第79話 真昼の決闘②
タカシは騎士という言葉に、思わず眉をひそめるのであった。
「タカシ殿とセルマ殿を永代騎士に、タカシ殿と従属契約を行っている者を一代だけの騎士とし、他の獣人族や冒険者、自警団を含め全員を辺境騎士団として、魔の森一帯の領地を任せたいと考えています」
「え?!カリンやミオ、メグは獣人族だがいいのか?」
「はい。会議や式典などはタカシ殿かセルマ殿が出席し、獣人たちは魔の森防衛を専属で行い任地から離れなければ、他の者に騎士団の中身を詮索させません」
獣人族をディオス騎士にするのは、獣人族を認め迫害しないことを意味している。決して悪い話ではないと、タカシは思わず前のめりになった。
「報酬……給金というのか?それはどれくらい貰える?」
「魔の森に面している放棄された五箇所の村をそのまま任せますので、そこで農作物を育てるなどして生活に当ててください」
「待ってくれ!いきなり収入がなくなるのはさすがに困る。買い揃えたい装備もある」
「それでは一年だけ今まで通り農作物を届けましょう。一年以内に自給自足ができる状態になってください。五箇所の村々です、かなり条件は良いはずです」
「そうかもしれないが、俺たちは冒険者だから……」
「タカシ殿!私を、第三王妃の娘アーナスを抱いておいて、いつまでも自由気ままな冒険者でいたいというのは虫が良すぎませんか?ディオス領は財政が逼迫しているのです」
アーナスを抱いたことを引き合いに出され、タカシは黙ってしまうのであった。
「放棄されたといえ、最近まで数百人が住んでいた村々です。ゼロから開拓する必要がないので、再建は楽なはずです」
渋々納得するタカシであったが、獣人族を連れていく当てがない時点で拒否できないという結論は出ていた。
「騎士になれる者だが、俺と従属契約している者というのは、奴隷でもいいのか?」
「従属契約はタカシ殿とギアス(奴隷紋)を結んでいる者で、奴隷契約は駄目です」
「それは俺とギアスを結んでいれば、何人でも騎士にできるということか?」
「基本的に従属契約をしていれば、何人でも構いません」
「レインはどうする?現在は奴隷だが、元ギルドマスターでAクラス魔法使いだ。教会に行くのを拒否してまでディオス領に残った。忠誠心はあると思うのだが……」
「教会に行くのを拒否したのは、レインではないです」
「え?!じゃあ誰が拒否したんだ?」
「それは……心変わりをして教会に行きたいとなるかもしれません。誰かは言えません」
タカシは、被害女性の中で教会行きを拒否しそうな人物を思い浮かべたが、わからなかった。シャロンやセルマ、キーシャからも、該当しそうな人物や背景を聞いたことがなかった。被害女性の冒険者の中からレインを除いた三名の可能性が高いが、誰だろうと思いを巡らすのであった。アーナスはタカシ殿とギアス(奴隷紋)を結んでいる者のみという、騎士になれる条件を再度説明した。
「俺が、アーナスを裏切りディオス領を乗っ取るとは思わないのか?」
「タカシ殿に裏切られるとは思わないですね」
アーナスはベッドの上で膝立ちして下腹部を擦り、微笑んだ。
タカシはアーナスの懐妊に言葉を失った。本来なら喜びや感謝の言葉が出るはずだが、タイミングのせいか何も言葉が出なかった。アーナスは気にする様子もなく話を続けた。
「自活できるまではみなし騎士で、公表はしません。魔物討伐依頼は公表できるまでそのままにしますので、運が良ければBクラス冒険者になり箔がつくでしょう。ただし、みなし騎士なので依頼報酬は出しません。冒険者ギルドから出ている特別報酬の金貨十枚も接収しますので、早く自活できるように頑張ってください」
アーナスは冒険者ギルドから出ている特別報酬を知っていた。タカシは手から金貨がこぼれ落ちていく状況に絶望するのであった。




