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第77話 帰還


イーアスがタカシに告げた日から三日後、領民にディオス軍の帰還が告げられた。そしてその二日後に帰還兵が到着した。ティアーナを先頭に栗色の髪の従者、リオンの母親のシスター・セシリア、そして騎士が続き、その後に正規兵、民兵、負傷者を乗せた馬車が続いた。


帰還兵の数は当初の予定よりも少し増えていた。帰還兵たちは街に入ると、待ち望んでいた家族と再会を果たした。兵士もその家族も、無事に再会できたことを心から喜び涙した。敗戦の兵ではあるが、男のいなかった街には活気が戻るのであった。しかし出兵前と比べれば明らかに閑散としていて、敗戦の傷跡の深さを物語っていた。


帰還兵には一時金が、戦死した家族には弔慰金が支払われた。報酬に関しては五年間の分割払いで支払われると説明された。廃村になった十七の村の出身者には廃村になった経緯が説明され、戦死者の多かった村に割り振られ、住む家が与えられた。


アーナス夫人はすぐに騎士団の再編を行った。騎士は十二名が生き残っていたが、そのうち半数の六名が怪我の後遺症のため引退した。


騎士には、一代だけの騎士と領地を与えられた永代騎士がいる。領地を与えられた永代騎士は、わかりやすく言えば騎士兼村長だ。村長として村を仕切り、税収で生計を立て、子々孫々領地を守る役目を担った。永代騎士の家族は、祖父が元騎士で、子供が騎士見習いや従者、村の若い衆が半農半兵になり、中小貴族の戦力を下支えする重要な役割があった。しかし今回の敗戦で、多くの騎士家が先代・当代・次代を失った。


アーナスは永代騎士を五十名揃えたいと考えていた。ティアーナと戦地に向かった三名、生き残った六名で九名の永代騎士が現存する。そこに、戦争で生き残った騎士見習い十四名を騎士に昇進させ、永代騎士は二十三名になったが、目標には遠く及ばなかった。


残り二十七名の確保を、イーアスと娘のティアーナと共に考えるのであった。他領の騎士見習いを紹介してもらう案も出たが、弱みを見せたくないとして排除された。シスター・セシリアやシスター・リオンを騎士にできればいいのだが、彼女たちは教会に所属している。冒険者パーティーに入ることはできても、貴族の臣下になることはできない。仲間にはなれても、配下にはなれないということだ。教会関係者が従うのはあくまで神のみという建前があった。


正規兵の中から永代騎士に叙勲できる者を探したが、難航した。永代騎士には村長としての役割もある、力自慢だけではなれなかった。騎士として武力以外に人格や教養、さらに家族構成も重要で、一般兵士にそれら全てが都合よく揃うのは不可能に近かった。そこで、戦争で当代と跡取りの騎士見習いを失った家族に、騎士としての素養がある者を婚姻や養子縁組でつなぎ、十八名の永代騎士を作った。さらに、永代騎士の子供で戦争に参加できなかった幼い男子や女子九名をみなし騎士として無理やり五十名の永代騎士を揃えた。みなし永代騎士には、生き残った当代や引退した元騎士が、成長するまで手助けをすることになった。


新たな騎士団長にはティアーナが任命された。副団長は、生き残った六名の騎士の中から選ばれた。


次に、人口が減って存続が危ぶまれる村の統廃合が検討された。戦争によって多くを失い、人口五十人未満になった村々の統廃合が議論された。少ないからといって無秩序に統廃合をすれば、領地に村のない空白地帯を作ることになる。しかし均等に村を配置するには予算と人材が不足した。そのため自然消滅が確実に起こりそうな村や、働き手が極端に少なくなった村に限定して統廃合を行った。結果として少数の統廃合しかできず、過疎村問題を先送りすることになってしまった。


「お母様、ディオス領はどれくらい財政が厳しいのでしょうか?」


「騎士の馬を売りたくなる程度かしら……」


ティアーナは何も言えなくなった。


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