第78話 真昼の決闘
ティアーナが戦地に戻って五日後、アーナスからタカシに呼び出しがあった。呼び出された場所はディオス邸ではなく、村の統廃合で新たに放棄された小さな村だった。領軍が戻り、領主邸への来訪者が増えている。タカシとの関係が知られるのを防ぐため、今後はこの村で会合を行うことになった。
昼過ぎ、タカシが村に到着すると、元村長の家の前に貴族用の馬車が止まっていた。馬車から降りたイーアスがタカシを出迎え、アーナスが中で待っているとだけ伝えて馬車に戻った。
元村長の家に入りアーナスを探すと一階には姿はなく、二階に上がった寝室でアーナスを見つけた。寝室の窓は閉ざされ、魔道具のランタンの灯りが部屋を妖しく包んでいた。タカシが寝室に入ると、甘い香の匂いが鼻腔を刺激した。アーナスは小走りで近づき、挨拶もせずにタカシを抱きしめてキスをした。タカシもまた、そんなアーナスの細い腰を抱き寄せ、ベッドへと向かうのであった。
タカシはいつもとは違う積極的なアーナスとの激しい戦いを終え、そのまま眠った。目が覚めると、胸の上で寝ているアーナスの姿があり、これ以上ない満足感をかみしめた。会心の一撃——そんな言葉がぴったりの一戦だった。全てを出し切り、軽くなったはずの腰が重く感じるほどの疲労感があったが、それも心地よく、歴史に残る一戦だったと振り返るのであった。タカシが目覚めてまもなく、アーナスも目を覚ました。タカシは彼女の髪を優しく撫で、アーナスの温もりをしみじみと感じていた。
冗談交じりの感想戦が行われ、アーナスも満足していることがわかりタカシは安心した。そしていつものように、ディオス領の内政の話へと流れていった。タカシがディオス邸に近寄れなかった間に、騎士団の再編が行われてティアーナが騎士団長になったこと、副団長も新たに任命されたことが説明された。
「今後は騎士団によって、領内の治安維持を行う体制ができました」
「ん?!」
「今月で、魔物討伐依頼の終了を考えています」
タカシは目の前が真っ暗になるような衝撃を感じた。気を取り直そうとするが、すぐには頭が回らない。タカシの冒険者チームは大きく膨れ上がり、獣人族だけでも四十三名いた。依頼終了と言われても、帰る場所の当てなどなかった。
「ディオス領の治安維持のために仲間を増やした。今月で依頼終了と言われても行く当てなどなく……」
「感謝はしています。しかしディオス領の財政は厳しく、継続は難しいのです」
二人の間に沈黙が流れ、アーナスがそれを破った。
「タカシ殿、良ければディオス騎士になりませんか?」
「ディオス騎士……」
「タカシ殿がディオス騎士になるのであれば、破格の条件を出すことができます」




