵などを地道に作ってくれ。家畜はまだ少ないから、ここは後回しでもいい」


タカシはグランスから購入したジャガイモや珍しい作物の種を直接見せて説明したが、ジャガイモの第一印象はやはり悪いようだ。皆の言葉がなくなった。次に見せたトマトは人気で、美味しそうという笑顔と共に感想が出ていた。大規模農法に向かない小さな畑は、シャロンが中心で管理することになった。キーシャは畜産の責任者になった。


「今まで家畜の糞はどうしていた?」


「どうしてたと言われても……」カリンは戸惑いながら呟く。「放置?特に何もしてないです」


「今後は堆肥作りのため回収して、藁や枯葉と混ぜて熟成させてくれ。農業には堆肥作りが大事だ。ここハチヤ村を家畜を育てる中心的な村にする。そのため堆肥作りも、ここが中心になると考えてくれ」


「今までの冒険者家業とは仕事内容が大きく変わるが、皆で協力して慣れていこう」とセルマが皆を励ます。


「今日の会議はこれで終わるが、俺と従属契約をしている者は残ってくれ。他の者は一旦家から出てくれ」


キーシャとコリンは戸惑った。今まで従属契約を持つ者を優遇することはあったが、していないからといって退出させられることはなかった。二人は疎外感を感じながら家を出るのであった。二人が退出したのを確認してタカシが話し始めた。


「キーシャとコリンには申し訳ないが、なるべく知っている者を少なくしたいから退出願った。そのため、皆もこれから話すことは絶対に口外しないでくれ。俺は神聖魔法が使えるようになった」


皆からどよめきが起きた。特にセルマが感動しているようだった。


「辺境騎士団となる俺たちには、ホープと俺、二人の僧侶がいることになる。本来、僧侶は教会に所属するため教会の都合に振り回されることがあるが、俺たちはそれがない。その分、他の騎士団や傭兵団に比べ優位に立てる」


セルマが続けて話した。「冒険者パーティーの中で僧侶は、仲間意識が低い傾向があります。教会の後ろ盾が大きく、仲間よりも教会を優先する考え方をします。教会に縛られない二人は特殊な存在で、我々は恵まれています」


皆の顔が明るくなった。


「ここからが本題なんだが、どうやら俺は聖者らしい」


皆が一斉にタカシを見た。しばらく沈黙の後、メグが質問した。


「タカシ様、聖者とは何でしょうか?」


「まあ、王国で最強レベルに有能な僧侶ということだ」


ホープはタカシが聖者だと気づいていなかったようで、驚きのあまり放心状態になっている。


「聖者と世間に知られれば、俺はここにいられなくなるだろう。俺がいなくなれば、皆にも大きく影響が出る。そのため、俺は聖者の力を積極的に使うつもりはない。それを理解してほしい」


「使う時は、どのような状況ですか?」セルマが間髪入れずに質問してきた。


「そうだな……今まで、回復魔法を使用しなくても何とかやってきた。そこにホープが仲間に加わった。さらに教会のリオンもいるから、使わない前提だ。聖者の力を使う時は、ここにいる従属契約している者しかいない時か、身元がバレないと俺が判断できる時だな」


「お母さんや、コリンは……」カリンが青ざめながら呟いた。


「カリン!」セルマがカリンを諌めるように名前を呼んだ。


「もう一度言うが、今まで回復魔法がなくてもやってこれた。そこにホープが仲間に加わったことでリスクが大幅に減った。聖者の力は奥の手だ」


会議は微妙な空気のまま解散になった。いつもは会議が終わっても数名が残り談笑するのだが、それもなく皆が無言のまま去り、シャロンとタカシの二人だけが残った。


「タカシ様、聖者の力は知らせる必要がなかったのではないでしょうか?」


「ああぁ……、そうかもしれない」


タカシは(俺は聖者の力を隠したいと言いつつ、実際は大勢に話して自慢したいのでは?)と悩むのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。