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第84話 祈り


タカシはホープとの従属契約を終え、教会からホープ用にシスターの服を買った。ホープは質素な村娘の服からリオンと同じシスター服に着替えて拠点に戻った。


幹部には知らせていたが、他の者はホープがシスター服を着ていること、奴隷の首輪が外されていることに驚いた。ただ、ゴブリンの被害者だった者たちは経緯を知っていたようで、「おめでとう」や「良かったね」など喜びの言葉を伝えていた。


ホープには他の従属契約を行っている者には見られなかった変化があった。従属契約以降、タカシは頻繁にホープを抱いたが、ホープは以前よりも明らかに積極的で感じやすくなっていた。それは徐々に普段の表情にも変化をもたらした。感情豊かによく笑うようになっていたのだ。タカシはそんなホープの変化を心地よく思い、ホープと過ごす時間が増えていった。


タカシは毎朝ホープと一緒に神に祈り、学んだ。ただ学問というよりは、普段の僧侶としての行いや祈り方、教会で教わった作法などをホープのあいまいな記憶の中からこんなことを言っていた、という程度の内容だった。タカシはホープへの欲情を微妙に抑えながら、真似をするように学んだ。


神聖魔法は他の魔法とは違い、朝の祈りによってリセットされる。一般的な魔法の場合は魔力を消費して魔法を行使する。魔力は時間経過で自然回復し、消費した分が溜まれば再び魔法が使えるようになる。神聖魔法の場合は、毎朝の祈りで神から魔法を授かる。その時に使える魔法の種類とその回数が決まる。例えばヒールが一日三回ならば三回使い切るまで、翌朝の祈りまでヒールを使うことはできない。祈りを終えれば、またヒールが三回使えるようになる。


ホープとの祈りの時間ができたため、レインとの魔法学習の時間は夕方に変更になった。タカシはトラブル対応に、畑拡大の陣頭指揮、各作業の確認などで大忙しだった。特に防衛線構築にはタカシ流のこだわりがあった。セルマが行っていた村の防御力を上げるやり方ではなく、魔物を狩り場に誘い込む、そんな構想をセルマと話し合っていた。それらが終わってからレインに魔法を教わる時間になると、タカシは疲労のために集中力を欠いてしまっていた。レインは不満に思っていたが、タカシの忙しさを知っているため口には出せず、タカシをねぎらうのであった。


そんな忙しい毎日を過ごし、ホープの従属契約から十日が過ぎた。


朝の祈りの時間、タカシはホープにちょっかいを出しながら、神について質問をするのであった。神とは具体的にどのような名前でどのような容姿なのか。教会では、シンボルである二重丸に十字が入った物に祈るが、神の像などはなかった。具体的な神については、それぞれの心に問う。神のことを考え祈れば神に近づける。そんな雲をつかむような教えだった。


そんな中で、タカシはずっと気になっていたことがあった。自分を異世界転移させた白い衣をまとった男、エルフィスオンに祈れば恩恵があるのではないか。エルフィスオンこそが神ではないのか。そう考えていたのだ。


タカシはエルフィスオンと出会った、床も天井もなにもかもが真っ白な空間を思い出した。そこで出会った白い衣のエルフィスオンを思い浮かべながら祈ると、タカシの思考は急に真っ白になり、脳髄が揺れるような感覚の後、神聖魔法の情報が一気に降り注いだ。タカシは頭脳をハッキングされたような感覚と、その後にくる溢れんばかりの情報と強い多幸感に包まれた。


時間の感覚が失われ長かったのか短かったのかわからず、タカシはホープを探すように横を振り向いた。ホープがまだ祈りを行っているのを見て、神と繋がった時間は極端に短いのだと気づいた。タカシの中には、はっきりと神聖魔法が宿っている感覚があった。


ホープが祈りを終えると、タカシはホープにヒールの魔法をかけた。ホープは怪我をしていないが、神聖魔法が使われたのは感覚でわかったようだ。ホープは信じられないといわんばかりの顔でタカシを見た。タカシはドヤ顔の笑顔で見返した。


そしてタカシは大勝利を確信し、大笑いするのであった。それはタカシの人生の中でここまで笑ったことがないほどの、腹を抱えての笑いだった。ホープはそんなタカシを見て少し引いていたが、タカシは気にならなかった。なぜなら、ヒールだけでなく多くの神聖魔法がタカシの中に宿っていたからだ。タカシはやっと、異世界人としてのチートにありつけたのだった。


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