第73話 被害者の行方
タカシはセルマに、アーナスからの提案を相談した。
セルマによると、本来はゴブリン討伐から被害女性の処遇まで一連の対応が決まっていて、被害女性は教会に連れていくことになっているとのことだった。それは問答無用に行われ、被害女性の許可や意思を確認する必要もなく、当然のように教会行きの馬車に乗せられる。その後、女性たちがどうなったかはわからないとのことだった。アーナス領主代行とシスター・リオン、両者とも経験が浅くかつ女性のため、被害者女性の意見を聞き入れたのではないかとのことだった。
「拉致されていた冒険者四人は、巡回から戻ってこなかったCクラスとDクラスの冒険者だと思います。戦力補強になるので悪い話ではないように感じます」
被害女性がなぜ教会行きを拒否したのかはわからないとのことだった。
タカシはシスター・リオンに理由を聞いた。
「なぜ俺なんだ?そして奴隷なんだ?」
「元々、女性が一人で生きるのは難しい世の中です。そこにゴブリンに捕まっていた過去が加わり、厳しい差別を受けます。冒険者にはそういった差別は少ないと聞きました。アーナス様もタカシ殿なら気にしないだろうとおっしゃっていたので……」
「まあ、獣人族も多くいるし、元奴隷ばかりだから俺のところは特に差別は少ないかもなあ……ただ俺は抱くぞ」
リオンによると、教会が被害女性にとって必ずしもベストな選択肢とは言えない事情があるとのことだった。教会は神に奉仕をする場所、または修行をする場所のため、成人女性がいきなり入ると適応できずに辛い思いをする場合もあるとのことだった。また、一度入ると簡単には抜け出せない。出入り自由というわけにはいかないとのことだった。
そして教会では、男女が関係を持つことは表向きは禁じられているが、絶対にないとは言えなかった。男女の関係が禁止される理由は、教会内の風紀が乱れること、修道士の役目から外れる行為とされているからだった。しかし、三つの可能性があった。
一つは、隠れて恋愛をする者がいること。男女はなるべく距離を置くようになっているが、どこかで出会い、行為に発展するとのことだった。当然、罰せられた。
一つは、司祭には一人以上の身の回りの世話をする修道士がつくが、多くの場合は性的奉仕も含まれていること。肉体関係は教義として禁止ではなく、司祭という立場もあり、問題が起きなければ黙認されていた。
最後に、貴族からの誘いは断れないとのことだった。その理由は二つあって、一つは貴族の持つ権力だった。貴族との良好な関係性は教会の権威を守り布教活動を助けるため、不興を買うことはできなかった。二つ目は寄付金だった。貴族の寄付金は莫大で、教会運営には欠かせなかった。そのため修道士たちは貴族の誘いを強く断ることができず、嫌でも相手をしなければならなかった。教会運営には政治と金が必要という大人な事情を、リオンは言葉を選びながら説明するのであった。
「教会にはいつでも連れていくことができます。タカシ様が嫌ならば教会に連れていきます」
「本人たちは俺に抱かれることを受け入れているのか?」
「それは当然です。奴隷ですから」
「うーーーん……ゴブリンの子が生まれないか?大丈夫?」
「それは絶対ないです!!!」リオンはキレ気味で否定するのであった。
タカシはアーナスの提案を受けることにした。




